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君のことをどれくらいすきなのかを語るのに、制限時間をください。

何が正しいか。なんて、私ときみで決めてしまえばいい。





赤ワインを辛めのジンジャーエールで割った
ワインベースのカクテルが私の手元に運ばれてくるのは、
もうこれで3回目だった。
定期的に集まる今日のメンバーは私をよく知る友人たちで、
毎回、それぞれの職場の話か、
各自の恋愛のすすみ具合を報告するような会になっている。
メンバーの半分が三十路になってもなお、
サラッと集まれてしまうのは、
「結婚してなくてよかった」
と呪文のように繰り返される言葉の通りだ。
たいてい場合、その場が恋バナの場面でオーバーヒートする。
その多くは私の恋バナを披露している時に起こる。
今日も話すかどうか正直迷ったのだけれど、
「最近どうなの?」
と話をふられてしまうと、
サービス精神旺盛な私と、嘘をつくことができない私は、
ワンクールのドラマのエピソードを語るかのように、話始めてしまう。










「彼とは出逢ったのは、これで3回目で、
私は何度でも彼がすきになってしまうから、
嫌いになることも諦めることも、もう全部やめたの。」




その言葉にオーディエンスは黙っていたりはしない。
彼女たちは私の幸せをお腹の底から願ってくれているから、
こんな台詞を耳にしたら、ありがたいことに音速で否定する。

私はそれだけ愛されているのだと思う。




それでも、誰を愛したいのかを決める権利は、私にしかない。





「彼がくしゃみした瞬間に私はティッシュを探しだす、
みたいな感じ。あ、でも、昔みたいに
「尽くそう!」とか、「嫌われたくない!」的な感じで
動いてるのではなくて。
そんなのは全然思ってないし、
考えてない状態で、身体が勝手に動くの。
自然な感覚なのよね。
それでその感覚が嬉しかったりするの。」




ドラマで例えると、それぞれの回のハイライトを
できる限り具体的に伝えるように話す。
ここでも伝わったことが伝えたことに変わりはない。
そんな曖昧な日本語の羅列で、
彼女達の私を守りたい気持ちが治まってくれたりするほど、
世界も彼女たちも、甘くも辛くもない。
まぁそうだろう、
私が彼女達のポジションに配置されているのであれば、
間違いなく先頭を切るフォワードに徹すると思う。





「逆に私が彼の彼女だとして、
私じゃなく「彼女」になってしまうことの方が、
私は怖いと思うの。
なんかこう、要らない前置詞がついてしまう感じ。
今日だって、地元に帰ってきてるけど、
別に今は会いたいと思っていないから、
連絡とったりしてないの。でも彼女だったら、
帰るって連絡しなきゃってなるじゃない?
その義務感が、私の中に存在している限りは、
契約はできないかもしれないと思ってるわ。」




「それっ都合のいい関係ってやつじゃない?」
口を揃えて彼女達は私を守ろうとシュートを決めてくる。
気が付けば、ボールの大きさはその大きさに我慢できなくなったのか、
大玉転がしくらいのサイズになっていた。
あ、そうです。その意見はごもっともです。




それでも私は、私じゃなく「彼女」になる方が、怖い。




「じゃあ、その人の子供を産みたいと思うの?」
どうやら大玉転がしはとうとう紅組も白組も結託して、
どうしてもシュートを決めたいようだった。
そんなことを考える、考えないという段階でもない。
レベルが達していない限り、進化の石は使えないのだ。
と正論をブチまけるわけにもいかず、
彼女たちの理想通りに私が答えたい理想を綺麗に並べておいた。







最終的に手元に飛んできたのは、彼女達の愛でしかなく、
大玉転がしの玉のように見えていた玉は、
どうやら玉入れのお手玉サイズだったらしい。
ゴールキーパーでも審判でもない
私は紅玉も白玉もギュッと抱きしめて持って帰ることにする。







私は君に「好き」だとも「愛している」とも詞では伝えたりはしない。
私が君を想う心はきっと、私以外に理解することができるはずがないし、
君でさえもきっと解らない。
この心は私だけのもので、誰のものでもない。




今も私の人生の過程であることには間違いはなく、
私じゃないひとから見れば、「私は可哀そう」なのかもしれない。
けれど、私自身はひとかけらの迷いも嘘もなく、
「君のことをどうしても好きだ」
ということを堂々と話せただけで、それはもう倖せなのだから、
どうか、許してほしい。

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