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88歳、杖つきパパの世界

ブエノスアイレスにいるアルゼンチン人Novioから、「日本の男性は友達と出かけたりしないのか?」と聞かれた。そういえば、そうねぇ。アルゼンチンでは男性同士でお茶している姿なんかも良く見かけたけれど、日本はちょっと違うかも。

仕事上のゴルフとか、飲み会とか、そんな付き合いは多くても、友達付き合いというタイプのものは極めて少ないかもしれない。だから定年を過ぎると、とっても寂しい感じになってしまう。

我が家の杖つきパパも然り。

つい先日、新聞の死亡広告を見て、朝からしょんぼりしている父がいた。
杖をついて歩くようになってから、知人の葬儀もほとんど失礼していたけれど、今回ばかりは行かねばならぬ、と喪服の準備をしてくれと言う。
聞けば、逝ってしまったのは高校時代からの付き合いで、長い仕事人生でも親しかった同期の友人。

コロナ騒動で世の中全体が集まらない傾向になってから、父の、もともと少なかった交友関係はピタリとなくなってしまった。だから、こうして同居しているわたしもそんなに親しく大事なお友達がいたとは全く知らなかった。
ご焼香するだけの新基準のお葬式から戻って、数日してから二人きりの昼食時に、お友達との想い出をポツリポツリと話してくれた。
本来ならば、同世代の友人達と分かち合いたい悲しみだけれども、娘を相手に話したことで、少しは癒しになっていればいいなと思う。


現在の父における社会は、リハビリ施設のスタッフさん達との関わりくらいだ。
週に二回通っている施設の、送り迎えの車の中でのスタッフさん達との会話が、外界との唯一の扉かもしれない。
もともとサービス精神旺盛な父は、しーんと静まり返った車の中の雰囲気を何とかしようと、質問したり、話題を提供したりするらしい。
時々「その話はこの間も聞きましたよ」なんて返されて、とほほ、となるらしいが、それでも、よそ行きの顔つきで、お姉さん達と談笑しながら帰ってくるのは、見ていて微笑ましい。

もうちょっと社会と繋がって欲しいなぁ。友達との交友を持って欲しいなぁ。
娘として何ができるのかな。と思う、今日この頃。


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