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芸能界の報酬構造のモデル化と生き残り戦略の推察と大規模アイドルグループ:その1

芸能界の報酬構造を単純なモデルにしてみる

①芸能人を観察すると以下のような現象がみられる
 現象1:売れっ子は寝る間もないほど忙しいが、売れてないと月に数回程度の仕事しかなく、タレント間の繁閑の差が激しい・・・仕事の局在化現象
 現象2:売れっ子は年収で億を稼ぐこともあるが、売れてないとバイトをしてようやく食いつなぐことができる程度の報酬しかない・・・極端な報酬格差現象
以上のような現象を再現できるモデルを考えてみる。

②芸能界の報酬構造を単純化したモデル(以下:芸能界モデル)として、番組の数やギャラなどを以下のように設定する。
 設定1:テレビ局は1局のみ。さらに1番組1時間で、一日当たり夜の9時から12時までの3時間の3番組、一週間で合計21番組のみとする。
 設定2:出演ギャラは9時台が40万円、10時台が20万円、11時台が10万円とする。

 設定3:タレントは一日当たり1番組しか出演できず、週に5番組までしか出られないものとする。
 設定4:タレントはA、B、C、D、E、Fの6人で、実力の順位は1位…A、2位…B、3位…C、4位…D、5位…E、6位…F、とする。
 設定5:タレントの実力順位が高い者から高額ギャラの番組を取っていく。
 設定6:1番組あたり出演できるタレント数は1名のみとする。


③上記“芸能界モデル”の設定に基づく結果は以下の通り

④上記結果と現象を比較検討すると以下の通り
 比較1:A、B、C、Dといった設定上”売れっ子”に属するタレントは週5日仕事があるが、E、F、になると仕事量が激減しており、現象1を再現できている(と思う)。
 比較2:Aは週に200万円を稼ぐが、Ⅾはその1/4、Eは1/20、Fに至っては0円となっており、現象2を再現できている(と思う)。
以上より、上記「芸能界の報酬構造を単純化したモデル」は、本質は捉えているのではないかと考える。
 
⑤この“芸能界モデル”を基に考察してみる。
 考察1:報酬は実力値の比では決まらず、実力値の順位のみに依存する。
たとえば、各タレントの実力値が以下の2つのパターンだとする。
パターン1:A…100点、B…70点、C…45点、D…25点、E…5点、F…0点
パターン2:A…100点、B…99点、C…98点、D…97点、E…96点、F…95点
上記パターン1だと報酬比と実力値の比が一致している。しかしAとFの実力値の差が5しか無いパターン2でも、“芸能界モデル”に当てはめると報酬額は同じ結果になる(設定5から当然ですが)。これから実力値の比ではなく実力値の順位が報酬を決めていることが分かる。
 考察2:タレントの数が6人だろうが1000人だろうが報酬は上位5人が独占する。
“芸能界モデル”でも実際のテレビ業界でも番組数は有限。そのためタレントの数が十分多く、実力値の順位に基づいて報酬が配分されると、番組数に応じた一定の順位までしか番組出演の依頼が回ってこない構造になっている。
 
⑥上記考察1や考察2のようないささか歪(いびつ)ともいえるような結果が生じるのは、タレント数に比して番組数が少なく、かつ、タレント数に比してキャスティング権を持っている人の人数が圧倒的に少ないから。逆に番組数やキャスティング権を持っている人の数がタレント数に比して十分多ければ、パターン2の場合だと実力値に比べ割安な報酬になっているFにたちまち依頼が殺到し、Fはすぐに実力値に見合った報酬を得ることになる。ただ、この番組数とキャスティング権を持っている人の少なさは構造的なもので、容易には変わることが無いため、この構造ありきでの戦略立案が必要になる。
 
⑦番組には報道やバラエティ、ドラマなど様々な分野があるため、タレントもその分野に応じ大まかに住み分けがされている。お笑い芸人のような競争の激しい分野だと、上記考察1のパターン2のような状況になっており、実力値の比と報酬比があまり一致していない可能性がある。そして、「実力値が90点以上なら食っていける」みたいな目安となる値が存在せず、とにかく上位5位以内に入ることが重要課題となる。逆にニッチな分野(外タレ枠とかニューハーフ枠とかかな?)だと上記考察1のパターン1に近い状況となり、実力値の比と報酬比が比較的一致しているかもしれない。しかしテレビ業界は長い年月を経た成熟産業であるため、どのニッチ分野もすでに飽和状態になっている可能性が高く、既に存在するニッチ分野への挑戦は功を奏しないのではないかと考える。それよりも、新たなニッチ分野を見つけたりニッチ分野を新たに作ったりする方が建設的かもしれない。

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