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まちとお酒とスナック。「反対運動」がおこらないまちづくりのヒントは“飲み会”にあり!?

まちづくりが上手くいかないとき。実は、計画やコンセプトの前に、地元の人との人間関係が構築できていない場合があります。

成功するまちづくりには、その裏側にものすごく泥臭い、地元の人とのコミュニケーションの積み重ねがあるものです。

属人性が高く、めったに明文化されていないまちづくりの裏側ですが、一番本質的な部分と言ってもいいかもしれません。

地域の人に応援されないまちづくりは、成功しない

まちづくりを進める上で欠かせないもの。それが、地域住民からの承認(できれば応援)です。

どんなに素晴らしいコンセプト、どんなに素晴らしいコンテンツ、どんなに素晴らしいプランでも、地元の人から反対されたり、必要な協力をもらえなかったために失敗してしまうケースは少なくありません。

これは、まちづくりの当事者が私のような東京から来た、いわゆる「よそ者」でも、行政でも、まちの人自身でも、言えることです。

そもそも、まちには「まちづくりに興味がない」人もたくさんいます。同じまちに住む人同士であっても、若い人が「もっとこのまちを盛り上げよう!」と意気込む一方で、年配の方は「これまで通り静かに暮らしたい。人なんてべつに増えなくていい」という姿勢だ、という話はあるあるです。

「こんなことやります」と決定事項だけ押し付けたところで、嫌がられたり面倒がられたりするほうが当たり前なのです。無関心だけならまだしも、積極的に反対されたり、必要な協力を拒否されてしまっては、どうしようもありません。

地元住民の理解と協力を得て、まちづくりをスムーズに進めるためには、地主、まちのキーマン、影響力を持つ年配の方と「よし、君の言うことなら協力するよ」と言ってもらえる関係を築くこと。

つまりは、事前にしっかりと根回しをしておくことが大切なのです。

これはものすごく大事でありながら、多くのまちづくりプロジェクトで見逃されているポイントです。

根回しなんて古臭い、と思われるかもしれませんが、特に田舎のまちづくりにおいて、根回しを笑う者は、根回しに泣きます…

華やかなまちの裏側にある泥臭い交渉劇

都会でも、田舎でも、現在形になっているまちや様々な開発事業の裏側には地元の人との地道な交渉やコミュニケーションの積み重ねがあります。

その一つの例が東京ディズニーリゾート。今でこそ多くの人に愛される、華やかな遊園地のイメージしかありませんが、その開園にいたるまでは多くの困難があったといいます。

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もともと東京ディズニーランドありきで話が進んでいたわけではなく(誘致したい、という構想はありつつも)、はじめは浦安の海岸の埋め立て事業でした。

県から海岸の埋め立て工事を請け負い、レジャー施設や住宅地などの造成計画を立てていたのが、現在の東京ディズニーリゾートの運営会社、オリエンタルランドです。

土地を埋め立てるには、地元の漁師に漁業権の一部を放棄してもらう必要がありました。当時、工業廃水で魚介類が大量に死滅するなどの被害があり、漁師の生活基盤が安定していなかったたため、漁協も土地を埋め立てるということ自体には賛成だったそうです。

しかし、県の事業計画にオリエンタルランドが関わってくることは話が別。オリエンタルランドについてくる人は圧倒的に少数派でした。

事業を前に進めるためには、一刻も早く、漁業補償の交渉をまとめなくてはいけない。そこで使われたのが「飲み会」という手でした。

埋め立て工事に関与していたオリエンタルランドの専務取締役(当時) 高橋さんは、夜な夜な漁師の方々とお酒を酌み交わしながら一人ずつ説得して味方につけていったといいます。

さらに、そこで大切なのが、特に誰と信頼関係を築くべきなのか。交渉のセンターピンに当たる人を探すことです。

「面白いことにそれぞれの漁協に総代会があって、その総代会がうんといわなかったら、幹部がいかにどうしようとしても、漁協全体は動かない。そこで私はこの連中をうまく口説けば、みんなをまとめることができると考えて、総代会を牛耳っているボス連中と仲良くなりました。

引用: 「夢の王国」の光と影(野口 恒 著)

浦安の埋め立て事業でも、“ボス連中”と仲良くなった後は、ずいぶんあっさりと話が進み、3年かかると思われていた交渉は10ヶ月でまとまったそうです。

オリエンタルランドや漁師の例に限らず、まちに関わる計画を進めるためには、地元をまとめている、センターピンとなる人を見つけて、その人達と関係を築くことが近道です。後は彼らが地元をまとめてくれます。

スナックが果たす「社交場」としての役割

埋立地の漁業権補償ほどシビアな交渉ではないにしても、地域の方々から信頼され、積極的に協力していただける関係づくりをできているかどうかは、まちづくりの成功を左右します。

そこで押さえておきたいのが、地元のスナックです。

特に田舎において、スナックは地元の人の社交場としての役割を果たしています。狭い店内は、お客さん同士の席が近く、自然と交流が生まれます。お酒が入る場だからこそ、本音ベースの会話が繰り広げられ、親密度がアップする効果も期待できます。

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老若男女、まちの様々な人が訪れるスナックという場を通じて、キーマンとの出会いが生まれることも少なくないでしょう。

あくまで私の経験則ではありますが、決裁権や影響力を持つようなキーマンは「お酒好き」が多いものです。そしてお酒が好きな人は、お酒を飲むことでの親交をとても好みます。

お酒には、人と人との距離を縮めてくれる効果があります。アルコールの力を借りて心を開きやすくなったり、お酒によって相手の本音本心が見え、人間の深いところまで知ることができるからだと思います。

お酒の席を経て認めてもらうことが、強固な信頼関係の構築に役立つ、というのは、多くの人が経験則で感じていることではないでしょうか。

もしアルコールが飲めない場合には、相手と同じ色の飲み物を飲むのがおススメです。それだけでも、その場の連帯感を生むことができます。

飲み代で済めば安いもの。コミュニケーションの積み重ねが一番の近道。

スナックでも料亭でも、「飲み代」はもちろんかかります。

社長が夜な夜な付き合いで飲んで回る姿を見て、「こんなに飲みすぎ」「ムダなお金」「遊びに使っている」そんな印象を持っている方もいるかもしれませんが、実はこうした飲み代は必要なコストです。

むしろ飲み代で抑えられた分、長い目で見ると割安になっているはずです。

どんなにお酒が強い人でも、飲める量には限界があります。逆にシラフで相手が納得するだけのお金で解決しようと思ったら、いくらお金があっても足りません。

オリエンタルランドの例でも、漁業補償の交渉に関する飲み代だけでかなりの費用がかかったそうですが、当時の社長もその意義を知っているからこそ、金額もろくに見ずに承認を出したというエピソードもあります。

華やかなまちも、できあがったものだけを見ると分からないけれど、その裏にはものすごく地道で泥臭い時間と、お金と労力がかけられています。

そこのコストをケチってしまうと、後でしっぺ返しがくるのです。

結局、「この人にだったら協力してもいいかな」と思ってもらうためには、ひざを突き合わせて、”密”なコミュニケーションを積み重ねることが、遠回りなようで一番の近道なのです。

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

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屋台がもつ「居場所」としての役割。屋台には、ものを食べるだけためではなく、繋がりを求めて訪れている人も多いものです。スナックの例と照らしながら、イメージしていただけると分かりやすいかと思います。

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