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衝動と行動の理想と現実



理想
夜中に目が覚める。2時過ぎ。なかなか寝付けなくて突然やってくる「なんか走り出してぇ」という欲。ベッドから飛び起きパジャマのまま寝癖をたずさえ、履き潰したスニーカーまたはボロボロのサンダルでさほど重たくない玄関の扉を押し退け、さもなにかに追われているように、まるで逃げ出すかのように走り出す。走って走って、気がついたら自分がどこにいるのかもわからない。それでも走って、ただひたすらに走って、息苦しささえも忘れて、ああもうダメかもしれないと思ったところにやってくる日の出。そこでやっと走ることをやめ、この世に存在しているのは自分だけなのではないかと思ってしまうくらいの静けさの中で、朝がやってくることを噛み締め、現実を思い出し、また一人、家へと帰る。


現実
夜中に目が覚める。2時過ぎ。なかなか寝付けなくて突然やってくる「なんか走り出してぇ」という欲。ちょっとゴロゴロ携帯をいじって、それでも寝付けないので、「本当に走るか?」と自問を数分。外に注意を向け、人の存在を確認する。気晴らしに走りたいけど、コンタクト取ってるし、寝癖あるし、メイクしてないから眉毛ないな〜。それで走ってるところ見られるのなんか恥ずかしいよな〜。「それでも走りたいか?」自問を数分。でもやっぱり寝れないので、仕方なく走る決意をする。パジャマでは外に出たくないので、しっかりとランニングウェアを着る。髪はなんとなく結んで、眉毛とコンタクトは諦める。走りやすさ抜群の軽めのランニングシューズを履き、静かに玄関の扉を開け、静かに鍵を閉める。ちょっと走ってみる。おそらく酔っ払っているであろう若者の集団が怖い。コンタクトをしていないので、道はよく見えないし、草木はお化けに見えるしで怖い。何これすごい怖い。道路を車が駆け抜ける。夜中の静けさとは無縁の街。何これすごい怖いしすごいうるさい。全然気晴らしにならないし、すでになんかもう疲れてるし。そういえば走るのとか別に好きじゃないし。え、なにこの時間。外出時間3分で帰宅。静かに何事もなかったかのように、着替えてベッドに横たわる。携帯をいじる。日の出の時間なんかを調べてみる。「4:33か」。現在時刻3時過ぎ。あとちょっと起きていたら日の出を見られるな。せっかくなら日の出を見てから寝るか。なにがせっかくなのかわからないが、そんなことを思った途端に眠気はやってきて、起きたら昼過ぎ。とっくのとうにまた一日が始まっている。

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