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陰陽師 鳳凰ノ巻

十年くらい前、夢枕獏の小説「陰陽師」が好きで、何冊も小説を買って読んでいた時期がありました。

陰陽師に登場する主要な人物は、安倍晴明(あべのせいめい)の他に、源博雅(みなもとのひろまさ)、蘆屋道満(あしやどうまん)の二人。この二人毎話必ず登場します。

その何冊か読んだ中で一番記憶に残っているのが、『陰陽師 鳳凰ノ巻』第一話目の泰山府君祭(たいざんふくんさい)。

泰山府君は、別名、東岳大帝とも言われ、死者の魂の善悪を裁く神として存在していた。人の寿命や生死をつかさどる言われている。

ここからネタバレあり

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僧寺の僧侶ー智興内供が、心の隙間を蘆屋道満に突かれ、呪(しゅ)をかけられて命を落としそうになったが、安倍晴明に助けられるというお話です。

60歳を超えた智興内供は、身体も衰え、体力もなくなってきた。
そして、長年仏門の世界で生きた智興にとって、一つ心残りのことがあった。
数年前から弟子の恵珍(けいちん)にある言葉をもらすようになった。

「このまま、わたしは女子の肌も知らずに、死ぬることになるのか……」
「死ぬまでに、一度でよいから、女子の身体というものを味わってみたいものだ」

戒律により女犯を禁じられている僧たちは、女犯を犯すわけにはゆかない。

ある夜、智興の心の隙をどう知ったのか、蘆屋道満がやってきて、女犯を犯さずに女を抱ける方法を智興に教えるのです。


その方法とは?

屍体とヤルこと。

道満はこう言って、智興をそそのかした。

「今日の昼に、裏の山に女が埋められた。死んだばかりの、二十四の女ぞ。よいか、死んだ女は女ではないということだ。女の肌と女の陰を持ったただのものぞ。(省略)まだ、蛆も虫もたかってはおらん。しかし、今夜のがを逃したら、もう機会はなかろう。(省略)」

道満のその言葉に、呆れた弟子の恵珍が後ろを振り返ると、堅い光を眼の中に宿らせて、身体を小刻みに震わせて、恵珍が知っていた智興とは別の人間がそこにいた。


恵珍が女の身体を掘り出し、智興がその屍体とてしまった。
三度も。
そして、その現場を道満に見られてしまうのです。

智興の三度目が終わった後、道満が現われて智興に言った。

〃泰山府君と同じ日に生まれた女の屍体を犯した。これがどういう意味かわかってるだろうなあ……〃
”泰山府君に捧げられるはずの供物を、ぬしは盗ったのじゃ。さて、どうなるかのう″

そして呪が発動。

翌朝、智興は体調を崩し寝込んでしまう。
しまいには心臓も呼吸も止まってしまうが、安倍晴明の泰山府君祭により助けられる。

「あの男が、最初に姿を現わして、なぜ、女犯を犯さぬのかと智興内供殿に声をかけたあの時、呪(しゅ)がかかったのよ」
「そうさ。それは、そのまま、智興内供殿が心の中で思っていることであった。それをそのまま言葉にして、智興内供殿の心をからめとったのよ」
「結局、屍体とはいえ、女犯は女犯さ。その罪の意識と、泰山府君に対する怯え、その他、これまで、智興内供が、何十年の修行でも捨て切れなかった様々なものが、(省略)」


何十年の修行でも捨て切れなかったものとは?

それは、男性の底なしに湧き上がる性欲なのです。


◇ ◇ ◇

ここからは、私の個人的に思っていることを書きます。

MtFがホルモン治療で最初に恩恵を受けるのが、煩わしい性欲からの解放。
そして、FtMがホルモン治療で最初に苦しめられるが、止めどなく湧き上がる性欲だと思う。

FtMもシス男性のように、湧き上がる性欲を自分で処理することになるでしょう。
そして、FtMには賢者タイムがない。しかも性感は男性の数十倍。

どうなるか?
どうなるでしょう?

大変なことになりそうが気がするのですが・・・。






いやいや、私はこんなまとめを書くつもりではなかった。

智興内供の闇と、私の闇は同じです。



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