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2016年 広島東洋カープ(優勝)

1997年に3位に入って以降1998~2012までずっとBクラスで低迷していた広島東洋カープ。しかしその期間でのドラフト戦略が実り、2013年に16年ぶりにAクラスとなる3位に入ると翌年も3位、2015年は4位だったものの暗黒だったチームに光が見えていた頃でした。そして2016年から2018年にかけての3連覇。今回は25年ぶりの優勝(V1)となった2016年の広島東洋カープを振り返りたいと思います。


優勝に向けて

前年は戦力としては足りていたものの、大型連敗や緒方孝市新監督の謎采配などもあって4位。さらにこの年最多勝・沢村賞を獲得した絶対的エース・前田健太がポスティングでメジャーへ挑戦。大黒柱を失ったチームですが、特にその穴を埋める補強は行わずドラフトでは大阪商業大の岡田明丈を1位指名。またNTT西日本の横山弘樹(2位)、王子の西川龍馬(5位)などといった即戦力タイプを多く指名しています。
外国人では中日からエクトル・ルナ、投手ではジェイ・ジャクソン、ブレイディン・ヘーゲンズの2投手を新たに獲得。傘下のカープアカデミーからサビエル・バティスタ、アレハンドロ・メヒアが入団しています。

打撃陣

2016年 広島 打撃陣

3連覇の主役はなんといっても「タナキクマル」の上位打線。
1番の田中広輔は出塁率が高いうえに、13HR打つ一発と28盗塁という俊足を生かし、攻撃的1番として躍動。
2番菊池涼介は打率.310とハイアベレージかつ13HRそして181安打とこの年の最多安打を獲得。またセカンドとして広い守備範囲と堅すぎる守りからついた異名は「赤忍者」。マツダは守りづらいという話は聞きますがその中でも141試合出場でエラーは僅か4つ。とんでもないです。
3番は丸佳浩。全試合出場で3割近い打率を残し20HR90打点。そして塁上に出れば23盗塁と走りまくり。3連覇時の広島は打力だけではなく走塁面でも大きなアドバンテージを出していました。

4番は帰ってきた主砲新井貴浩。39歳ながら規定打席到達で打率3割、19HR、101打点で年齢を考えればようやりすぎてる成績に。またこの年2000本安打を達成しています。
そしてなんといってもこの年最大のブレイクは鈴木誠也でしょう。緒方監督も「神ってる」というレベルの活躍。打率.335 29HR 95打点と高卒4年目の22歳の鈴木がここでOPS1も超える大覚醒。特にオリックス戦では数々のトラウマをオリファンに植え付け、オリックスを応援するポンタ(バファローズポンタ)の服を再三脱がす(ポンタは負けたら脱ぐ)活躍から「ポンタ絶対脱がすマン」として知られています。
14年HR王のエルドレッドも36歳ながら21HRを打つと、7番の安部友裕がこの年にプチブレイク。捕手は石原慶幸、曾澤翼で回しています。

中日から移籍したルナは開幕4番を張り、59試合で4番として出場。.272 5HR 34打点を記録。ドラフト5位の西川も打席は60打席弱ですが打率.294とその才能の片鱗を見せます。松山竜平は代打として主に起用、打率.291,10HRと「これが代打なのか…」となるような成績でした(贅沢すぎる)。

左からタナ(田中)キク(菊池)マル(丸)
去年の阪神なんかもそうだが、上位打線が出塁力に優れてて中軸も強いと
そりゃ多く得点できるよね。

投手陣

2016 広島 投手陣

この年はクリス・ジョンソン、野村祐輔、黒田博樹の先発3本柱が大活躍。ジョンソンは防御率2.15で15勝を挙げ、1962年阪神のジーン・バッキー以来2人目の外国人選手での沢村賞を獲得。
野村はジョンソンを1勝上回る16勝で最多勝、勝率.842で最高勝率を獲得しています。そして41歳の黒田は10勝を挙げ、日米通算200勝を達成(最終的には203勝する)。結局この年限りで引退するのですが41歳になっても150イニングを消化しています。あまりにもレジェンドすぎる…
ただ先発3本柱以降があまり固定できずドラ1の岡田は4勝、福井優也は5勝、前年先発メインだった大瀬良大地が中継ぎに回ったり先発事情はそこまで良いわけでもありませんでしたが、QSや失点数、先発防御率は3.29とリーグ1位でした。

救援陣ではヘーゲンズ・ジャクソンの2人の新外国人が大活躍。ヘーゲンズは中継ぎながら8月以降は先発転向してこの年7勝19H。ジャクソンも67登板で防御率1.71で37Hとリリーフ陣を支えると、今村猛、中﨑翔太が続きます。今村も67登板で防御率2.44で22Hとフル回転。そして守護神の中﨑は61登板で防御率1点台で34Sとこちらも素晴らしい活躍。救援防御率も3.06でリーグ1位。チーム防御率は3.20とやっぱりリーグ1位。この年の広島は打はもちろん投手力でも群を抜いていたことがわかります。

「神ってる」シーズン

開幕4番を務めたルナが怪我離脱すると代わりの4番に入ったには新井貴浩。
4月26日のヤクルト戦で新井は2000本安打を達成。プロ18年目での達成となりました。ただ4・5月は勝率5割で混セ状態でしたが、鬼門の交流戦で広島はセ・リーグ唯一の勝ち越しとなる3位に滑り込むと6月14日の西武戦からリーグ戦再開後の29日まで11連勝と波に乗り、6月時点で2位巨人に9ゲーム差をつけると、以降は怒涛の如く勝ち星を重ね8月には月間17勝を記録。
これで完全に独走体制に入り、9月10日、東京ドームでの巨人戦。
最後は田中へのショートゴロをファーストの守備に就いてた新井ががっちりつかみ試合に勝利したと同時に25年ぶり7度目となるリーグ優勝を決めたのでした。新井と黒田のマウンド上での抱擁を見て感動した広島ファンも多いのではないでしょうか。当時の試合の広島地区の瞬間最高視聴率はなんと驚異の71.0%。とんでもないですね…

4/26 ヤクルト戦(神宮)で2000本安打を決める。
アニキ(金本知憲阪神監督)からは冗談まじりの祝福の声が送られた。
9/10 巨人戦(東京D)での緒方孝市監督の胴上げ
当時リアルタイムで見てたけど赤に染まったカープファンの歓声が凄かった

終わってみれば2位巨人とは14.5ゲーム差離しての優勝と他を寄せ付けませんでした。CSを順当に勝ち上がると日本シリーズでは日本ハムと対戦。
この日本シリーズ開幕戦の前日、黒田博樹の引退が発表されその花道を日本一で飾りたかったもののマツダスタジアムで2連勝するもそこから4連敗と日本一の栄冠は逃しました。

暗黒広島戦士の引退

この年は広島暗黒時代を支えた選手たちが引退。00年ドラフトで(珍しく)広島を逆指名して入団した廣瀬純はレギュラーとして通年試合に出ることは少なかったものの2010年に大ブレイク、15試合連続出塁の日本記録を樹立しています。廣瀬の応援歌の「広島伝説」は人気フレーズで現在はその前奏ごと菊池涼介に流用されています。
また石原慶幸らと正捕手の座を争った倉義和もこの年引退。高橋建やその他左腕投手先発時の専属捕手のイメージが強いです。
また前年オフ構想外となり楽天に移籍した栗原健太も引退。「江藤(智)2世」とも言われた栗原は04年から1軍に定着しだすと06年からは4年連続の20HRを記録。またファーストとして3度のゴールデングラブ賞を獲得するなどまさに暗黒広島の4番として活躍していました。(なぜか今ロッテの打撃コーチやってる)

そしてなんといっても前述の黒田博樹の引退です。97年専修大学が逆指名で広島に入団。全盛期はリーグトップの完投数を6度(01年は13完投)するなどタフな先発投手として活躍。比較的打者有利とされる広島市民球場で06年に防御率1.85と抑える素晴らしいピッチングで07年オフにポスティングでメジャー挑戦。ドジャース、ヤンキースと名門チームを渡り歩き7年で79勝を挙げるも2014年オフ、20億円ともいわれる契約を蹴って「男気で」広島に復帰。
復帰初年度の2015年は169 2/3回とフル回転で11勝を挙げるとこの年は10勝を挙げています。ちなみに黒田の現役最後の打者は現在かつて黒田のいたドジャースで大活躍中の大谷翔平。なんか縁を感じますね。
球団は背番号15を永久欠番とすることを発表。11月5日の優勝報告会・パレードで引退セレモニーを開催。最後はチームメイトに背番号にちなみ15回胴上げされると最後はマウンド手前で涙を流しました。↓

個人的に応援歌の「超速球の球で 敵を突け突け 嵐か松風か それが黒田節」はめっちゃかっこいいと思う。

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