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「スペースコレクターみゅう」第5話【交錯】

ドッカーン!!

その夜、みゅうのマンションの部屋は、何者かによって、大爆発をした。

ピーポーピーポー

けたたましいサイレンの音で、みゅうのマンションの辺りは、騒然となる。

みゅうの部屋から、運ばれて出てきたのは、五人の少女だった。

「ダメですね……」

五人の内、四人が、心肺停止状態。

生き残ったのは、オリジナルのみゅうだけだった。

「うわぁぁぁん!!」

みゅうは、四人の火葬がすでに終わってから、数日後、目を覚ました。

アベルは、行方不明。

しかし、みゅうは、事の一部始終を知っていた。

あの夜……。

「キャア!」

いきなり、都にナイフで切りつけられたみゅうは、驚いて、床に突っ伏した。

「都、美香、峰、ミク……、どうしちゃったの??」

「…………」

四人は、無言で何も答えない。

「うっ……」

みゅうは、大切な家族だと思っていた四人に、囲まれ、涙が出てきた。

「どうだ、愛する者に、虐(しいた)げられる気持ちは!!」

「その声は、アベル!!」

アベルの手には、アベルを拾った時の剣がにぎられていた。

「アベル……、何をしたの?」

「こういう事さ」

アベルの背後には、魔族が何匹もわいて出てきた。

「あなた、人間のクセに、魔族と手を組んだの?!どうやって」

「こんな亜空間、魔族には、簡単に越えられるんだとさ。寿命は、ちょっとばかり渡したがな」

「最悪ね、勇者のクセに」

「なんとでも」

アベルは、剣を構えて、みゅうをしっかり見つめた。

「さぁ、川崎みゅう。今まで、好き放題してくれたお返しをしてくれるぜ」

「チッ」

逃げようとした所を、都たちが捕まえようとする。

「やっぱり、操られてたのね!!」

「おっと、動くな、川崎みゅう。動くと、大切な家族である、仲間の命が無いぜ?」

魔族たちが、都、美香、峰、ミク、それぞれに剣を構えた。

「何が目的なの!!」

「俺は、寿命の半分を使って、魔族と契約した。俺を拘束した罰で、お前らから、寿命を全部頂く!!まずは、お前らからだ!!」

「まさか、やめて!!」

都、美香、峰、ミクが、バタバタバタバタと、一斉に倒れた。

「キャアアアアア!!やめて!!」

「今さら、嘆いても遅いわ!!」

「四人は、悪くないのに、私がデュオスのコピーが欲しいと言っただけなのに」

「さぁ、次は、お前の番だ」

背後の魔族が、片手を上げた瞬間、そこに現れたのは、さわとひかりとけんいちの三人だった。

「何をしているかと言えば、飛んでもない事に巻き込まれてんじゃん、みゅう!!」

「さわ!」

「男のコピーをした挙げ句、監禁するなんて、よくやるわ、川崎」

「武田!」

「過去に飛んで、事情は全部把握してきたわ!!一旦、避難するわよ!!」

「ひかり!!」

「待て!!」

ドッカーン!!

みゅうの部屋、808号室は、飛んでもない爆発音と共に、窓ガラスが吹き飛んだ。

そこから、何とか未来の病院に逃げ込んで来たのだった。

「みゅう、大丈夫?」

「私は、大丈夫……。でも、四人が……」

「それは、心配要らないわ。私が過去へ行って、あなたの罪を止めてあげるから。その代わり、あなたも、今回、異世界の住人を勝手にコピーして、監禁した罪で、捕まる事になったわ。たった1日の刑期だけど、百年分に感じる刑務所でね」

「……わかったわ、受けてくる」

「複製されたアベルって人が、元のコピーされてない状態に戻るためには、還元師って呼ばれる、分離した魂と寿命と肉体を一つに戻す超能力が必要らしいの。でも、それには、莫大なお金がかかるみたいなのよね」

「……私、どうしたら」

「今まで、みゅうがやってたみたいな、金や宝石を複製する超能力では、どうにもならないのよね」

「じゃあ、私達、四人の超能力を使って、何か事業を始めましょうよ!!そこで、大金を稼ぐのよ!!」

「例えば?」

「テーマパークとか。ま、それは、おいおい、四人で考えましょう。つまり、私達四人で、何とかしていきましょうねって事よ」

「さわ……」

「みゅう、心配しなくて良いわ、
私達四人なら、必ず出来るハズよ。それに、もう、あの異世界から来た勇者様たちも、悪い人間が、一斉に成敗されて、罪をなすりつけられていた、先代の勇者、兼、魔王、ゼノア・ルドネーデスも、冤罪が認められて、晴れて自由の身になったわ」

「そうだったんだ……。それは、良かった」

「で、あなたに会いたいって人が居るんだけど……」

「!!」

あの紫陽花が咲いていた、雨の日の公園で出会った、デュオスは、ネネを連れて、晴れた日のあの公園に、二人でやってきていた。

「あなたが、川崎みゅう?」

「はい、私が川崎みゅうです」

「私は、ネネ・ビットイヤー。異世界の国、キューベリングの姫です」

「ネネ様、申し訳ありません、私は、ネネ様の大切な恋人を勝手にコピーして、監禁してしまって……」

「アベルは、今、還元師の所で、治療を受けています。本人曰く、オリジナルの中に戻りたいそうです。デュオスがアベルを見捨てたという誤解も、解けたみたいですし」

「私は、コピーされる者の気持ちを、まるで考えていませんでした。会いたい時に会いたい人とすら、会えないなんて、辛いですよね。同一人物が二人いるなんて、誰も思わないですから。それに、コピーだって、途中までは、オリジナルと同じ人生を送ってきたのだから……」

「間違いは、誰にでもあるものです。あと、還元師の代金の事については、心配しなくて良いです。あなたは、仮にも、瀕死のデュオス様を救って下さった、命の恩人です。礼には及びません」

「良いんですか?!」

「もちろん」

「恐れ入ります、ネネ様!」

「僕からも、一言言わせてくれ」

「デュオス様……」

「家族と言うものは、力ずくで作る物じゃない。現に僕だって、魔法や超能力を使わなくたって、大切な人が出来たんだ。きっと、君にも出来るハズだよ。応援してるよ、みゅう」

「デュオス様……ごめんなさい……私、私……」

みゅうは、ずっと泣いていた。

もう、過去へ戻って、都たち四人を、復活させようとは、していなかったからだ。

でも、四人を失った分、みゅうの寿命は、5分の1になったままだった。

過去を変えてまで、四人をいなかった事にはしたくない。

それが、みゅうの願いだった。



「私にも、新しい家族が、出来る日が来るのかしら?」

並べたキューブの中に、2ヶ月前まで住んでいたマンションのキューブがあった。

新しい家は、小さな木造住宅の部屋だった。

「にゃおん♪」

「あら、カワイイ子猫ちゃんですこと」

「四匹いるのね、まるで、柄が、都たちみたい(笑)クスクス」

その四匹の子猫は、それから、みゅうの家で暮らす事になった。

超能力を使わないで、幸せになろう

みゅうは、そう、心に決めた。

第5話、終わり。










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