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前世のこと

一つ前の記事に、変な夢、と書いた。
ほんとうに変な夢で
くだらない夢だった。

私は恋人のような男性と一緒にいた。
私はどうも精神薬を服薬している
外国の女性だった。
私たちは恋をしていて
デカダンスのなかで生きているようだった。

私は言っていた。
「最近とても調子がいいから、薬はいらない」
すると恋人が袋に入った白い粉を
私に渡しながら言った。
「そんなこと言ってるけどさ、
こんくらいは飲んどけよ」
彼は少しインテリな風貌で
眼鏡をかけていた。

薬を受け取ったとき、私は甘美な感覚の中にいた。
心配される、愛されている喜びの中にいた。
渡されたものをそのまま飲んだ。

ズン、と体が揺れて
はっと目が覚めた。

私はリビングのベッドソファとフローリングの間で眠っていた。
床暖房も切れていて
冷たく、背中が痛かった。

なんとなく、
今の夢は私のどこかの前世だろう、と思った。

大学時代から二十代前半ごろ、調子が悪くなって
心療内科に行ったことが何度かある。
不安障害、という診断に甘えた時期もほんの短い期間だったけど
あったような気もする。
でもなんだか、いつもどこかで
嘘くさい感覚があった。
私は病気なんかじゃないし
薬なんていらないと知っていた。

きっと、あの夢の続きで
私は恋人に渡された薬を飲んで死んだか、
そのあと似たようなことを繰り返して死んだか
廃人のようになって人生を無駄にしたのだろう。

もうしない。

そう決めてきた。

そう思った。
だから私は薬も飲まなかったし
心療内科もすぐに卒業したのだろう。

あの時の反省が
少しは今世で生かされてよかった、
そんなことを思いながら
6歳の息子が寝ている布団に
もぐりこんだ。

あたたかかった。

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