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著者×デザイナー×編集者「3年の星占い」(石井ゆかり著) 制作よもやま話③

人気シリーズ3作目となる「3年の星占い2021-2023」。発売すぐに増刷も決まり、好評発売中です!(2021.1.28現在累計28万部超)
このたび、「制作よもやま話」として、著者の石井ゆかりさん、デザイナーの石松あやさん(しまりすデザインセンター)、編集者の飛田による鼎談を企画しました。制作の裏話をどうぞお楽しみください!
(鼎談は2020年12月末、ZOOMにて行われたものです)


印刷と紙とデザインと


飛田(編集者)
今回は、印刷が大変とかはなかったですよね。前回(*)はすごく大変だったけど。どうでしたっけ?

*文響社版の「3年の星占い2018-2020」は、コットンライフという紙にスミベタを刷った。インクをのせるため、ギリギリまでインクを盛った。

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色校立ち合い時、「もう少しだけ、危険じゃないくらい盛ってください」と石松さんが言うと、「もう、すでに危険です!」と印刷所の方が答えたという、伝説のスミベタ。


石松(デザイナー)
最初に紙を何種類かと、ちょっと色がついてるか、ついてないかで、どんな感じにするかで悩んで。

飛田
クリームと白っぽい紙で、白にしたんですよね。

石松
そうです。飛田さんがめちゃくちゃ悩んで。

飛田
なぜそこで?というくらい悩んでしまって。

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用紙違い、色味違いで何種か取った色校。


デザインに口出ししない著者

石井(著者)
今回「星栞」があったので、どっちにも口出し絶対しないって決めてました。同じ判型、同じ占いというコンテンツで、違うのは期間だけですから。私が口を出しちゃうと、自動的に、両者のバランスを調整するような立場になっちゃうと思ったんです。でもそれは、何か違うなと思って。で「今回はノータッチにさせてください」って宣言しました。

飛田
「お任せします」って。いつも任せてくださるけど、今回はぐっと。

石井
そうしたら飛田さんのほうから、びっくりするようなのが出てきたわけです。うわー! と思いました。大丈夫かな? と、正直(笑)

飛田
たしかに、占いの棚の現場で、違和感があるというか、異質感があるというか。いい意味で。いい意味でと言うしかないですけど (笑)。

石井
これは目立つと思いますね。

飛田
小さい絵本のようになって、本当によかったです。
装丁を明るくしたい!とは思っていましたが、本になって改めて読み直すと、石井さんの原稿もやっぱりなんか希望のほうを向こうとしているような感じがしました。明るいというよりも光を感じる原稿だなと、今までの中でいちばん。私が勝手に感じているのかもしれないけど。コロナのこの時代に書いたことは関係ありますか?

石井
うーん、明るく、という意識はなかったです。ただ、今までよりも少し大人っぽいというか、社会的な視点というのは、多少入っていたかなと思います。

飛田
役割という意味で、介護を担う人や子育てを担う人を想定されていますよね。

石井
一人の人間としてうれしいとか、悲しいとかの閉じたところから、もう一段階、他者の方に拡がるイメージがありました。「みんな世の中で生きているよね」みたいな。コロナ禍というのは、「自分や家族がかかったら辛い、怖い」というようなことと同時に、緊急事態宣言のような、世の中と自分の生活が直結している感じがあったと思うんです。それはたぶん、コロナの後も意識されていくことなんじゃないかと思いました。あと、過去数年の中で、世の中の価値観もとても大きく変わったように感じていたので、そうしたことも反映したいと思いました。

たとえばイラストでも、ノータッチではあったんですけれども、多少、役割概念的なことについてはコメントさせてもらいました。読者が手にとったとき、イラストの風景に対して、どんなふうに感情移入できるだろうか、という観点でした。小説や絵本なら、表紙に書かれているのはそのお話の主人公ですが、占いの本は、ともすれば、表紙にいるのは「読者かもしれない」んですね。「自分」がそこに描かれている可能性がある。

飛田
たとえば本文のイラストで、女の子がお弁当をつくって、男の子が食べているラフに、「これは逆でもありだよね」と指摘がありました。男の子がつくったお弁当を女の子が食べている、荷物を女の子が持っているほうが、次の時代っぽいね、と。でもイラストやデザインについてのご指摘は、それだけだったかな。ジェンダーの指摘、役割のことは指摘をいただきましたけど、あとはなかったかな、特に。

石井
ただ、イラストレーターの方がどう思われるかなというのは、ちょっと気になりました。

飛田
全然大丈夫でした。イラストレーターの本田さんはそもそもそういう人なんですよね。前に家事の本をご依頼したときに、「登場人物がほとんどが女性ですが、時代的にそれはいいんですか?」って逆に聞かれたくらいだったので。
石松さんはどうですか? 12冊終えて。

石松
私はどうでしょう。今回はどっちかといったらイラスト先行のデザインだったから、全体をマッチさせていくのが私の仕事だったのかなというところがあります。……たまたまそのときに仕事が重なっちゃって。

飛田
お忙しかったですよね。ファイルが送られてきて、開けたら温泉の本のカバーだった(笑)。

石松
違うよって(笑)。

石松
パーツを手書きにするところが多くて。タイトル文字や帯コピーなど、全部手書きで自分で書いていったんですけど、それを1個ずつつくってはスキャンして、パーツを大きくしたり小さくしたりしてはめこんでいくのが意外と大変で。

石井
手作業部分が多かったんですね。

石松
そうなんですよ、地味に。地味だけど作業が多くて、この箔押しの版下を分けたりとか。それを常に12冊分。それをつくるのにけっこう時間がかかっちゃいました。

飛田
そうでした。帯もタイトルもコピーも、全部手書きですもんね、石松さんの。そういえば本当手書き多いですね、今回。

石松
本田さんの絵って、フォントだけにしちゃうとタイトルと絵が離れてっちゃう気がして。あいだに何かあったほうがよくて。でもなんか全部手書きにしちゃうのもちょっと違う、星占いの本にならなくて、絵本とか児童文学のようにに見えちゃうから、その中間をうまいことやるのが難しかったかな。

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石松さん手書きの星座マークのラフ

「占いっぽさ」を出そうと意識した……のに……


飛田
今回、いちばん注意したのは、どうもリピーターの方ばっかり見すぎるということ。今まで買ってくださる方がどう思うかな、という視点を持ちすぎてしまっていたので、新しい読者の方が出会い頭に書店で本を見たときにどう感じるかなという視点を持つように意識した。今までは、12星座シリーズとか、占いっぽいものへのアンチテーゼをやってきたつもりだったんですけど、今回はちゃんと占いっぽくしようと思ったんです。……(本を見つつ)あれ、でもこれ全然占いっぽくないですね (笑)。

石井
じゃあ何らしいかっていうと、それも、言えない。絵本っぽい、とは言われますけど。でもサイズがこれですしね、誰も見たことないスタイルじゃないかなあ(笑)。

飛田
そうですね。全然占いっぽくないや、これ。

石井
でも他に何っぽいかと言われても、何っぽくもないんです、これ。

飛田
本当ですよね。

石井
新しい。

飛田
(装丁を見つつ)過去のような、未来のような。過去に当たり前だったことがちょっと特別になった感じなんでしょうね。みんなでごはんを食べるとか、会うとか。それがイラストに表れているような感じがしますね。

3年12冊

次回に続く

「3年の星占い2021-2023」の詳しい内容はこちら


プロフィール

石井ゆかり(著者)
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。
12星座別に書かれた「12星座シリーズ」(WAVE出版)は120万部を超えるベストセラーになった。『月で読む あしたの星占い』(すみれ書房)、『12星座』『星をさがす』(WAVE出版)、『禅語』『青い鳥の本』(パイインターナショナル)、『新装版 月のとびら』(CCCメディアハウス)、『星ダイアリー』(幻冬舎コミックス)ほか著書多数。
LINE公式ブログで毎日の占いを無料配信しているほか、インスタグラム(@ishiiyukari_inst)にて「お誕生日のプチ占い」を不定期掲載。
Webサイト「筋トレ」http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/

石松あや(デザイナー)
グラフィックデザイナー。書籍のデザインを中心に、ポスター、ロゴマークなどグラフィックデザイン全般を手がける。ときどきイラスト。
グラフ株式会社、株式会社xenonを経て、2008年しまりすデザインセンター設立。
くいしんぼうの活版印刷愛好家でもある。乙女座。http://shimarisu-d.com/

飛田淳子(編集者)
実用書編集歴22年。出版社勤務を経て2018年12月にすみれ書房を創業。主な担当書籍に「12星座シリーズ」(石井ゆかり氏)、「男の子の育て方」「女の子の育て方」(諸富祥彦氏)、「家を買いたくなったら」(長谷川高氏)、「正しい家計管理」(林總氏)、「苔とあるく」(蟲文庫・田中美穂氏)、「自営業の老後」(上田惣子氏)など。お菓子が好きな二児の母。射手座。https://sumire-shobo.com/


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