観劇サポートREPO

7月21日と7月22日に新国立劇場演劇公演「反応工程」視覚に障がいのあるお客様のための観劇サポートのファシリテーターを担当しました。(ファシリテーターとは司会進行のことです。)

3年前の「スカイライト」から新国立劇場でもサポート公演が実施されるようになり、そこから「かもめ」「タージマハルの衛兵」「願いが叶うぐつぐつカクテル」「イヌビト」「ピーター&ザ・スターキャッチャー」「東京ゴッドファーザーズ」すべての観劇サポートに携わっています。

上演の1時間半前に劇場に集まっていただき、劇場や舞台の大きさや形状、舞台セットについて説明したあと、舞台模型や小道具を触ってもらい、最後に声で聞くプログラムで作品のイメージを広げてから観劇してもらうという流れになっています。

※写真はイヌビトの舞台模型と、小道具であるマスクを装着した新国立劇場マスコットのクマちゃんと、イヌビトの小道具のわんちゃん(名前忘れた笑)

コロナ前は実際に舞台に上がってもらって舞台セットに触ってもらう、舞台ツアーがあって目玉企画だったのですが、コロナでできなくなってしまいました・・・

「イヌビト」の公演からは事前舞台説明会以外になんと同時音声ガイドと言って舞台を見ながらイヤホンから流れる解説と共に作品を楽しめるようになったんです!

作品をより楽しんでもらうための橋渡し的なお仕事だと思っているのですが、ただ見たまんまを説明すればいいというわけではなく、作品の演出意図や重要な部分はどこなのか、など作品についての理解が深くないとできないお仕事だなぁと思っています。

なので、観劇サポートチームで稽古場や舞台稽古を見学させてもらい、公演プログラムに目を通し、もちろん台本もしっかり読み込み、さらに俳優さんたちの情報も頭に入れたりしてるので、この仕事してると、演劇やってるぜ!という気持ちになります笑

今回の「反応工程」の舞台は、舞台の形状も舞台の上にあるセットもかなり複雑で細かかったので、それを言語化する作業がものすごく大変でした。
たとえば、なんかこの舞台、宙に浮いてるように見える!とか、舞台の形はテトリスがうまく重ならなかったときみたいな形!とか笑 
テトリスじゃ伝わらないよね、とかHを横にした形はどうだろうとかいろいろ出ましたが、結局、舞台の形状は凸凹のある長方形という表現に落ち着き、舞台が宙に浮いて見えるという表現は、物語の舞台が4階であることを想像させるために舞台が宙に浮いているようになってる、という説明に落ち着いて、チームでああでもないこうでもないそれじゃ伝わらないと意見を交わすなかで一番ベストで伝わりやすい表現が見つかるのがすごく楽しかったです。

わたしは俳優としても活動していますが、スタッフワークをすることも多く、正直、わたしも舞台に立ちたいのに!わたしは女優よ!というフラストレーションを抱えていた時期もあって、もやもやしながらやっていたところもあるのですが、回を重ねるごとにこの観劇サポートの仕事にすごく誇りを持てるようになって、今ではすごく楽しみなお仕事の一つです。

なによりも、視覚に障がいのある人たち、言ってみれば自分と感性が違うひとたちの立場になって物を考えるということはものすごく豊かなことだと思うんです。自分が当たり前だと思っていたことが当たり前ではない世界に触れることで、自分の視野を広げてくれたり、自分さえよければいいと思っていた自分の浅はかさに気づかされたりする。

自分と違う人をいじめたり、差別したりすることはその豊かさに気づけないってことだから、それに気づけないで死んでいくって人生損だぜって最近のニュース見て思ったりしてました。

だから演劇を通して、こういう学びをさせてもらえていることは本当にありがたいこと。

観劇バリアフリーがこれからもっと広まって、全国の劇場に当たり前に行われる日がくるように活動していきたいなと思っています。

最後に、反応工程の舞台が無事に千秋楽を迎えることができるよう、スタッフ、キャストの皆さんの安全と健康をお祈りしています。

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