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名古屋場所 振り返り

場所前から注目点が多かった中で行われた興行は、愛知県体育館で行われる最後の場所となった。

60年という長きにわたり、多くのドラマを生んだ。
私個人としては、昭和46年の玉の海-北の富士の千秋楽結びの一番を取り上げたい。

私はまだ生まれていないが、勝負が決した後、お互いが目を見合わせて、健闘を讃え合うシーンが忘れられない。
過去の取り組み映像を見返す中でも、5本の指に入る、私の「大相撲」である。

時は、流れ、「最後」に立ち会えたことは運命を感じると同時に、必ず、愛知県体育館を忘れてはならないという使命感に駆られている。

多くの先人が、この名古屋場所を守ってきたと思うと、最後を見守れたことは、何と言葉にしたら良いか分からないが、感慨深いものがある。

前置きが長くなったので、そろそろ今場所に触れたい。

優勝は周知の通り、横綱照ノ富士である。「目標」の優勝10回を達成した。
「横綱の中の横綱」を評価する基準の一つに優勝10回は間違いなく該当する。

2場所連続休場明けということもあり、二桁がせいぜい良いところだろうと思ったが、見事に期待を裏切ってくれた。

「横綱が勝って当然」「横綱が優勝するのは当然で、つまらない」といった意見があるが、番付社会の大相撲界においては、横綱が締めるということは、最大の意義がある。

次の目標を聞かれ、「11回目」と答えた。
体力と気力次第で、しばらく照ノ富士時代は続くだろう。

それにしても、白鵬も然り、照ノ富士も球場が目立つのはいただけないが、出場すれば結果を残すあたりはお見事である。

先が見えない中で「明」を導いた照ノ富士に対して、「暗」を引き出した、貴景勝、霧島。

共に、精一杯の内容であった。

特に貴景勝は、中盤から本来の相撲が見られ、一時は光も見えた。

常日頃、「強いものが勝つ、弱いものは負ける」と潔い。
その言葉を体現するかのように、必死に強いものになろうと努めていた。

来場所、大関復帰への希望がある中で、本当意味での土俵人生最大の相撲を見せてもらいたい。

大の里は、9勝と新関脇として上々の成績だが、新入幕からの快進撃を思えば、いささか物足り成績であった。

しかし、今場所は大の里に問題があったというより、対戦相手が研究を重ねた結果と言える。

来場所以降、大の里も研究するだろうし、照ノ富士を破るなど、実力は本物であることから、二桁は固いと見ている。

いずれにせよ、横綱はともかく、大関は時間の問題だろう。

新三役の平戸海は、強い相撲で二桁を収めた。「なんとか勝てた」という感じではなく、確実に自力が備わっているように見えた。

対して、大栄翔は昨年の勢いから見れば、本年はどこか伸び悩んでいるように見受けられる。
今場所も勝ち越したが、「気づいたら勝っていた」という具合ではないだろうか。

平幕に関して、省略させていただく。

来場所は、1横綱、2大関の番付となり、どこか寂しい感が否めないが、大の里や平戸海をはじめ、力を伸ばしてきた王鵬、巻き返しを誓う、若元春、安定した成績を狙う、阿炎など、注目力士は多い。

早くも秋場所が待ちきれない。

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