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士業のタタミカタ_3

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割り込みで、このタイトルのこと

サムライ業のタタミ方、このタイトルの内容に、いつたどり着けるのだろう?

と、自分ですら思い出したので、少し何故、こんなタイトルになっているのかを脱線からの脱線で、本線に戻るような形で書かせてください。

「自分は一体、どうやって、手仕舞いするのだろう?」

税理士として事務所を開業して10年経った頃に、そんなコトを考え出していました。

私には四人の子どもがいますが、そもそも税理士試験の合格も必要ですし、お客様との関わりを考えると子どもだから継げるという仕事ではないと思っていました。そして、後継になって欲しいと求めることによって、子どもの人生を制限したくないと思っていましたから、「子どもが後継者」という選択肢は考えていませんでした。

その頃までに、スタッフの中から税理士資格を取って独立した者も3名いましたし、受験中のスタッフも常々おりましたが、苦労して取った資格、やはり一度は自分の思う形の事務所をやってみたいのだろう、と思っていたので、ここもその当時はあまり期待していませんでした。

どんどん選択肢が減る中、ぼんやりと、「あぁ、最後はこうなるのか。」と思った出来事がありました。

当時、所属する税理士会の支部で、幹事をしていましたが、ある年、厚生部(冠婚葬祭担当?)に所属していて、同支部の税理士さんのご葬儀があると、受付の手伝いなどに行っておりました。ある存じ上げない先輩税理士さんが亡くなられて、世田谷のどこそこの斎場でのご葬儀の受付をしに行ってくれと言われて、喪服ででかけました。

その先輩税理士さんに対する悪口とかではありませんが、ご葬儀の受付にみえる方が極端に少なくて、特に「会社関係」とした受付には、どなたもおみえにならない。結局、式が始まる寸前に、お香典だけを置いて、そそくさと帰られた方がお一人。それだけが、お仕事に関わる方でした。おそらく年齢が高くなられるに従って少しずつ仕事を手控えて、引退をされる準備してスローダウンしていたから、なのでしょうが、正直、驚きました。季節は晩秋だったのか、そう思うほどに風が冷たく感じて、寂しく思った記憶だけが残りました。

サムライ業のタタミ方、どうすれば良いのだろうと、考えていて、答えの一つを垣間見た出来事でした。

税理士さんが1,000人いれば、1,000種類のオフィスがあるのが、この仕事の特徴でもあると思いますが、行き着く先は、多分、そんなに種類がなくて、大きく分ければ、次の四つ。

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1. 後継者にバトンを渡す (親族を含む有資格者)
2. 事業譲渡、のれん売却 (同業との統合を含む)
3. 徐々に縮小して廃業  (生前に廃業)
4. 突然死=sudden death  (死亡による廃業)
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このうちのいくつかを組み合わせている場合もあるのでしょう、私がご葬儀の受付けをした先輩税理士さんは、多分、3.徐々に縮小していたところで、4.亡くなられた、のだと思います。

その頃の私は、仕事とその周辺のことが楽しくて、まともに眠らずオフィスのMacにしがみついていましたから、自分なりに辿り着いた結論は、「きっと自分は、朝、出勤してきたスタッフに、机の上で眠るように冷たくなっているのを発見される形」の4.に違いない、でした。

そんな事を考えていたのに、「そうではない形」で今、少し変形ですが、タタミかけていいる自分のことを、ある意味ではまな板に上げながら、どうやったら、税理士は、 サムライ業は、幸せな現役引退、Happy Retirement ができるのだろう? と、思ってこのテーマでの本稿を書き出しました。

その入り口で、自分が7年前に書いたレポートを紐解くことに、ちょっと時間を使いすぎのようにも感じますが、しばしお付き合いください。それは、それで、今、このお仕事をされている方、少し前を歩いて、間もなく手仕舞いされようと思っている方、もう少し後ろを歩いている方にも、何かしらの共感、反感、同感、異論があるかと思いますので、もう少しお店を広げさせてください。

追い込まれる小零細企業

税理士が、他の士業の方々と営業の基本が大きく違うのが、「小零細企業、個人事業者と記帳代行・決算・申告を通じて顧問契約でつながる密接な関係」によって毎月の仕事が常にあり、かつそのお客様との関係が累積しやすい仕組みがあること、だと思います。その背景には、日本においては、会社・事業者の中で、総務、経理、財務の人材を自社で抱えることが難しい小零細企業、個人事業の数が圧倒的に多いことが、大きかったのではないかと思います。、

士業のタタミカタ_1 で四象限の図表に書いた通り、ほとんどの会計事務所にとってのお客様は「小零細企業」が中心です。では、その小零細企業とは、どんな方達で、いま(すみません、これを書いた頃の「いま」ですので2014年頃)どのような状態になっているのでしょう?

追い込まれる小零細企業

これらの詳細な説明は省きますが、いわゆる税理士さんのお客様と言えば、小さな商店街の食料品店、様々な小売店、飲食店、大工さんや住宅関連の設備・工務店、町工場と言われる製造、加工業で、かなり割合を占めていたのではないかと思います。

私が資格取得前に最初にお世話になった税理士事務所は、町工場の多かった蒲田にありましたので、正にそんな構成割合でした。それが、主な納入先だった大手製造業の工場が、追い出し政策で郊外に移転して仕事が途絶え、その跡地にはマンションが立ち、商店街に一軒のコンビニがオープンすると次々と商店のシャッターが降り、工場勤めの人が減って、出前やランチ客、仕事帰り一杯が減って飲食店も消え、これらの修理・営繕をしていた工務店さんも立てかけてあった材木も目立たなくなりました。

潮目が変わる。そう言えば良いのかもしれません。

あらゆる業種が「サービス業化」していく過程で、製造や製作はほとんど、人の目には直接触れない大工場に吸い込まれていくイメージでした。大量生産や画一的な店舗のチェーン店やフランチャイズが当たり前となってきた結果、駅前には、チエーンのファーストフード・コーヒー店、コンビニ、サラ金(この呼び名が時代背景としては使われていましたので)、そして銀行が並び、どこの町へ行っても変わり映えしない「同じ顔」になっていったように感じていました。一方で、これまで存在しなかったコンピューターやネットに関わる業態が増え、関わる職種の個人事業主が入れ替わりにお客様になってきてはいました。

時代の大きな変化の中で、もがくお客様たち、を高見の見物ができるほど、私たち税理士の内容、体質、規模、資本力も、小零細企業・個人事業主そのものでしたから、このレポートを作っている2014年当時に書いた「高齢化、人材不足、資本不足」にピッタリと当てはまる状態になっていました。

「さぁ、どうする?」

と映画「スピード」の中のデニス・ホッパーから、そう言われているかのような立場に、私も立っていました。

(次には、税理士事務所の構造的な部分を考えてみます。)



#税理士
#士業のタタミカタ
#人生設計
#小零細企業の経営


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