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カロリーモンスター★骨川筋衛門(読み切り)

日本のとある産婦人科の病院で、骨と皮と筋だけの奇妙な子供が産まれた━━━━

「オギャアアア」

「何、この子、気持ち悪い」

思わず、本音が漏れる、看護師の女、佐藤

「佐藤さん、危ない!!」

途端に、その赤ん坊が物凄い握力で、佐藤のお腹の辺りの服に、しがみついてきた、そして、━━━━

「え、何?!ギャアアア!!」

夜、雷が鳴り響き、看護師、佐藤の悲鳴が轟いた

━━━━それから、16年後

その赤ん坊だった少年、骨川筋衛門(ほねかわすじえもん)は、16才の高校1年生になっていた

「骨川、こっちも頼むぜ!」

「わかった」

保健室に今日も、長蛇の列が出来ていた

それもこれも、骨川筋衛門の本当の食事の時間は、これからだからだ

昼食が終わった、昼休み

保健室のベットに横たわった、少し太ったクラスメイトのお腹に、思いっきり噛みつく骨川筋衛門

すると、みるみるうちに、脂肪を吸い取ってしまったではないか!

もはや、生身の脂肪吸引機の骨川は、男子、女子、構わず、教師にすら、人気だった━━━━

「産まれて来た時は、ガリガリで、気味が悪いなんて言われていたけれど、たまたま、近くに居た太った看護師のお腹に噛み付いたら、一気に脂肪吸引しちゃって、それからは、この人だかりさ」

「でも、お前、1日に100kgの脂肪吸引しないと、ガリガリになっちゃうんだろう?」

「あぁ」

「じゃあ、俺達も、お前も、お互い様だな」

「まぁな」

特に女子からの依頼が多くて、その中でも、太りやすい、丸山太留美(まるやまたるみ)は、骨川の常連だった

「今週も、お願い、骨川くん」

「任せとけ」

勢い良く、丸山のお腹に噛み付いた骨川は、みるみるうちに、丸山のお腹の脂肪を吸い取って行く

「ぷはーっ」

「ありがとう、骨川くん!」

照れながら、走り去っていく丸山

それを、気にも止めない、骨川

昔、100kgもあった丸山は、骨川のおかげで、美少女になっていた━━━━

「お前、その特技、いっそ、将来、仕事にしちまったらどうだ?」

骨川の友人、田中健一(たなかけんいち)は、骨川に、そう勧めた

それもそのはず、骨川は、日本中で有名なのだ

こないだも、テレビに出て、芸能人の脂肪吸引をしてやった所だ

しかも、骨川の脂肪吸引は、ほとんど痛みがなく、麻酔も要らない

骨川は、吸血鬼のように、特殊な歯から、脂肪吸引していた

「お前、気づいてるか?三組の丸山、お前の事、好きだぜ?」

「は?」

「まぁ、良かったじゃねーか、おめでとう、骨川!将来、式には呼んでくれよな(笑)」

「何、言ってんだ、お前」

その話をこっそり、隣の教室から聞いていた丸山は、内心、ドキドキしていた

━━━━「二組の骨川くんに、今日もお腹の脂肪吸引してもらっちゃった」

(私って、どうして、すぐ太るんだろう。私、骨川くんがいないと、卒業した後、この体型を維持できない)

丸山は、悩んでいた

一週間に、50kg太ってしまう丸山は、骨川がいないと、また、100kgを越えてしまう

(それだけは、嫌だ、もう、あの体型に戻りたくない!!)

丸山は、骨川に彼氏になってもらう事を目論んだ

(骨川くんの彼女になれば、卒業した後も、ずっと、脂肪吸引してくれる!!)

「でも、そのために、骨川くんと付き合うなんて、やっぱり出来ない!!」

(どうすれば、良いの?!)

━━━━そんな時、忍び寄る魔の手が!!

夜、自宅でくつろぐ丸山、するとそこへ奇妙な生物が近寄ってきた

「クンクン、脂肪の香りがする……!」

住宅街の二階建ての丸山の部屋の窓から、その生物は侵入した

「え?喋る猫?!キャアアアアアアア!!」

丸山は、その得体の知れない生物から、襲われた

自室で気を失っている、丸山

「━━━━って、ううん?」

丸山が、目を覚ますと、そこには、ピンク色の喋る猫がいた

「お前の脂肪は、頂いた!返して欲しくば、俺の言う事を━━━━」

「あぁ、返さなくて良いから、脂肪」

「え?」

カロリーモンスター、ピンキーは、悩んだ

(俺達の星では、脂肪は、命にかかわるから、エネルギーと同じ位大事な物なのに、なんだ、この星の人間と言う生き物は?!)

「ちょうど良い所に来たわね♡」

「へ?」

と、あっと言う間に、ピンキーは、丸山の猫にされてしまったのだった

「出せ!俺をこの檻から出せ~~!!」

「明日から、この猫で、稼ごう♡」

丸山は、結構、現金な性格をしていた

━━━━次の日の朝、ニュースでは、突然、日本中に現れた、カロリーモンスターたちの話題で持ち切りだった

「大変です、町中に可愛らしい動物型のカロリーモンスターが出没しました!」

カロリーモンスターは、うさぎ型、犬型、パンダ型、小鳥型など、様々な種類がいた

「噛まれると、脂肪吸引と一緒に、特殊な液体を中に注入し、飼い主にしてしまうと言う、恐ろしい動物で━━━━」

━━━━その頃、丸山は、カロリーモンスターのピンキーに、メロメロにされていた

「いやーん、可愛いカロリーモンスターを檻に閉じ込めて置く事なんて、出来ない♡」

「━━━━やれやれ、やっと、体液の効果が出てきたか……、一時は、どうなる事かと……」

ガリガリ星からやってきた、喋る宇宙動物たち

しかし、地球人は、侵略されて、万々歳だった━━━━

「まさか、歓迎されるとは……」

カロリーモンスターの総統、ガリガーリン閣下は、あっと言う間に、地球人が、ガリガリ星のカロリーモンスターと友好条約を締結したいと、国連から通達があり、意外な結果に、困惑していた

心配されるのは、体液が衛生的に、人体に影響が無いかだけで、地球人は、太った人間が増えてきていたので、むしろ、カロリーモンスターの事は、大歓迎だった

「━━━━骨川くんは、脂肪吸引するけど、変な体液は、体に注入しないのにね?って言うか、骨川くんも、ガリガリ星から来たの?」

いつも、保健室での、丸山の脂肪吸引を見守っている、二組の女子生徒、吉田が、朝、通学中、骨川に質問をする

「なわけないだろ。俺は、ちゃんと地球で産まれたよ。ただし、母ちゃんが、妊娠する前に、カロリーモンスターに襲われて、脂肪吸引された事があるらしい」

「って事は、脂肪吸引された人達の子供は、みんな脂肪吸引しないと生きていけない体になっちゃうの?!」

「さあ?俺にはよくわからんが」

「大変!」

が、しかし、メロメロにされた人達からの人気が止まらず、あっと言う間に、カロリーモンスターは、地球上で、人気の新しいペットになった

「チッ、また、新しい星で、カロリーモンスターが定住してしまったか……!!」

宇宙から、それを見守っていたのは、バランス星から来た、バランス戦隊、バランスレッドこと、レッド隊長

「このままでは、地球も、ガリガリ星のように、なってしまう!!食い止めねば!!トゥ!!」

そうして、バランス戦隊は、地球に降り立った

「最低限の脂肪だって、大切よ!」

バランス戦隊イエローが、町中のカロリーモンスターを追いかけて、バランスビームを放つ

「バランスビーム!!」

すると、カロリーモンスターは、1日に必要な脂肪吸引の量が減り、脂肪吸引のバランスが良くなるのだった

そして、次に、隊長のレッドが、バランスチョップを繰り出す

「バランスチョップ!!」

バランスチョップを食らった、カロリーモンスターたちは、同じく、脂肪吸引のバランスが良くなった

「ハァハァ、これであらかた倒したか!?」

「隊長!あれ!!」

バランス戦隊、パープルが指差す方向には、恐竜型の大きなカロリーモンスター、「ゴジゴジ」がいた

「でかいぞ!」

「なんて、デカさだ!!」

隊員のブルーとグリーンが、たじろぐ

そこへ、バランス星の姫君、ホワイトワが現れる

「私に、任せて下さい」

「姫!」

すると、ホワイトワは、ゴジゴジに向かって、祈った

そして、ホワイトシャワーを浴びせた

「ホワイトシャワー!!」

すると、ゴジゴジが小さくなり、トカゲサイズになった

これで、一件落着

その様子をテレビの生中継で見ていた、骨川は、ある決断をする━━━━

「俺も、毎日、沢山の脂肪吸引が必要じゃない体にして下さい!!」

骨川は、バランス戦隊のアジトまで、やって来ていた

「でも、そうなると、君の人気は一気にダダ下がりだよ?」

レッドが、パープルにスリッパで殴られる

骨川は、有名人だったので、バランス戦隊の隊員たちも、みな、骨川の存在を知っていた

「俺も、普通の男子になりたいんです!」

「ダメだ、地球人に、バランス戦隊の必殺技を繰り出すなど、許可出来ない!」

「そんな……」

「モンスターにならともかく、人間に、あんな必殺技を使った事は無い、例え、害はなくても、後遺症が残るかもしれないし……」

「なら、俺にも、必殺技を教えて下さい!自分でやるなら、問題ないでしょう!」

「それって、つまり━━━━」

「バランスアタック!!」

骨川は、バランス戦隊、バランスグレーになっていた

「よし、習得出来た!この技を、自分に使えば……!」

骨川は、鏡に向かって、必殺技を繰り出した

すると、そこへ丁度、仕事終わりのブルーが帰ってきていて、ブルーにぶつかった

散らばった、酒とおつまみ

「何。しやがんだ、テメェ!!」

ブルーのバランスパンチが、骨川に決まった

「オエッ」

腹に食らった骨川は、変身が解けた

「く、これまでか……」

「グレー!!」

「グレーって、誰?!いつの間に?!」

骨川は、その日から、毎日、1kgの脂肪吸引が出来れば、生きていける体になった

「ありがとうございました!」

「いや、俺は何もしていないが、体は、大丈夫か?」

「はい、おかげさまで!」

これで、好きな子に告白出来る!と、骨川は、思った

その、骨川が好きな子とは、━━━━

ガリガリ星の王女、ガリリン姫だった

「毎日、貴女と夢の中で、お会いしておりました、俺と付き合って下さい!!」

ガリリン姫は、即答で断った

「私、1日に沢山、脂肪吸引する男性が、男らしくて好きなの……」

「誰か、僕の体を元に戻して下さーい!!(泣)」

必死に、城の窓から大声で叫んだ骨川を、たまたま通りかかったレッドが見つけ飛んでくる

「助けを呼んだのは、君か?」

「隊長、俺、また、沢山、脂肪吸引したいんです」

「仕方がない、アレを使うしかない」

レッドの奥の手とは、昔、ガリガリ星から押収した、普通の動物をカロリーモンスターに変身させる、特殊な注射だった

「今まで、人間に使われた事は無いから、どうだか、わからんが、これで、骨川くん、君は、完全なカロリーモンスターになれる!!」

「よし、早速、注射して下さい」

「わかった」

そして、骨川は、完全なるカロリーモンスターに変身した

「ガルルルルルルル」

バッ

突然、アジトの窓から飛び出した骨川は、道行く太った人間に、男女関係なく噛み付いた

「あへ♡」

骨川の特殊な体液が、噛まれた人間に注入され、噛まれた人間は、骨川にメロメロになった

そして、手当たり次第、辺りの肥満の人間に噛み付き、骨川は、どこかへ消えた



人間で、唯一、カロリーモンスターになった骨川は、町中で、肥満の人達を襲い、それがニュースになっていた

「骨川くん……」

丸山は、ピンキーにメロメロになっていたが、骨川には、自然な恋心しか、持っていなかった

「他の人達は、噛まれた事でメロメロになっているだけ、私とは違う」

横で、そのテレビを見ていたピンキーは、そのニュースを困惑した表情で見ていた

「俺も、ガリガリ星のアジトで、注射を打たれて、喋れる様になったし、カロリーを吸収出来る様になった。おそらく、この人間も……」

「そんな注射があるの?」

「あるよ、おそらく、今も」

「どこに?」

「ガリガリ星の宇宙船の中に」



骨川は、宇宙船にあるガリリン姫の所へ急いでいた

何故なら、ガリリン姫を噛んでしまえば、骨川にメロメロになり、骨川の思い通りになるからだ

「待ってろよ、ガリリン姫!!」

しかし、そこで、邪魔が入る

ガリガーリン総統閣下とその部下たちだった

「待つが良い、骨川筋衛門」

「お前は、ガリガーリン総統」

総統は、骨川に、ある事実を告げた

「長い間、お前に、ガリリン姫との夢を見せていたのは、この私だ。骨川筋衛門」

「何だと?!」

「私は、地球侵略のために、お前に作られた夢を見せていたのだ」

「じゃあ、ガリリン姫と会っていた事は、すべて、仕組まれた、ただの映像だったと言うのか?!」

「ガリリン姫は、俺達の姫、今のお前に噛ませるワケには、行かない」

「許さん!!」

骨川は、バランスグレーに変身した

「貴様、まだ変身出来たのか!」

「俺以上に脂肪吸引出来る男など、この世に必要ない!バランスアタック!!」

「うわぁ!!」

部下たちが、一斉に必殺技を食らう

「フン、俺の男心を弄(もてあそ)んだ落とし前、必ずつけさせてもらう、行くぞ!」

そこで、総統と骨川のバトルが始まった

そこに、丸山とピンキーが駆けつける

「ピンキー!!」

「わかったよ」

仕方なく、ピンキーは、骨川こと、バランスグレーに噛み付いた

「俺は、太留美の僕(しもべ)じゃねえが、反乱分子は、やってやるぜ!!」

しかし、吸引する前に、グレーがはねのけた

「チッ」

しかし、そこで、総統が爆弾発言する

「お前に、一つ、教えてやる、ガリリン姫は、すでに私の恋人だ」

「何?!」

まさかの、ナンバーワン脂肪吸引男は、やはり、ガリガーリン総統だった

「貴様がガリリン姫と……、おのれ!!」

バランスグレーは、怒りのパワーで、新しい必殺技を編み出した

「バランスボール!!」

グレーの両手から放たれたエネルギーの玉が、総統とピンキーにヒットした

「にゃああああああ」

「ギャアアアアアアア」

「ふははははははは、これで、ガリリン姫は、俺の物!!」

「やめて、骨川くん!!」

変身が解けたバランスグレーに向かって、丸山の告白が始まった

「いくら、脂肪吸引して、相手をメロメロにしたって、相手の本当の気持ちは、手に入らない!!そんな事をする、骨川くんは、間違ってる!!」

「丸山……」

「そうだ、骨川筋衛門……」

「その通りだ、骨川……」

「俺が、間違って居たと言うのか━━━━?」

「私は、みんなのために、一生懸命、脂肪吸引してくれてた頃の骨川くんが好き!!」

「俺は、太った女は嫌いだ」

「なら、ダイエットするから!だから、私と付き合って下さい!!」

「丸山さん……」

「丸山……」

そこには、いつの間にか、女友達の吉田と田中も駆けつけていた

「俺は、俺は、カロリーモンスター、骨川筋衛門だ!!」

「骨川くん!!」

「変身!!」

骨川は、再びバランスグレーになって、反射する湖へ、バランスアタックしながら、飛び込んだ

すると、丁度良い位にバランスの取れた脂肪吸引か出来る、元の骨川筋衛門に戻っていた。

「俺は、もう、沢山の人を脂肪吸引なんてしない、お前だけだ、丸山!!」

「骨川くん!!(泣)」

愛のパワーで、地球を救った丸山は、骨川と結ばれて、ハッピーエンドになったとさ。

めでたし、めでたし。



「━━━━とは言うものの、やっぱり、一週間で50kgも太っちゃう私には、普通のダイエットじゃ、理想の体型になるなんて、無理~ぃ!!(泣)」

「なら、俺達が待ってるぜ⭐️」

そこへ駆けつけた、骨川筋衛門、ピンキー、総統、総統の部下たち、他、動物型のカロリーモンスター

「お前の志望(脂肪)は、世界を救うってな(笑)」

「もう、ダジャレなんて言ってないで、早くバランス良く脂肪吸引してよね!」

「はいはい」

そして、地球は、今日も平和だったとさ

「フッ、それもこれも、バランス戦隊のお陰だな」

ご満悦な隊長レッドに、水を差す隊員たち

「お前は、何もしてないだろ!」

と、一蹴されるレッド

「あーれー」

そうして、バランス戦隊も、地球が気に入って、住み着いたそうだ━━━━

≪おわり≫

【登場人物】
◆佐藤
骨川に、最初に脂肪吸引された女看護師
◆骨川筋衛門(ほねかわすじえもん)
母体が、カロリーモンスターに噛まれて、産まれてきてしまった、脂肪吸引しないと生きていけない体の高校一年生の少年
バランスグレーに変身する
◆丸山太留美(まるやまたるみ)
骨川に毎週脂肪吸引してもらっている女子生徒
◆田中健一(たなかけんいち)
骨川の友人の少年
◆吉田
骨川の友人の少女
◆ピンキー
猫型のカロリーモンスター、丸山に取り付く
◆ガリガーリン
ガリガリ星の総統閣下
◆レッド
バランス星から来た、バランス戦隊の隊長の男
◆イエロー
バランス戦隊の隊員、女
◆パープル
バランス戦隊の隊員、女
◆ブルー
バランス戦隊の隊員、男
◆グリーン
バランス戦隊の隊員、男
◆ゴジゴジ
恐竜型のカロリーモンスター
◆ホワイトワ
バランス星の姫君
◆ガリリン
ガリガリ星の王女





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