井戸端怪異〜過去編(二宮金次郎像)〜
『井戸端怪異〜過去編(二宮金次郎像)〜』
四人用声劇台本(男:女:不問=1:2:1)
声劇台本置き場…https://taltal3014.lsv.jp/web-app/?sid=5306
《登場人物》
・二宮金次郎…怪異『二宮金次郎像』
・鏡…怪異『階段の鏡』
・花子さん…怪異『トイレの花子さん』
・ナレーション…怪異達を見守る存在
※ナレーションの台詞少ないので兼役にしても大丈夫です。
《本編》
ナレーション 「友人、恋人との別れが辛いのは怪異達も同じ。」
【昇降口】
花子さん 「今日は暑かったのぉ。外はもっと辛かったんじゃろ?」
二宮金次郎 「風吹いてたから割と平気だったよー♪」
花子さん 「おぉ、そうだったんか。明日は雨らしいぞ?蒸し暑くあるのは嫌だが、雨は好きじゃ。」
二宮金次郎 「僕も雨好き!鳥が止まりに来ないし、体の汚れも取れるんだ〜!」
花子さん 「水浴びみたいなもんじゃな。」
二宮金次郎 「でもね、雨の次の日は苦手なんだぁー。」
花子さん 「何故じゃ?」
二宮金次郎 「雨水が体に張り付いてる感覚が気持ち悪くて…。掃除?する人がここ何年も防水?撥水?のやってくれなくてさ。」
花子さん 「ほぉ。わしがどうにかできればいいんだがのぉ。」
二宮金次郎 「こうやって話に来てくれるだけで僕嬉しいんだぁー!だからいいんだよ。」
花子さん 「せめて室内に置いてくれれば良かったんだけどのぉ。」
二宮金次郎 「そうだねぇー。そしたらもっと長い時間話せるのに…。」
花子さん 「まぁ、運動だと思うしか無いかのぉ。」
二宮金次郎 「あっ、そろそろ2時だ!」
花子さん 「おぉ、今日も会いに行くんか?」
二宮金次郎 「そりゃあ好きな子には毎日会いたいもんでしょ?花子さんも一緒に行く?」
花子さん 「いや、今日は遠慮しておこうかの。二人でしか話せんこともあるだろうし。」
二宮金次郎 「そっか、また三人で話しようね。」
花子さん 「じゃあのぉ。」
【階段】
二宮金次郎「鏡ちゃん、来たよー。」
鏡 「あっ、金次郎さん。」
二宮金次郎 「今日は何の話をしようか?」
鏡 「子どもたちが「暑い」って言ってたから、きっと今日はいい天気だったんですね。」
二宮金次郎 「そうだね。風が吹いていたからまだ過ごしやすかったけど、少しずつ暑い日が増えてきたよ。」
鏡 「私は外の景色を見たことがないから、いつも金次郎さんがお話してくれることがとても嬉しくて幸せなんです。」
二宮金次郎 「そんな!僕も鏡ちゃんとこうやって話ができて幸せだよ!」
鏡 「うふふ。金次郎さんと花子さんがいつも気にかけてくれて、話に来てくれて私は幸せ者ですね。」
二宮金次郎 「僕も花子さんも鏡ちゃんの人柄の良さに惹かれて、話がしたいから来てるんだよ。だからそんな風に思ってもらえてて嬉しいんだー!」
鏡 「金次郎さんの声って、夜の暗い中でも明るくて私の心をいつも照らしてくれているんですよ?」
二宮金次郎 「え?そんなぁー。なんだか照れちゃうよ…。」
鏡 「その笑顔もとても素敵だと思います。」
二宮金次郎 「鏡ちゃん…。」
鏡 「はい。どうしたんですか?」
二宮金次郎 「僕の勘違いだったら恥ずかしいんだけど、鏡ちゃんって僕のこと好き?僕は大好きだよ。」
鏡 「金次郎さんのことも好きですよ?」
二宮金次郎 「えっと…その好きはきっと僕の言ってる好きとは違う気がするな…。」
鏡 「そうなんですか?私の言った好きは、ずっと一緒にいたいって気持ちが近いです。花子さんのことも好きなんです。」
二宮金次郎 「ずっと一緒にいたい…か。」
鏡 「金次郎さんは違うんですか?」
二宮金次郎 「え!?違わないよ!ずっと一緒にいたい。でも、花子さんに対しての好きと鏡ちゃんに対しての好きは全然違うんだ。」
鏡 「………。」
二宮金次郎 「いきなりごめん。そろそろ僕行くね。」
鏡 「えぇ、また明日も会いに来てくれますか?」
二宮金次郎 「うん!」
【日中/階段】
花子さん 「鏡ー。」
鏡 「……。」
花子さん 「おーい、ぼーっとしてどうしたんじゃ?」
鏡 「あら、花子さん。ごめんなさい。」
花子さん 「…昨日何かあったんか?」
鏡 「いいえ。特に変わったことはありませんでしたよ。」
花子さん 「気のせいじゃったか!すまんすまん。」
鏡 「花子さんは今日はお散歩ですか?」
花子さん 「無性にうろうろしたくなってなぁ。物や新しい怪異が増えてたり、久し振りに会う怪異達と世間話もできて楽しかったぞ。」
鏡 「私はここから動けないので、とても羨ましいです。」
花子さん 「基本動けない者が多いから、わしが伝え話すしか無いのが寂しいところだがのぉ。」
鏡 「花子さんが居てくれているお陰で他の怪異の方や出来事を知れるので、私は嬉しいです。」
花子さん 「わし自身が誰かと話したいと思うから、色んな怪異たちに会いに行っておるだけじゃよ。」
鏡 「そうだとしても、花子さんが居なかったら…今頃私は一人でしたから。」
花子さん 「ん?金次郎がいるじゃろ?」
鏡 「何言ってるんですか。金次郎さんだって、花子さんが居なかったら私の存在にさえ気づいていないと思いますよ?」
花子さん 「いや、鏡のこと話したのは確かにわしじゃが、そうしなくともいずれは気づいておったと思うぞ?」
鏡 「私のいる場所から昇降口が見えないように、あちらからも私の姿は見えないんです。」
花子さん 「学校の中を探検してみたいと言うておったでそんなこともないと思うんじゃが…。」
鏡 「声が聞こえると嬉しくて、聞こえない日は寂しくなったり…。それが今では姿を見ながら話が出来ているんです。幸せです。」
花子さん 「今が幸せならそれでええと思うんじゃ。」
鏡 「そうですね。」
花子さん 「じゃあ、わしはそろそろ帰ろうかのぉ。」
鏡 「また来てくださいね。」
花子さん 「…?もちろんじゃよ。」
鏡 「今日は会いに来てくれるかしら…。昨日の様子だと来づらいかもしれないですね。」
【昇降口】
花子さん 「おぉ、金次郎!待っておったぞ。」
二宮金次郎 「あれ?花子さん…何か用事だった?」
花子さん 「いや、用と言うほどじゃないんじゃが。一つ気になることがあってのぉ。」
二宮金次郎 「ん?深刻な話?」
花子さん 「いや、深刻ではない。」
二宮金次郎 「そっか、少しホッとしたよ。」
花子さん 「…昨日。鏡と何を話したのかは知らんが、少し気にしておったのでな。そのことを伝えておこうと思ったんじゃ。」
二宮金次郎 「鏡ちゃんが?!僕が突っ走りすぎたせいだ…。」
花子さん 「お主、何を言うたんじゃ?」
二宮金次郎 「僕の好きと鏡ちゃんの好きは違うって…。」
花子さん 「そこは人それぞれだからのぉ。」
二宮金次郎 「ふわっとした言い方しちゃったから、今からちゃんと気持ち伝えてくる。」
花子さん 「おぉ、いってらっしゃい。」
【階段】
鏡 (M)昇降口の方から二人の声が聞こえる。音が反響して会話の内容まではわからなかったけれど。
二宮金次郎 「鏡ちゃーん!今日も会いに来たよぉー。」
鏡 「あっ、来てくださったんですね!とても嬉しいです。」
二宮金次郎 「今から僕は鏡ちゃんに告白します。」
鏡 「…?!」
二宮金次郎 「初めて話をしたときから好きでした。」
鏡 「私と恋仲になりたいってことですか?」
二宮金次郎 「うん。告白するって言わないと、ちゃんと伝わらなさそうだったから。」
鏡 「そっ…それは確かに。ありがとう。」
二宮寛次郎 「告白の返事はいつでもいいし、なんだったら返さなくったっていい。」
鏡 「…あの、実は昨日の事を聞いてから色々考えていて、今日一日頭の中に金次郎さんが居ました。」
二宮金次郎 「え…。」
鏡 「私、金次郎さんのこと好きです。」
二宮金次郎 「花子さんに対しての好きと一緒なんでしょ? 」
鏡 「いいえ、同じじゃありませんでした。」
二宮金次郎 「……。」
鏡 「私、金次郎さんのこと好きなんです。」
二宮金次郎 「ちょっと待って、それは告白されてるって思っっちゃっていいの?」
鏡 「はい。告白してます。」
二宮金次郎 「じゃあ、両思いってこと…かな?」
鏡 「はい。」
二宮金次郎 「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!」
鏡 「叫んじゃうくらい嬉しんですか?」
二宮金次郎 「当たり前じゃん!だって好きな人に好きになってもらえてたんだよ?嬉しくないわけ無いじゃん!」
鏡 「でも、あんまり大きな声を出すと学校中の怪異達に聞かれちゃいますよ。」
二宮金次郎 「聞かせてやればいいよ!鏡ちゃんは今から僕の彼女だって。」
鏡 「うふふ、…そうですね。金次郎さんの彼女…照れてしまいます。」
二宮金次郎 「え?可愛い。」
花子さん 「なんじゃ、なんじゃ?金次郎の叫び声が聞こえて来たんじゃが…元気そうでなによりじゃ。」
二宮金次郎 「あぁ、びっくりさせちゃってた?ごめん。」
花子さん 「大丈夫じゃよ。」
鏡 「花子さん、昼間はありがとうございました。お陰で自分の気持に気づくことが出来ました。」
花子さん 「いや、わしはなんもいとらんよ。」
二宮金次郎 「昼間?何話してたの?」
花子さん 「秘密じゃ。」
二宮金次郎 「秘密にされると気になるじゃんかー。」
鏡 「うふふ。」
ナレーション 「二人の怪異の想いが通じ、一つの恋が実ったのも束の間。紡いできた幸せな時間は無情にも終わりが近づいていたのです。」
【階段】
鏡 「え…。明後日?どうしよう。」
鏡 「(M)何も言わないまま別れるのは辛いけれど、私はきっと再利用されるわけじゃないだろうから…。」
鏡 「(M)伝えても同じ思いをするのなら、残りの時間を彼の笑顔と声を心に刻みたい。」
花子さん 「鏡よぉ。今日も散歩がてら来たぞぉ。」
鏡 「あぁ、花子さん。おはようございます。今日はどちらまで行かれるんですか?」
花子さん 「音楽室に行こうと思っておる。」
鏡 「音楽室ですか?楽器がある場所だということは、子供達の会話で知っていますが…。」
花子さん 「先日会ったばかりの怪異のところに行こうかと思っとるんじゃ。」
鏡 「そんな場所にも怪異の方っていらっしゃるのですね。」
花子さん 「意外とどこにでも居るもんじゃよ。」
鏡 「そうなんですねぇ。」
花子さん 「じゃあそろそろ行ってくるのぉ。」
鏡 「お気をつけて。」
鏡 「(M)今まで通り話せていたでしょうか。」
【昇降口】
二宮金次郎 「今日は何を話そうかなぁー♪」
鏡 「金次郎さん?そこにいらっしゃるのですか?」
二宮金次郎 「あれ、鏡ちゃん?まだ2時前なのに…。ちょっと待ってて!今からそっちに行くから。」
鏡 「はい。」
【階段】
二宮金次郎 「お待たせ。」
鏡 「いえ、私の方こそいきなり大きな声出してしまってごめんなさい。」
二宮金次郎 「ううん。僕は少しでも長く鏡ちゃんと話ができるのが嬉しいんだ。」
鏡 「私もです。」
二宮金次郎 「この時間がずっと続けばいいのに。」
鏡 「…そうですね。」
鏡 「(M)今日が最後の時間だということは、金次郎さんには知られたくない。屈託ない彼の笑顔を自分に写しながら、声が震えないように気をつけていた。」
二宮金次郎 「あっ、そろそろ僕戻らなくちゃ!じゃあ、また明日!」
鏡 「もうそんな時間…。金次郎さん!」
二宮金次郎 「どうしたの?」
鏡 「私、金次郎さんのこと大好きです。」
二宮金次郎 「え?!いきなりどうしたの?びっくりしちゃったけど、嬉しい。僕も鏡ちゃんのこと大好きだよ。」
鏡 「(小声)こんな私のことを好きになってくれてありがとう。」
二宮金次郎 「ん?ごめん聞こえなかった。」
鏡 「いえ、何でもありません。呼び止めてしまってすみません。気をつけて。」
二宮金次郎 「全然大丈夫!じゃあね。」
【午前中/階段】
鏡 「もうここで子供達の話し声を聞くこともできなくなるんですね。」
鏡 「(M)何より友人と金次郎さんともうお話が出来なくなることが辛い。」
鏡 「金次郎さん、ずっと大好きです。」
【昇降口】
二宮金次郎 「昨日はなんだか元気がなかったような気がするけど…。」
花子さん 「あっ、金次郎!今来たんじゃな!」
二宮金次郎 「わー!今日は花子さんも一緒に話せるんだね。」
花子さん 「そんな悠長なこと言っている場合ではないぞ!急いで階段まで来るんじゃ!」
二宮金次郎 「そんなに慌ててどうしたんだよぉ。」
花子さん 「その様子じゃと、お主も知らんかったんじゃな。」
二宮金次郎 「知らなかったって何を……え、鏡ちゃんは?」
花子さん 「わからん。わしも少し前にここに来たばかりじゃったから。」
二宮金次郎 「どこか違う場所に移動したとか…?」
花子さん 「それなら鏡も言うじゃろ。何も伝えておらんかったということは…。」
二宮金次郎 「まさか…。」
花子さん 「恐らく撤去されたんじゃないだろうか。」
二宮金次郎「…昨日元気がなかったのって。」
花子さん 「……。」
二宮金次郎 「なんで…なんで何も言ってくれなかったんだよ!僕は能天気に笑っていただけじゃないか!教えてくれていたら…。」
花子さん 「伝えてくれていたとしても、わしらには何も出来んっかったんじゃないかのぉ。」
二宮金次郎 「それはっ!…わかってる。わかってるんだよ!それでも僕は言ってほしかった。」
花子さん 「きっと最後だからこそ、お主の笑った顔を見たかったんじゃないか?」
二宮金次郎 「……。」
花子さん 「このことを知っておったら笑顔でなんて無理じゃたろ?」
二宮金次郎 「…そうだね。」
花子さん 「それがわかっておったから、金次郎にも伝えられなかったんじゃないかのぉ。」
二宮金次郎 「鏡ちゃん…。もっと話したかった。ずっと一緒に居たかった。…大好きだよ。今もこれからもずっとずっと大好きだよ。」
花子さん 「……。」
ナレーション 「伝えても伝えなくても、伝えられても伝えられなくても辛いのが別れというもの。幸せになってほしいと願う私の気持ちだけでは、誰も救えない。」
END.
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