花を摘むな。

先月、事件から葬儀の合間を縫って仕事していた時は「運命なんかに負けてたまるか!」みたいな気持ちがあって、むしろいつもより集中して取り組んでいたのだけれど、あれからひと月ちょっとが過ぎて今回はだいぶ腑抜けている。

唐突だが、和田慎二先生の「少女鮫」という漫画がある。
その中で幼いヒロインがジャングルに入り、傍らの花を摘もうとすると、傭兵である彼女の養父が「花を摘むな」と止めるシーンがある。
「花を摘むと風景に違和感が出る。その違和感が自然にまぎれて消えるには時間がかかるから」(手元にコミックスがないのでうろ覚えですが)

あまりに突然に、しかも本人の意思で去られてしまった今、自分の中では明らかにその違和感があって。
まだ時間が経っていないから、当たり前ではあるのだけれど、その無くなった花の枝があった部分がぽっかり空いている。
いつか数年…もっとか…時間が経って、その空間が埋まる事ってあるんだろうか。

というより、この傷が塞がることが許せないのかもしれない。
ずっと痛ければいい。

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