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「スペースコレクターみゅう」第6話【奇跡】

(都……、美香……、ミク……、峰……!!)

ガバッ!!

「なんだ、朝か……」

1ヶ月前から暮らしている、この新しい木造住宅の一軒家は、賃貸で、ペット可物件だった。

「にゃあ⭐️」

「都、美香、ミク、峰……」

四匹の猫は、みゅうのダブルベッドで、いつも一緒に寝ている。

「お前たちが居てくれるおかげで、私は救われるよ、ありがとう、みんな」

みゅうは、1日で百年間、刑務所にいたように感じる薬で、1日の刑期を全うして、帰ってから、たまに、孤独にうなされるようになった。

(でも、これも、罰だから……)

特に、精神科などへは、行くつもりもない。

その後、ネネ様は、良いと言ってくれたけど、なんとなく、罪滅ぼしがしたくて、やっぱり、四人で、還元師にかかったお金を稼いでいる最中だった。

「私も、沢山、稼がなきゃ」

でも、他の三人の超能力に比べて、みゅうの超能力では、なかなか、稼げなかった。

「私にも、もっと、役に立つ超能力があれば良かったのに」

みゅうが、複製の超能力に目覚めたのは、小学五年生の時だった。

超能力者と言うものは、だいたい、それくらいの年齢で覚醒するらしい。

なので、みゅうの両親も、みゅうの超能力の事は、知っていた。

(なぜ、私には、この超能力があるのだろう)

(何のために、役立てるのが、一番良いんだろう)

みゅうは、お金をためて、一度だけ、還元師に話を聞きに行った。

「はじめまして、川崎みゅうと申します」

「あなたが、例の……」

「はい」

「今回は、どのようなご相談で?」

「私には、11才の頃から、複製する超能力が備わっているのですが、一体どうやったら、一番、世間の役に立てるのかと、思って……」

「なるほど。還元師の私から言わせていただくと、複製師がいるからこそ、私達の仕事が尽きないと言う事でもあります」

「と、言うと?」

「本来、還元師と複製師は、二人で一つの仕事を行っていました。ええ、大昔から」

「そうだったんですか」

「あなたの能力が、一番重宝されるのは、イベントなどの、すぐに捨ててしまう物をすぐに作り出して、元に戻す事です」

「でも、私は、制限付きのコピーなんて、した事はありません」

「1日で消えるドレスや馬車と言えば?」

「シンデレラ!」

「還元師に、その方法を教われば、あなたも、制限付きの複製が、出来る様になるでしょう」

「でも、私、お金、そんなに持ってなくて……」

「私は、還元師の中で、まだ、駆け出しのあなたに持ってこいの、還元師の少女を知っています。ご紹介致しましょう」

「ありがとうございます!!」

「ここが、待ち合わせの場所……」

そこは、町の真ん中にある、噴水がある時計台の前だった。

天気が良いのは、よかったが、もう、待ち合わせの時間なのに、例の還元師の子が来ない。

「どうしたのかしら?」

すると、目の前の市場から、一人の少女が突進してくるではないか。

「遅れて、ごめんなさぁぁぁい!!」

「ひい!!」

遅れてやって来たのは、同い年の還元師の少女、エリオット・ケイシー。

ボサボサの髪で、なんだか、だらしないイメージだった。

(大丈夫か、この人💧)

「じゃあ、早速、制限付きの複製の練習でも、はじめましょうか?」

「いきなりで良いんですか?」

「もちろん」

折角、市場の中の噴水を指定したのにも、ワケがあった。

もうすぐ、この異世界の国、キューベリングでは、春に花に感謝するお祭りが行われるため、町中にその飾りつけをしないといけなかった。

その材料は、市場で売っているのだけれど、それで、いろんな種類のリースを作って、リボンをつけて、それを複製する。

その訓練を、エリオットとする事になった。

まずは、1分で消えるビスケットを複製する練習。

市場で、お菓子を買ってきて、それを複製する練習。

「複製するだけなら、当たり前に出来るんだけど……」

「今回は、まず、短時間で消える物を複製する練習だよ、失敗作は、私が還元するから、まずは、何回かやってみて?やり方は、手に持って、1分で消えるビスケットをコピー、って、唱えるの。簡単でしょ?」

「うん、まぁ……」

「じゃあ、やってみて?」

そこから、数日、練習を重ねて、なんとか、1分で消えるビスケットをコピー出来る様になった。

「なんで、ビスケットだったの?」

「ダイエットする時に、ちょうどいいかなと、思って(笑)」

「私って、太ってますか??」

「いや、そうじゃなくて、今から行く所の女将の話だよ」

「え?」

「1分で消えるビスケットが、出来るなら、一週間で消えるリースを複製するのなんて、ワケ無いね!」

「こちら、花祭りの主催者に選ばれた、飾りつけを担当している、リース職人の女将、ミネルバさん」

「川崎みゅうです、よろしくお願いします」

「よろしく」

「じゃあ、早速、出来てるリースを複製してみようか!」

そうして、花祭りの飾りつけをみゅうは、手伝い、みゅうは、複製師として、自信をつけていった。

「ありがとう、エリオット。あなたのおかげで、このお祭りは、無事に成功したわ」

「礼には及ばないよ、私のお兄ちゃんは、勇者デュオス様のパーティーの一人だったから」

「あ……」

「生憎、魔王討伐の旅で、他の仲間と一緒に死んじゃったけどね」

「……」

「でも、異世界で行き倒れてた勇者様を助けてくれて、どうもありがとう」

「いえ」

「過去の事は、もう、みんな知ってるから、あんまり気負いすぎないでね」

「恐れ入ります」

「それにしても、酷い人間たちがいたものだね。魔王討伐した勇者が、新しい魔王になる呪いがかけられていたなんて」

「可哀想な話でしたね、でも、汚名が晴れて良かったです。先代の勇者様が」

「先代の勇者様は、魔王討伐したにも関わらず、国王たちからの報酬が足りなかったから、不服で、世界征服を目論んだって噂だったからね。本人は、全くそんな話はしてなかったそうだけど」

「そうだったんですね」

「また、こっちへ来るんだろう?」

「はい」

「また、来る時は、イベントの手伝いしてね。他にもイベントは、沢山あるからさ」

「ありがとうございます!」

そうやって、帰ってきたみゅうは、現在の世界でも、イベント専門の複製師として、徐々に仕事が入ってくる様になっていた。

「ただいま、都♡美香♡ミク♡峰♡」

猫四匹を抱き抱え、みゅうは、やっと自宅に帰ってきた事を実感した。

(夏休みに、修行に行って、良かったわ)

エサやりは、当然、ひかりやさわやけんいちに任せて居たけれど。

「私、本当に、昔、間違ってたんだな……。ごめんね、都、美香、ミク、峰……」

と、写真立てに手を合わせ、四人の事をしのんだ。

「四人が幸せに暮らせます様に」

そう、お願いした途端、背中の方で何かが光り輝いた。

「え?」

すると、そこには、死んだハズの都、美香、ミク、峰がいた。

「嘘……、どうして、四人がここに……」

みゅうは、涙を流した。

「みゅう、私達、今、思い出したわ。あなたと前世で、出会っていた事」

「どうして、人間の姿に……」

首輪の代わりに、腕に猫四匹の首輪が、それぞれ、人間の姿の首にチョーカーのように、ついていた。

「わからないけど、これからは、好きな時に、人間の姿に、変身出来る気がする」

「え?!そうなの?!」

「だから、早速、五人で久しぶりに食事を取りましょう。猫缶、飽きてきちゃった⭐️」

「都……(笑)」

「くふふふふふ」

五人は、久しぶりに外へ出かけ、ファミレスでご飯を食べたのだった。

第6話、終わり。






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