立ち合い出産がアリーナ席だった件 その二 ※復刻版※訳あり復刻



※誤って記事を削除してしまい、復刻しましたが、皆様から頂戴しましたスキやコメントが上手く復刻出来ませんでした。
その節は、沢山のスキやコメント、ありがとうございました。









立ち合い出産がアリーナ席だった件 その壱|sumiko_h #note https://note.com/sumiko_h/n/n1d59e585f2eb

その壱からの つづき

何か出てる

ギャーーーーーー!

声こそ出さなかったものの、心の中では絶叫した。

私の下半身から、オシッコではない何かが出ている。しかも噂によく聞く破水ではない様だ。

友人、知人の経験談によると、破水した時「パンっ!!」という、お腹の中からの破裂音と共に、激しく大量の羊水が出ると聞いていた。

では、私のチョロチョロは何だろう……。

ベッドの上で体操をして、お腹に力を入れた時に、チョロチョロ……チョロチョロ……。

一体、何が出ちゃってるんだろう……

もう何が何だか分からないけど、恐らく緊急事態のこの今、初めてのナースコールを押してみた。

生まれてこの方、初めての入院だったので、ナースコールを押して、天井から助産婦さんの声が聞こえた時に、どこを見て何を言えばいいのか分からなかった。

藁にもすがる思いで、私は天に向かって

「あの……何だか時々……チョロチョロと……何かが出てるのかもしれません……」

歯切れ悪く説明すると、ものの1分で師匠が病室へ飛んで来た。

「ちょっと!どうしたの⁉見せてごらん!」

師匠は私のパジャマのズボンとパンツを勢いよく下げた。

そして私のパンツの中を確認すると

「ハハァン、これは破水だよ、高位破水」

と言った。どうやら、噂によく聞くタイプの破水ではなく、高位破水といって、子宮口から遠い位置で破水し、チョロチョロと羊水が流れる、静かなタイプの破水だった様だ。

今宵、私がこうなると予測していた高次元の存在は、祖父を通じ、私に入院セットを持たせ、予定通り破水をした。

そうとなれば、あの鉄アレイもスクワットも、始めからプログラムに組み込まれていた事となる。

うむ。了解。

ぼんやりしている私に師匠は「今はまだまだ余裕があるけど、しばらくしたら分娩室に移るよ」と告げた。

3時間ほど個室で待機してから、師匠と一緒にヨタヨタと分娩室へ移動した。

何とも昭和な造り丸出しの病院なので、分娩室も、何の飾り気もないどころか、ちょっと怖い雰囲気さえした。

それはそう。しん……と静まった分娩室。時刻は午後11時を過ぎていた。

「アンタ、思ったよりも早く出て来そうだから、旦那さんに連絡しておきな!」

と師匠に言われたが、私は今、腹が痛くて悶絶しているのに、そういうシステムなのか……と思いつつ、握り締めていた携帯電話で夫に連絡をした。

電話に出た夫は、明らかに寝ぼけた声だった。寝落ち寸前だったらしい。  

「分娩室に移ったよ。思ったよりも早く産まれそうだよ。」

およそ1時間後に、煙草の匂いをプンプンに纏った夫が分娩室に表れた。

師匠が間髪入れずに

「ご主人、煙草吸って来たね。煙草は良くないよ!」

と、いきなり強めに言っていたのが、ちょっと面白かった。誰にでも間髪入れずに強めに言うのは、この師匠の性分らしい。

これから院長がここへやって来て、院長と師匠と私で協力して、そして夫に見守られながら、人生の一大事を迎える。

私はこれから、出産をするのだ。

私は今まさに

オンステージ☆

なのだ‼

次回へつづく





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