#2『ピンクレモネード』—はじまりの予感

 少し間が空きました、菫乃夜です。

 第二回目の例のシリーズですが、さっそく読書感想文ではないところに脱線しまして、今回は音楽の話です。

 扱っていくのは、『ピンクレモネード(by 三月のパンタシア)

 『べるまま。』のOP曲、と言えばピンとくる方もいらっしゃるかと思いますが、そうでない方にも是非一度聴いてほしいこの曲。

 「三月のパンタシア」。最近『ブルーポップは鳴りやまない』というアルバムを発売しまして、いま(2020/10/06現在)はそれがiTunesストアのトップに表示されていたり、最近はメディアへの露出もちょっとずつ増えてきていたり、これから注目のアーティストグループ、だと個人的に思っております。

 というのは肩書の話、ぶっちゃけ私には流行りがどうとかはよくわかりません。私がただ単純に三パシというグループが大好きなのです。

 そして『ピンクレモネード』は、私が三パシに「オとされた」まさにその曲なのです。

 曲について語っていこうと思います。

 実はこの曲、面白い部分がいっぱいあるんです。

 ですが、それを一言で表すとすれば、まさしく「はじまりの予感」、これに尽きます。

 とりあえずまずは、動画を開き、「~0:09」までを聞いてみてほしいのです。

 徐々にクレッシェンドするフィードバック・サウンド、そして跳ねるようなピアノ。もうこれだけで、「なにかが始まる」という予感がしてきます。

 一般的に、現代の創作物においては「つかみ」の部分が大事だと言われています。その点で言えば、この曲は私の中で百点満点、これまで聞いてきた曲の中でも屈指のイントロだと思っています。

 そして、この曲のすごいところは、その「はじまり」がずっと続くところ。

 普通、はじまりがあれば、なか、おわり、と構成されるのが当たり前。(noteで記事を書いていらっしゃる方々には申し上げるまでもないことと思いますが)

 ですがこの曲は、ひたすら「はじまり」続けるのです。

 伴奏に少し耳を傾けてください。Aメロ繰り返しの一回目と二回目で、伴奏の雰囲気が全然違うんです。最初は少しタメを作って、そこから緩やかながらも疾走感をもったフレーズへと移行する。「あぁ、始まってるな」って感じです。

 そのまま流れるようにBメロへ…と行くかに思われますが、Bメロに入るとまた伴奏の構成が変わって今度は階段状にピアノの音が昇っていく感じ。これもまた、先に向かって行くタイプの構成なのです。

 そして満を持してサビ。ここはもう語る必要すらないでしょう。最高です(ちなみにこのタイミングでシンセサイザーも合流します。徐々に音数が増えていくのがなんとも面白い)

 …と、ここまで読むと、ショートMVの全部分にわたって、多様な変化が取り入れられていることがわかります。

 そう、この曲の面白さはまさにそこにあります。つまり、「常に新鮮なパターンで殴られ続ける」のです。そしてなんとこれ、一番だけでなく、曲が終わるまで続くのです。所謂楽器ソロのような部分があるのは勿論ですが、それ以外にも、同じ構成部分でも和音の組み合わせが変わっていたり、ドラムのパターンが変わったり…同じ曲なのに、常に全く新しい側面を見せてくれるので、とにかく一曲における音楽体験の密度が半端じゃない。

 サビの歌詞に「はじまり」とか「期待」とかの言葉が何度も使われますが、その通り、曲全体を通して「はじまり」という要素がとても大事にされている、ということがわかりますね。

 A→B→サビ、という、昨今の曲でまず外れることない枠組みを守りながら、しかしその実は一度として同じ部分がない。同じメロディーに、何回も違う解釈を当てはめ続ける。

 こんなのはもう、アレンジの暴力としか言いようがないと思います。

 ざっくりと説明したところで、文字数が千五百を超えました。しかしあくまでこれは概説にすぎません。そして、例えそうした前情報を持っていても、予想を平気で超えてくるくらいのポテンシャルがこの曲にはあります。

 気になった方は、ぜひ購入をしてみてください。今ですと一曲が250円くらいで購入できますし、ストリーミング再生なんて手段もあります。新鮮で濃厚な音楽体験を得られることでしょう。

 最後にちょっとだけ付記。「三月のパンタシア」はアーティスト集団という形式をとっています。実はこれまで発表してきた曲は作詞者や作曲者がけっこうばらばらなのです。そしてそれは新アルバムでも変わらず、徐々にその数を増やしています。

 『ピンクレモネード』は、あるメロディー、そして『はじまり』というテーマについて複数の解釈をぶつけて作り上げられた作品だ、ということを申してきたつもりですが、言ってしまえば「三月のパンタシア」というグループ自体が、そういった「複数の解釈がぶつかりあう場所」であるのです。

 事実として、三パシの表現力は年々増しています。そして私は、このグループにはまだまだ解釈を広げていくだけの下地があると思っています。

 端的に申しますと、「追っていくの超楽しい!

 ということで、この機にYoutubeチャンネルだけでも登録してみてはいかがでしょうか?

 以上、三パシが好きでたまらない一リスナーからのダイレクトマーケティングでした。

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