スライムドレスを手に入れるだけ

「マイドアリ!」
「え、えっと……。ヴラスカさん、これを本当に着るんですか?」
「そうだよギルティア?」
 ヴラスカに良い服を買いに行くと言われてついてきたのは良かった。てっきり服屋に行くと思っていたが、黎明の光亭から外に出る気配はなく。水場に居たクラウンとヴラスカが一言二言交わした後に渡されたのが……。
「……ドレスの形をしていますけどスライムじゃないですか!」
「おっと、クラウンのスライムドレスを馬鹿にしちゃいけないよ?こいつはクラウンの分身が変身したドレスでねぇ、並の鎧よりも頑丈で抵抗力もあり、滑るから攻撃をいなしやすいと最強なのさ!」
「エッヘン!」
「えぇ……」
 言われてみれば、確かにこのスライムドレスは"生きている"。撫でれば気持ちよさそうにぷるぷる震え、軽く叩けば張り合うかのように硬くなる。手触りもスライムとは思えない程よく、着心地も悪くは無いのだろう。だけど。
「で、でも、いくら私がドレスを着慣れていると言ってもこれは抵抗がありますよ!」
「おやおや、クラウンも嫌われてしまったねぇ」
「ソンナー」
「うっ」
 クラウンの潤んだ赤い瞳がこちらを見上げてくる。自分が羞恥心と罪悪感の狭間で揺れているのをヴラスカは見かねた様だ。
「ま、ギルティアには刺激が強すぎたかもね。ここはあたしが一肌脱ごうじゃないか!さぁ、クラウン!」
「ガンテンショウチノスケ!」
 ヴラスカが自分の衣服に手を掛け、それを勢いよく脱ぎ捨てた!……突然の事に呆気にとられていたが、ヴラスカが裸になっている事を思い出し隠そうと動こうとする。しかし、そこにはスライムドレスに身を包んだヴラスカが居た。
「ふふっ、どうだいギルティア?似合ってるだろう?」
「ニアッテルデショー」
「え、えぇ」
 改めてスライムドレスを着たヴラスカを見る。いつもは赤色のドレスを着ている事の多い彼女だが、やはり青色も似合うとつくづく思う。全体的に透明感のあるドレスは、ボディラインが浮き上がっていつつもちゃんと大事な所が隠されていて安心した。クラウンのトレードマークである赤いリボンは彼女の豊満な胸の上で鎮座していて、ツインテール部分は天使の羽根の様にも見える。クラウンが背中に抱きついている様にも見えて微笑ましい。
「とても似合ってますよ、お二人とも」
「ふふ、そいつは良かったよ。という訳で、ギルティアもスライムドレス気に入ってくれると嬉しいねぇ」
「ネー」
「……頑張ります」
 色々衝撃的な事が多かったけど、クラウンはいい子だしドレスのデザインも気に入っていて悪くはないかも……しれない。愉快な仲間が一人増えて賑やかになりそうだとギルティアは思っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?