沖野ユイ『すいとーと!』を全力で推しています!……というだけの話

 少年ジャンプ+でWEB連載中の本作。女子大生が博多や九州に実在するお店の名物(ガッツリ系多め)を食べるというグルメ漫画――と表向きには銘打たれているが、1話目にしてヒロイン二人の濃厚な百合が描かれており、まさかあのジャンプで百合グルメ漫画が連載されるとはと度肝を抜かれた。(その当時の驚きと期待はこちらの記事で詳しく書いています→ https://note.com/summernight139/n/n8954b3d2af02)

 グルメ漫画は数あれど、百合と組み合わせた作品はそう多くはないという意味でも本作は際立っているが、得てしてこういうメインとなり得るジャンルの組み合わせはどちらかが(場合によってはどちらも)弱くなってしまい、そのジャンル好きにとっては物足りないものとなってしまう恐れがあると思う。百合は特にそうで、百合作品と謳われていても女の子同士がただ仲良くしているだけの、ライトな百合であることも多い。しかも本作はWEBといえど少年誌連載であり、読者層を考えると百合の需要が高いとは考えにくく(単行本の帯や紹介文からも百合を売りにしている様子はない)、外側だけを見れば百合要素は薄めに思われるかもしれないが実際は正反対で、1話目からヒロイン二人のキスシーンが描かれるという、百合専門誌も顔負けの百合展開が繰り広げられている。序盤の車中で手を握るシーンで既にある程度期待を満たしてくれていただけに、良い意味で期待を裏切る衝撃を受けた。

 2話以降は1話ほどの直接的な百合描写こそ少なくなったものの、二人の気持ちの揺れ動きや少しずつ縮まっていく距離が一話ずつ丁寧に描かれていて、もどかしくもいじらしい恋愛模様に毎話尊死させられる。

 百合面ばかりをここまで述べてきたがグルメ漫画としてはどうかというと、画力は決して高い方とは言えないかもしれないが、グルメ雑誌のようなお店や料理に関する詳しい説明、何より人物の美味しそうに食べる表情に、毎回お腹を空かされる。日付が変わると同時に更新されるのでもはや深夜の飯テロ罪である。おかげで初めて食べた時はそれほど好きになれなかった混ぜそばが2話で登場して以来、ラーメン屋さんに行く度に頼んでいる。

 本作がこれからの百合漫画をさらに高め広げるキーとなる作品になることを期待していることは上記の記事でも述べた。
 単行本1巻が発売され、本編ではメインとなる4人が出揃い、ヒロイン二人の恋愛模様も一つの山場を迎え、今後の展開にますます期待が高まる今こそ、是非手に取っていただきたい作品である。
 願わくは、「百合」が売り文句として積極的に使われるくらいに百合が広まらんことを。


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