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行政書士は食えるのか

「行政書士は食えるのか?」っていう話題をTwitterその他ネットのいろんなところでよく見かけます。そもそも「食える」っていくらの売上(所得)のことを指すのか明確に定義されないままなので、議論しても結論が出ないままです。それに加えて「行政書士は食えない。3年以内に○割廃業する。」ってわざわざ他人に言いたい人と「行政書士は食えるよ」ってわざわざ他人に言いたい人が一定数いて、その人達は実態を無視して、その自分たちの教条を説き続けるだけなのでもう収集がつきません。

私の「食える」の定義は、「開業から5年経過時点で、家族を養い、家を買って、子供がいれば、その子供達をなんとか大学を出してあげられるレベルの生活ができる稼ぎがあること」くらいに考えています。結婚していて、配偶者を扶養して、子供がいて、大卒を目指させるといった、家族や個人のあり方のあくまで一つのスタイルを、判断基準として使っちゃうのもどうかとは思いますが、あくまで「生きていくのにお金がいくら必要か」というのを考えるためのサンプルです。「独身で大型犬5匹をスクール通わせてコンクール目指させながら自宅飼いできる生活」でも「既婚子供無しで、音大(声楽)出た妻の音楽活動(海外含む)を支えていけるだけの生活」でもなんでもいいですが、一番わかりやすいと思うので使いました。

開業から5年くらいまでは、真面目にやってれば売上というのは増えていくものなので(増えない人もいますが)、そこまでは、なんとかご飯くえて、家賃払えて、公共料金払えれば「食えてる」ってことでいいと思います。

開業から5年も経過すれば、それ以降、さらに売上がぐんと伸びる人は少ないと思います。例外はありますが、私の周りを(大阪市の住宅街にある支部、自宅開業多しという環境の中の限られた数のサンプル)見ていても5年くらい経過した時点と、そこからさらに5年後はあまり変わらない気がします。(400→500、1000→1200程度、減る人ももちろんいます)

開業から5年が経過した時点で、「資格者1人+事務員さん1人」くらいの営業形態で売上で1000〜1200万円くらいで、税金、給料、家賃、経費(一般的な経費)健康保険、年金をひいて500〜700万円くらいが残ると思います。これくらいあれば上述した生活をなんとか送っていくことができると思います。なので、「開業から5年が経過した時点で売上1000万円〜1200万円」あたりが「食えるか食えないかをわけるライン」だと私は考えています。

で、その「開業から5年が経過した時点で売上1000〜1200万円」を達成できている行政書士は行政書士全体で考えたら1割以下だろうと思います。そこから考えると行政書士は10人に1人しか食えるレベルに達しないってことになります。しかし、行政書士に新規登録した方が100人いて、行政書士業務でしっかり売上を出さなくてもいけない人ってその半分以下です。退職公務員の方、税理士さんや他士業兼業の方、他にメインの仕事(主婦含)がある方等が多いです。私の周りだと100人いても、行政書士専業で稼ぐ必要がある人っていうのは30〜40人くらいだと思います。そしてその30〜40人の中の10人ってことになります。もちろん本当に売上が1000万円あるかどうかなんていうのは、みなさんの確定申告の控えを見せてもらったわけではないでのでわかりませんが、お金の会話の中に消費税や事業税のことが出てくるかどうかとか、その他で勝手に判断してるだけです。

とはいえ、俯瞰してみてみれば、100人いて10人しか食えていないのであれば、行政書士全体を見ればやはり「食えない資格」だと思いますし、そう言われてもしかたがないとは思います。実質的には30人の中の10人だ!って言ってみたところで3人に2人は食えないのかってことであれば、やはり食えない資格ですよね。

5年目の時点で1000万円以上の売上を出している人からすると「専業でそれに達しない人達は最低限の努力もしてない人達、最低限の努力をした10人はみんなそのラインに達している。だから食えないなんていうのは、できない人の言い訳」的になってしまうのだろうと思います。部活を最後まで続けた人からすると「途中で部活をやめた人は根性ないヤツ」的になってしまうのと同じですね。

個人的な感想としては、元々が営業職だったり、行政書士の仕事に関連する建設・運輸関連の仕事をしていたりするような人は、なんとかなっていますが、人と会うことが苦手だったり、職歴が無かったりするような人はけっこう厳しいんじゃないかなと思います。

でも、人と会うことが苦手な人でも5年もやっていれば、売上300〜500万円くらいはあげられるようになっていくと思います。そこからさらに売上あげていければいいのですが、5年経つと自分の仕事のスタイルというのができあがっていて、1人事務所的な環境の中で仕事のスタイルを変えることって難しいです。なので8年たっても10年たってもそこからは大きくは変わらないと思います。300〜500万円くらいまで売上を出すことは、特別な努力がなくても達成可能ですが、1000万円となると、やはり環境や特別な努力が必要になります。

なので、開業時から1000万円くらいの売上を目指して、そのための努力していけて、かつ、人と会うのが好きで、できれば営業職であったり関連した仕事の経験があれば、なんとかなる可能性は高くなるとは思います。 

数百万円くらいのお金を貯めた上で登録して、売上が伸びていきやすい建設業を主業務として、研修を山ほど受講して、ホームページを作成して、DMを発送して、税理士さんや司法書士さんにも建設ならおまかせください、と営業していく。最初の1〜2年は売上が極めて少ないですが、それをなんとか耐え凌ぎ、300〜500万円くらいの売上になったときに、そこで満足せずに、1人だけだと事務処理大変ですが、さらに売上伸ばす方向に努力して、事務所借りて、事務員さん雇う方向に向かっていく(事務所借りるのも、事務員さんも1000万円程の売上の中では必須ではないです。1人事務所でもなんとかやれるとは思います。)

そんな感じで頑張れれば、5年で1000万円の売上は達成できるとは思いますが、人間、みんながそこまで意思が強いわけではないので、できない人の方が多いとは思います。なので、過去の頑張るべきとき(仕事、勉強、スポーツ等)にそこまで頑張れなかった人は、1000万円くらいの売上を目指して行政書士になるのはやめておいた方がいいのかなとは思います。

そして、1000万円〜1200万円くらいの売上っていうのは、単年でやっていけるレベルであって、年金も自分で積み立てていかないといけない自営業者であること、病気になっても基本的にはなんの保証もないことを考えると、経費同じくらいで1500万円くらいの売上が本当は望ましいところです。そして1500万円以上の売上となってくると、いったい何人に1人が到達できるのだろうとか考えてしまいます。

売上300〜500万円くらいを自宅兼の事務所で稼いで、それで生活が成り立つのであれば(共働き環境、その他)、行政書士で開業するのは悪くない選択だと思います。1000〜1200万円程度売上出して、家買って、子供を大学まで出すぞ的な方向を目指すのであれば、自分自身の環境と正確と能力を冷静に見つめてみてからにした方がいいかと思います。登録するときは誰だって、300〜500万円で満足だとは思っていません。でも3人に1人くらいしか、1000万円程度の売上を出すことはできません。それが現実です。

私もえらそうにこうやって書いていますが、登録した頃は妻が月額20万円くらいの稼ぎがありましたし、私も法律事務所の事務員をして一定の給料、それに加えてネットで商売して月額10万円程度の売上がありました。ご飯は食べていける環境でしたし、民事についての知識(遺言、戸籍、関係図、協議書)もあり、弁護士さん、司法書士さん、税理士さん等の知り合いもいて(社労士さん、土地家屋調査士さんも法律事務所でいろいろとお願いしていましたが、行政書士とは全く接点が無かったです。私が登録したときには「で、何するのが仕事なんですか?」と弁護士さんから真顔で聞かれました。)万全の体制だったと思います。とはいえ、法律事務所から仕事が来ることはなかったので(何年かたって帰化の仕事を1件紹介されました、キャンセルになりましたが)営業は頑張る必要がありました。

私は行政書士に登録した年は、悪性リンパ腫の治療の真っ最中でしたので、その年は何も活動していません。その翌年も秋くらいまでは何もせず(法律事務所にはいってました)でしたので、実質は3年目くらいからです。売上は3年目で200万円程度、翌年300万、500万円、700万円(子供産まれた)、1000万円みたいな感じで増えました。私は行政書士ですが許認可ではなく、遺言や相続(相続人確定、関係図作成、遺産分割協議書作成)を主に扱っています。なので口コミ、紹介が極めて少ないので、地域にチラシを何十万枚とまき続けてました。(新聞折り込み、ポスティング業者さん、自分でもポスティング)、なので1000万円だけど、広告宣伝費300万円だったりもしました(^_^;)そこからの数年間で自分でまいたチラシだけでも数十万枚はあると思います。個人的には好きなラジオを聞きながら、チラシを投函していくのがまったく苦にならなかったです。

行政書士で遺言や相続を主として取り扱いたいという人は一定数いますので、新規登録者の方で私と同じやり方でやろうとした人が同じ支部の中でも何人かいました。ある程度指導したりもしましたが、誰も継続することはできませんでした。単純にチラシまき続けていれば(お金があれば業者さんにお願いする)一定の問い合わせはあるので、その方達の相談聞いて名刺配ってを繰り返していく中で、仕事も増えていきます。私にとっては苦ではない作業でしたが、他の方にとってはそうではなかったようでした。その方達は今は許認可が主になっていると思います。それ以降は、新規登録者で自分で稼いでいかなくてはいけない人には民事を勧めることはしなくなりました。

「行政書士で売上1000万円くらいは全然問題無し、だから頑張れ!」っていう人は多いですが、なかなか難しいんじゃないかなとは思います。

あと「行政書士は3年以内に多数が廃業する。」は実情に即してないと思います。100人程度の支部で人の出入りを管理していましたが、登録して5年以内に廃業する人ってほとんどいなかったです。行政書士は会費が安いので、仕事が無くて他の仕事が主になっていても、そもそも登録をやめません。あとは独身で親と同居だったり、共働きだったりする方が多いので、売上があがらなくても、なんとかそれでやっていけます。結婚して子供がいて家のローンがあるのに会社やめて行政書士になって、それで思ったようには稼げなくて、廃業して会社員に戻る、みたいな勇気のある人は少ないです。(大阪市の住宅街にある支部での話です。他の地域のことはわかりません)

行政書士になることを考えておられる方の参考になれば幸いです。

行政書士会が発表しているアンケート(29Pに売上についての結果が出ています.)



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