見出し画像

サヨナラからはじまること

高校を卒業して、東京に行きたかった私は、あの日父に嘘の手紙を書いた。資格をとるために学ぶことが最良と思っていた父を説得するため、インターネットもなかった時代に、大学ガイドみたいな分厚い冊子から、資格がとれそうで推薦入学できる、学費は国立並み、寮が渋谷区という好条件の大学を見つけだしたのは、ただただ好きな人が東京に就職すると聞いたからだ。
お父さんごめんなさい。
もうこの世にはいないけれど。

結局、私は資格なんてとらず、好きな人と結婚して山形に帰ってきた。

大学生の時のアルバイトは、北海道料理店、パン屋、喫茶店、接骨院。就職してから、エアロビクスのインストラクターをめざしたこともある。
自分が行きたくて暮らした東京。行きたかった理由はともかくとして、私はその頃、いろんな意味で、でっかくなれたと思っている。

去年の春、地元で安定した収入を得ていた息子が、仕事をやめて東京に旅立った。
夢とか言い出すには少し遅い気もしたけれど、自分が選んで進むのなら、それがいいと思った。
息子が悩んでいる時に、SUPER BUTTER DOGの「サヨナラCOLOR」を聴かしてやった私、いいじゃんって今も、思ってる。

自分はだまさないで。
成功とか失敗とか関係ないし、親についた嘘さえも、いつかなつかしい思い出になるんだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?