「スペースコレクターみゅう」第5話【交錯】
ドッカーン!!
その夜、みゅうのマンションの部屋は、何者かによって、大爆発をした。
ピーポーピーポー
けたたましいサイレンの音で、みゅうのマンションの辺りは、騒然となる。
みゅうの部屋から、運ばれて出てきたのは、五人の少女だった。
「ダメですね……」
五人の内、四人が、心肺停止状態。
生き残ったのは、オリジナルのみゅうだけだった。
◆
「うわぁぁぁん!!」
みゅうは、四人の火葬がすでに終わってから、数日後、目を覚ました。
アベルは、行方不明。
しかし、みゅうは、事の一部始終を知っていた。
◆
あの夜……。
「キャア!」
いきなり、都にナイフで切りつけられたみゅうは、驚いて、床に突っ伏した。
「都、美香、峰、ミク……、どうしちゃったの??」
「…………」
四人は、無言で何も答えない。
「うっ……」
みゅうは、大切な家族だと思っていた四人に、囲まれ、涙が出てきた。
「どうだ、愛する者に、虐(しいた)げられる気持ちは!!」
「その声は、アベル!!」
アベルの手には、アベルを拾った時の剣がにぎられていた。
「アベル……、何をしたの?」
「こういう事さ」
アベルの背後には、魔族が何匹もわいて出てきた。
「あなた、人間のクセに、魔族と手を組んだの?!どうやって」
「こんな亜空間、魔族には、簡単に越えられるんだとさ。寿命は、ちょっとばかり渡したがな」
「最悪ね、勇者のクセに」
「なんとでも」
アベルは、剣を構えて、みゅうをしっかり見つめた。
「さぁ、川崎みゅう。今まで、好き放題してくれたお返しをしてくれるぜ」
「チッ」
逃げようとした所を、都たちが捕まえようとする。
「やっぱり、操られてたのね!!」
「おっと、動くな、川崎みゅう。動くと、大切な家族である、仲間の命が無いぜ?」
魔族たちが、都、美香、峰、ミク、それぞれに剣を構えた。
「何が目的なの!!」
「俺は、寿命の半分を使って、魔族と契約した。俺を拘束した罰で、お前らから、寿命を全部頂く!!まずは、お前らからだ!!」
「まさか、やめて!!」
都、美香、峰、ミクが、バタバタバタバタと、一斉に倒れた。
「キャアアアアア!!やめて!!」
「今さら、嘆いても遅いわ!!」
「四人は、悪くないのに、私がデュオスのコピーが欲しいと言っただけなのに」
「さぁ、次は、お前の番だ」
背後の魔族が、片手を上げた瞬間、そこに現れたのは、さわとひかりとけんいちの三人だった。
「何をしているかと言えば、飛んでもない事に巻き込まれてんじゃん、みゅう!!」
「さわ!」
「男のコピーをした挙げ句、監禁するなんて、よくやるわ、川崎」
「武田!」
「過去に飛んで、事情は全部把握してきたわ!!一旦、避難するわよ!!」
「ひかり!!」
「待て!!」
ドッカーン!!
みゅうの部屋、808号室は、飛んでもない爆発音と共に、窓ガラスが吹き飛んだ。
そこから、何とか未来の病院に逃げ込んで来たのだった。
◆
「みゅう、大丈夫?」
「私は、大丈夫……。でも、四人が……」
「それは、心配要らないわ。私が過去へ行って、あなたの罪を止めてあげるから。その代わり、あなたも、今回、異世界の住人を勝手にコピーして、監禁した罪で、捕まる事になったわ。たった1日の刑期だけど、百年分に感じる刑務所でね」
「……わかったわ、受けてくる」
「複製されたアベルって人が、元のコピーされてない状態に戻るためには、還元師って呼ばれる、分離した魂と寿命と肉体を一つに戻す超能力が必要らしいの。でも、それには、莫大なお金がかかるみたいなのよね」
「……私、どうしたら」
「今まで、みゅうがやってたみたいな、金や宝石を複製する超能力では、どうにもならないのよね」
「じゃあ、私達、四人の超能力を使って、何か事業を始めましょうよ!!そこで、大金を稼ぐのよ!!」
「例えば?」
「テーマパークとか。ま、それは、おいおい、四人で考えましょう。つまり、私達四人で、何とかしていきましょうねって事よ」
「さわ……」
「みゅう、心配しなくて良いわ、
私達四人なら、必ず出来るハズよ。それに、もう、あの異世界から来た勇者様たちも、悪い人間が、一斉に成敗されて、罪をなすりつけられていた、先代の勇者、兼、魔王、ゼノア・ルドネーデスも、冤罪が認められて、晴れて自由の身になったわ」
「そうだったんだ……。それは、良かった」
「で、あなたに会いたいって人が居るんだけど……」
「!!」
◆
あの紫陽花が咲いていた、雨の日の公園で出会った、デュオスは、ネネを連れて、晴れた日のあの公園に、二人でやってきていた。
「あなたが、川崎みゅう?」
「はい、私が川崎みゅうです」
「私は、ネネ・ビットイヤー。異世界の国、キューベリングの姫です」
「ネネ様、申し訳ありません、私は、ネネ様の大切な恋人を勝手にコピーして、監禁してしまって……」
「アベルは、今、還元師の所で、治療を受けています。本人曰く、オリジナルの中に戻りたいそうです。デュオスがアベルを見捨てたという誤解も、解けたみたいですし」
「私は、コピーされる者の気持ちを、まるで考えていませんでした。会いたい時に会いたい人とすら、会えないなんて、辛いですよね。同一人物が二人いるなんて、誰も思わないですから。それに、コピーだって、途中までは、オリジナルと同じ人生を送ってきたのだから……」
「間違いは、誰にでもあるものです。あと、還元師の代金の事については、心配しなくて良いです。あなたは、仮にも、瀕死のデュオス様を救って下さった、命の恩人です。礼には及びません」
「良いんですか?!」
「もちろん」
「恐れ入ります、ネネ様!」
「僕からも、一言言わせてくれ」
「デュオス様……」
「家族と言うものは、力ずくで作る物じゃない。現に僕だって、魔法や超能力を使わなくたって、大切な人が出来たんだ。きっと、君にも出来るハズだよ。応援してるよ、みゅう」
「デュオス様……ごめんなさい……私、私……」
みゅうは、ずっと泣いていた。
もう、過去へ戻って、都たち四人を、復活させようとは、していなかったからだ。
でも、四人を失った分、みゅうの寿命は、5分の1になったままだった。
過去を変えてまで、四人をいなかった事にはしたくない。
それが、みゅうの願いだった。
◆
「私にも、新しい家族が、出来る日が来るのかしら?」
並べたキューブの中に、2ヶ月前まで住んでいたマンションのキューブがあった。
新しい家は、小さな木造住宅の部屋だった。
「にゃおん♪」
「あら、カワイイ子猫ちゃんですこと」
「四匹いるのね、まるで、柄が、都たちみたい(笑)クスクス」
その四匹の子猫は、それから、みゅうの家で暮らす事になった。
超能力を使わないで、幸せになろう
みゅうは、そう、心に決めた。
第5話、終わり。
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