【Equal-イコール-】君と僕【観劇レポ】

念願の〜!行ってまいりました!!
末満さんのオリジナル脚本作品を初めてみることができました〜!!
まさにこれが、独特の世界観と言われる作品のひとつ…!
想像を裏切らない内容と、お洒落で素敵な舞台演出に75分の舞台ではありましたが、
大満足させていただきました…!

今回は考察を含め、次回上演があったとしたら……のための観劇レポですので、ネタバレが大いにあります。
お気をつけくださいませ!

わたしが観に行ったのは「納谷健」さんと「碓井将大」さんのペア公演1日目、そして配信で3日目を観劇いたしました。


お話は、18世紀ヨーロッパのできごと。
とある家に、二人の青年が暮らしています。
名前をニコラ、テオと言い、この二人について、まずは少し自分なりに整理してみます。

テオは若き医者です。貧しい暮らしですが、友人のニコラを治したい一心で錬金術に傾倒していきます。幼い頃、ニコラの妹であるオデットに恋をしていました。

ニコラは肺病の青年です。病気ながらも、テオとの生活を明るいものにしようと、陽気にしてみせる一面もあります。

まずは名前について、
実はニコラとテオは実在する錬金術を医学や魔術に応用を求め、活動していた二人と同じ名前です。
ニコラ・フラメルは「錬金術の研究で賢者の石や金属変成を行った」
テオ・ホーエンハイムは「医学を錬金術に応用し、悪魔使い・神秘思想をもっていたという逸話がある」
という、二人とも錬金術を元に科学の発展に努められました人たちです。
この設定は、おそらくこの話の中心となる錬金術における最大の研究者たちだからこそ、使用されるに至ったのでしょう。


この作品でのオリジナルの二人は、月曜から始まる一週間をキリスト教の天地創造に合わせて擬え、お互いを延々と作り続けていく輪の中へと自らを巻き込んでいきます。

次に、彼らが天地創造を模して表した一週間に起こったさまざまな不思議なことについて。
彼らはまるで、普通の貧しいそして夢をもった青年であるかのように冒頭は描かれます。
病を治そうとするものと、彼との生活を明るく過ごそうと努めるもの。
友人というには、いささか密接で、そこには秘密の共犯者めいた空気を纏わせながらも、暖かい二人だけの家を続けていきます。
ただ、その二人が生きるものと生かすものであるというこの二つの記号は、実質この話で描かれる真髄に最も近い例えでありヒントなのかもしれません。

作品の後半、
本当の「ニコラ・フラメル」は五年前に死んだという衝撃の事実が明かされ、
「ニコラと名乗っていたテオ」が自らを「本物のテオ・ホーエンハイム」だと名乗ります。
(実際の可能性としては、製作者であるテオもすでにホムンクルスである可能性がありますが)ホムンクルスであるテオを作った自分こそが本物である、と。

「僕がテオだ」という納谷さんの台詞には、
真実を知っているのは自分なのだという神にも似た余裕と強さを感じられ、ここがすごくぞくぞくしました…!
人間を作り出す行為は、創世記の神の力を持ってしていないと、到底できることではない。
「ニコラと名乗っていたテオ」も度重なる人間生成の(記憶の)繰り返しのために、
自らを神と錯覚したのかもしれません。
それが、終わりの朝の「聖典」の製作に表されているように思いました。

この世界では「国の中心となる宗教」と「黒魔術を中心とした異端」の二つが存在しています。
「村では毎日異端狩りが行われ、見つかり次第縛り首にされる」「刑の執行時には、時計台の鐘が鳴らされる」というような設定に、
異世界における宗教対立や、この世界のもとになった時代の背景が想像されるでしょう。

ただ、この「異端狩り」がこの作品での秘密の一つだと思われます。
特異な設定に、私たち観客も混乱しますが、考察を重ねれば重ねるほど、実際はこれ
「異端狩りは行われていない」という考えの方が正しいような気がしました。
それは「ほぼ毎日なりっぱなしの鐘の音を憂うテオ」が中盤描かれているのですが、
まず「一日中なりっぱなしの鐘」は現実的ではありません。
処刑の度に鳴り響かせる鐘の音を鳴らす意味がなくなるし、そんなことをしていたら村人は一人もいなくなってしまう。(現に異端狩りだけではなく殺人による村民減少も多々ありそう)

では、この鐘の音はなんなのか。
推測するに、おそらく「時間を表す」だけのためのもの。
それなら、一日中鳴っていてもおかしくはないでしょう。
時間を表しているものとして、最初のうち、多く鳴っているように感じなかったのは「碓井さん演じるテオ」が「それだけ生きていれずに、死んでしまった」か「納谷さん演じるテオに血を与えられることで記憶がリセットしていた」かまた、その両方の混成といえます。
もしくは、もう少しロマンチックな可能性を。
この鐘の音が延々と聞こえたのには「テオの記憶」にある「オデットとのキス」も影響しているという説もあるといえましょう。
偶然の二人きりに、夕焼けの中した幼い口づけ。
きっと瞑った目の、残った音の記憶は時間を知らせる鐘の音だったのかもしれないな、と思いました。

もう一つ気になったのは、
「アドリエーヌさん」の存在です。
彼女はおそらく中年の女性です。
年齢は明かされていませんが、青年である二人にとって歳を取った存在であることから、40-50代くらいの女性であると推測します。
ただこの女性も果たして、本当に存在するのか、という疑問が残りました。
まず、彼女は彼らが幼い頃から病院に勤めており、当時からあまり変わらない姿であるということ。これは、幼い頃から知る年上の人物というのは得てしてあまり変わっていないように思われることから、あまり気にせず進めて良いと思いますが、
中盤に「碓井さん演じるテオ」が体調不良をおこし仕事にならずに、早退して帰ってくるという日があります。
この時に「アドリエーヌさんにおぶってもらった」という一言があるのです。
いくら、彼らが貧しく痩せていたとしても、中年の女性が脱力した青年を背負って帰れるでしょうか。
この台詞はあまりに不可解で、ここで推論が立ちます。
「アドリエーヌさんも錬金術により、ホムンクルスを作ることに加担しているのではないか」
「納谷さん演じるニコラが確認していたのは、幼い頃に染み付いたさんの台詞を確認したい(幼い頃の記憶に縋っている)だけだったのではないか」
この二つです。
ただこれには「アドリエーヌさんを騙し通せるくらい、完璧なホムンクルスを作った」という台詞が矛盾するので、正解はわたしにはわからないままになっております。

そして、悲劇に巻き込まれ命を落とした向かいのパン屋の娘「マリエッタ」にも不思議な点があります。
「あなたは誰ですか」という台詞。
これはあまりにも不思議な一言なのです。
少なくとも好きになったのは「碓井さん演じるテオ」なはずなので、その数日のうちに、「あなたは誰ですか?」と訝しむ台詞がくるのは些か疑問が残ります。
不可解なのは他にもあり、この一日だけ前日に「碓井さん演じるテオ」が深酒をしているという描写があります。
これは本当に深酒なのでしょうか。
「体調がわるい・頭痛がする」といった不快感を「納谷さん演じるニコラ」が深酒だと思い込ませたのかもしれません。
つまり、この前日におきたのは「血液の投与」そして「記憶の引き継ぎ」です。
つまり、ここで一度肉体が変わっている恐れがあるのです。
(つまり前日までマリエッタに会っていたのは「納谷さん演じるテオ」)
作中では何度も「月曜日」のシーンの再演があります。
これは、その度に肉体が変わっているのではないかと想像できなくもないのですが…このことに関しては確証がもてないままになっております。
ただ、そうだとすると、この七日間の演劇は想像よりも長い月日を要した(ホムンクルスを作るのには40週間牛の子宮の中で成長させる工程があるため)ということになるのではないでしょうか。

「アドリエーヌさん」と「マリエッタ」この二人のキャラクターについて想像し始めると、また突飛ともいえる推測にたどり着きます。
それは「アドリエーヌさん」も「マリエッタ」も(そのどちらか、もしくは村内の他数名が)ホムンクルスの生成に関わっていたのではないか、ということ。
マリエッタのパン屋は初めからテオを監視する目的で作られたのではないか、ということです。
「ホムンクルスが人を愛せるか」そしてその先の研究にはマリエッタのような女性の存在はなくてはならない存在ですから。
ただ、ここまでるくると本当に推測が過ぎるような気もしますね。
どなたか考察宜しくお願いします。(できることなら円盤化してほしいですし、パンフレットで解説してほしい…)

そしてわたしの大好きなラストについて。
終わりのシーンの
二人が立ち上がり、暗転。
完全に闇に包まれた中で、争うような音もなく二人は消えていきます。
(三日目のみ、納谷さん演じるテオが碓井さん演じるテオを刺したように感じましたが、気のせいでしょうか…)
(刺されてしまってからの「怒られるだろうな」も刺してしまってからの「怒られるだろうな」も同じ記憶の混濁なのですが、別々の意味合いがあるようで素敵でした)
(彼らの走馬灯は、二人分の混ぜ合わせられた記憶によるものなのでしょう)

納谷さんも碓井さんも、座ったり立ったりはするのですが、激しい動きはありません。
ただそれだけなのに、切迫感・緊張感・悲しみ・奢り・追想・混迷を表現し、
舞台芸術を待ちわびていた私たちに感動を巻き起こしてくれました。
お二人の今後のご活躍に心からの期待を込めて、考察をしめたいと思います。

これらの推測・そして考察は
二回みただけの私の想像の域をでません。
早くもう一度見たい!そして、願わくばほかの俳優さんでも見てみたい!
(内容やキャラクターの性格はどうなるのか…想像しただけでわくわくしますね)
そのためにもぜひぜひ!!
円盤化をお願いいたします…!!
(軽めの)(そうでないと作品解釈の幅がせばまり、作品を殺してしまいそうなので)解説含めたパンフレットをお願いいたします……!!

いただいたサポートは次の舞台観覧への軍資金にさせていただきます…!