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大学のオンライン化で私が失った大切なもの

はじめに

大学のオンライン化は楽でいいと思っていたけど、なんだか不満だ。

現在大学二年生で去年は通常の大学生活を送り、今年はほとんどの授業がオンラインになった。そんな私が、授業のオンライン化で失われた、他学生との「議論の機会」について思ったことを述べる。

オンライン化で楽になった大学生活

私は2020年度の授業が始まった当初、大学のオンライン化にに全面的に賛成していた。昨年度までは1限の開始時間の9:00に間に合うように7:00ぐらいに起きなくてはならなかったのが、今年は8:00に起きれば朝ご飯をゆっくり食べても十分間に合う。登校時間の約1時間を丸々睡眠に当てることができるようになったのだ。小さいようで、この1時間は大きい。また、空きコマや昼休みも自宅でくつろげる。私のような睡眠大好きな大学生にはぴったりな授業形態だろう。

夏ごろに大学からオンライン授業についてのアンケートがあったときも、自由記述欄に「たくさん寝れてストレスが軽減しました! オンライン最高!!万歳!!!」みたいなことを書いた。

オンライン化は授業の在り方をフレキシブルにした。感染収束後もオンライン授業が続くとしたら、それぞれの大学生の生活様式にフィットした形になるだろう。1年たった今でもオンライン「授業」の利点は認めている。
だがしかし、「大学」をオンラインにしてはいけないと私は思っている。

大学での学び

「勉強は一人でやるものだ。」
そう考える人は多いかもしれない。しかしそれは才能に恵まれ努力をした人か、過剰ともいえるほどの良質で詳しい解説があり、具体的な問題を解決できればいい状況の人に限ると私は思う。

大学での勉強は問題を解くことではなく内容を理解することがゴールだとよく言われる。そして実際それは正しい。

ゆえに大学の教科書の演習には答えがなかったり、「問1.自明 問2.自明」などの雑な解答しかついていないことも多い。そして大学のテストやレポートは多くの場合返ってこない...
これは具体的な演習問題があくまで理解のための補助であり、より抽象的な原理を理解することが大切というスタンスによるもので、私はこれに不満を言うつもりはない。

大学での学びで大切なこと

そんな大学生にもテストはある。問題文の意味すらわからない課題もある。しかし、問題を解くためのわかりやすい大学受験参考書のようなものはない。しかも出題範囲はおおざっぱだ。

去年、新入生だった私は大学の洗礼を何とか乗り越えることができた。それは、思えば一緒に授業を受けていた同期の学生のおかげだったのだ。
私の大学ではユニットと呼ばれる12人程度からなるグループごとに初年度の授業が割り振られていた。課題が出た時やテスト前は寄り集まって教えあい、終わったら近くのラーメン屋に行ったりと、苦楽を共にした仲間たちであった。

ここで強調したいのは、大学の学問における議論や教えあいの学習効果である。授業プリントの論理展開の跳躍や難しいレポート問題について議論できる身近な存在は、やはり同じ学生だ。
わかりやすい解説があり、問題を解ければいい場合は参考書で一人黙々と頑張ればいい。しかし大学ではそうではない。答えもなく、フィードバックがない環境で勉強をしようとしても、本当に自分の考えていることが正しいのかと疑心暗鬼になって効率もやる気も落ちてしまう。自分を疑って考えることは大事ではある。だが、やはりある程度の自分の正しさを保証するものがなくてはいけないだろう。

このコロナ禍の現在では複数人で紙とペンを持ち寄って教科書とにらめっこする機会が完全に失われた。そしてこの1年、私自身が何を学んだかと問われれば答えに困ってしまう。「一人で黙々と授業資料を見ながら確からしい部分をつなぎ合わせて、課題をこなしていた。」というような一年間の印象である。
当然やる気も失せた。

それに対し、去年は毎日大学に登校して授業を受けて、終わったら当たり前のように図書館の会話可能なスペースに集まって、課題をしたり各々の興味のある本を読んでいたりしていた。「ちょっと下で本借りてくるわ」なんてこともできた。(私の大学の図書館は地下に本が収蔵されている。)
「日常的に」「当たり前に」というのが大事なのだ。

自分が気づいたことを共有して、他の人が気づいたことを取り込んで、核心に近づけた時はとてもうれしい。勉強のやる気も出てくる。

そんな彼らと図書館で集まってあーだこーだ言いながら課題を解いていたあの瞬間、確かにそこに学びがあった。

ひとりでPCの画面を眺めていてもなんだかよくわかんないし、気が滅入る。勉強するために大学に入ったのに、学問のやる気も減衰してしまった。きっとそれは、他の学生とのコネクションが失われ、議論の機会が完全になくなったからだと私は分析している。
だから、大学のオンライン化に反対するようになったのだ。

誤解のないように断っておくが、オンライン授業自体はわかりやすく、配慮されたものだった。むしろ対面授業の無駄な部分がそぎ落とされ、slackなどによる効率的な授業管理システムによってとても受けやすくなったと感じる。

オンライン授業の質の改善だけでは解決できない問題があるのだ。

みなさんはどう思うか

以上は全て自分の体感によるもので、他の学生と集まって話し合うことが必要だと自信をもって主張できる根拠はない。「あなたが不勉強なだけでしょ」といわれればそれまでで、合理的な反論はできない。

先週くらいに学科からアンケートが来たので、自由記述欄に自分の思いのたけを綴った。この主張が届くことを祈るばかりである。

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