相続登記の難しさ



この記事について

この記事は自分が不動産を相続して、自分で登記するまでの一連の流れを書いています。登記自分でやると面倒くさいとよく聞くけどマジでした。明文化されてない慣例やらなんやら。長文スマソ

不動産を相続した経緯


不動産を相続することになった。立派なマンションや土地付き実家ではない。岐阜県山中にある謎の山林だ。

なんかこの辺の山の一角らしい

父親が亡くなって、遺品を整理しているうちに土地の売買契約書が出てきたのだ。昭和47年売買、600平米の山林。勿論、行ったことなどない。そもそも道が繋がってなさそうだし、現地行っても判然としなそう……

相続対象となる財産目録を作成するため、下呂市に土地の評価額を出してもらうと5000円ぽっち。う~ん妥当。


控えめに言ってゴミ

こんなもん資産としての価値なんて無いし、将来管理トラブルが起きたときのリスクの方が怖いのでは?ということで、相続の話し合いも滞っていた。

姉が、どこからともなく「負動産」の引取業者なんかも見つけてきた。見積を取ると60万円強で引き取ってくれるらしい。ここに引き取ってもらった後で財産を分割しようということだったが、本当にこの業者はケツをもってくれるのだろうか?という不信感からまた話は暗礁へ……

〜それから2年の時が過ぎた〜
後先考えず仕事をやめてニートになった僕は現金を欲していた。
その土地、俺がなんとかするから遺産分割協議しようぜ!と声をかけたのである。

遺産分割協議書の作成もめんどい


ちゃんとした遺書がなく亡くなった場合、相続人みんなで合意した財産の取り分リスト、遺産分割協議書を作るらしい。両親はすでに他界しているので相続人は兄と姉と僕だ。

よく、他の相続権利者がいない事の証明のため、亡くなっなった人の出生から死亡までの戸籍謄本集めが面倒くさいなんて話があるが、自分たちの場合は別の所で苦戦した。

遺産分割協議書を銀行等の機関に提出するときには、相続権利者本人間で合意したことを示すため、実印の押印と印鑑証明の添付を行う。間の悪いことに、兄は2021年から中国に赴任していた。住民票を一時的に抜いているので紐付けられた印鑑証明が存在しなかったのだ。

更に調査を進めたところ、海外居住の場合は分割協議書には拇印をおし、印鑑証明のかわりとして在外公館でかわりの書類を貰えば済むらしい事が分かった。しかし2021年はコロナ禍真っ盛り。書類をもって帰国することは隔離政策のために仕事との折り合いがつかず、郵送したとて税関検疫等で引っかかると言われていた。結局、分割協議書が完成したのは2023年、父の三回忌のために兄が一時帰国した折だった。


シャンシャンな銀行

分割協議書が出来てまず行ったのは、死亡後資産が凍結された銀行から現金を引き出すことだった。

ぶっちゃけ、これは簡単だった。銀行ごとの引出し申請書を作成し、分割協議書と裏付けとなる戸籍謄本や印鑑証明等々を添えて銀行に持っていくだけ。

まあ、姉が各所と電話でやりとりして書類の書き方を熟知していたので三回忌で集まったときにバチッと書類が揃ったのも大きいが。

法務局「自分でやれ」


法務局への心象が大暴落

こっからが相続登記の本題。最寄りの浜松法務局に手続き方法について電話をしてみた。回答は、法務局のサイトにマニュアルがあるから自分でまず申請書一式を用意しろ、話はそれからだ、だった。

それでも40ページ程度のマニュアル、文字も大きいし2時間足らずで法務局への申請書類は出来上がる。証拠となる戸籍謄本やらも銀行の時に手元に揃っている。

この段階で、浜松法務局に書類確認をお願いする予約をした。最短でお願いをしたものの予約がとれたのは1週間後、原則20分間しか取らないらしい。これまた原則、相談は電話でしかやらないと言われたが、流石に現物見ないと話にならないだろうと、法務局現地での実施にしてもらった。

登記と戸籍で住所が違う…

相談日までにマニュアルを見返していると問題が1点。不動産登記上の父の住所が、結婚前に会社の寮に入っていた時のものだったのだ。そこに戸籍を移したことはないため、どの書類を見ても当該住所に住んでいたことを証明できない。現在の法律ならば、戸籍の附票というものに住所の遍歴が表示されるが、当時の法律では既に破棄されてしまっていた。

ポイントは、この人は同姓同名の別人じゃないよ、と法務局に証明することだ。ネットにはそういう場合の対策として不在籍・不在住証明書を貰え、とあった。これは当該住所に現在、同姓同名の人はいないよ、と証明するものだ。であれば別住所でも同姓同名がいれば本人っぽいよね、と消極的に同一人物の証明をすることになるらしい。予約日までに間に合わせるには郵送では無理なので、現地市役所まで往復4時間、車を走らせた。

いざ浜松法務局

まァ、こんだけ頑張って書類を整えれば、書類確認どころか、その場で提出だってあり得るだろうと向かった浜松法務局。

いや直されるわ直されるわ。ここ一筆と押印してね、とか本人確認郵便の返送用封筒を入れてね等、マニュアルの見落としと思われるものもあれば、書類の並び順はこう、とかマニュアルにないだろ!みたいなものもあり。司法書士ってのは、この面倒臭さと引き換えに報酬を得ているんだなあと感慨深い……

相談の原則時間20分をオーバーして40分。40分やってくれて、ありがとうって思うけど本来の20分に無理あるだろ、ほとんどそっちが書類見てた時間よ……一応、書類としては令和5年度の固定資産税評価証明書だけ足りないけど他はオーケー、用意できたら送ったり〜ということに相成った。あ、法務局ってどこでもいいわけじゃなくて不動産を管轄する法務局が決まってるのね…

さらに主戦場は岐阜県に

お次は固定資産税評価証明書、本来不動産登記には土地の価値に比例した税金がかかる。この証明のために当該書類がいるのだが、手元のものは令和3年度のものだった。下呂市役所さん最新版をくれ〜と依頼書を郵送。案の定、2年経っても変わらず価値は5000円。税金非課税の範囲内です。

これで書類は全部そろったはず!指示された通り、ホッチキスで書類を綴じて高山市の法務局に郵送だ!

しかし当然これで終わるはずがなく……

ラスボス高山法務局

登記依頼書一式を郵送してから数日、高山法務局から電話が入る。「書類、足りないんで追加で出してください」

曰く、登記上の住所と戸籍の住所が異なるので同一人物と同定できない。市役所に連絡して、納税者義務者証明か納税管理人うんたらの証明を貰ってくれとのこと。

すぐに市役所に電話をしてみる。だが、評価額が安く固定資産がかかっておらず、過去に居住の実績すらないので出せるものがないと一蹴。改めて法務局に連絡するのであった。

高山法務局「であれば、土地所有者はなくなった方と相違ない旨の陳述書を相続人全員の実印つきで出してください。いまコチラにある遺産分割協議には実印がついてるので、これに一筆書くのがいいですよ」
僕「じゃあ、返送をお願いします」
高山法務局「では返送のためには登記取り下げ書と返信用封筒を送ってください。取り下げ書については、浜松法務局で教えてもらってください」

あれ?土地所有者と亡くなった人を同一だと判定できないから書類貰いに動けということだったのに、結局最後は公的機関でもない個人の宣誓だけあればいいんかーい。あと、自分とこの土地の登記なのに手続き実務を他の拠点に押し付けるムーブは法務局界隈では当たり前なのか?

高山法務局との再戦


幸い浜松法務局は翌日対応してくれた。取り下げ依頼書く、送る、登記依頼帰ってくる、言われた事項を書き足す、再送する。

このやり取りを何度もやっては敵わないので、念のため再送の前に高山法務局に電話してコピーや契印に関する細かい事項について聞くと先方から一言「そんなにわからないことだらけなら、もう一度浜松法務局で相談して貰ったらどうですか?」

キレそう。そもそも浜松法務局で現物見てゴーサインが出た書類に対してオマエがNG出したんじゃい!オマエの頭の中にしかない論理をどう浜松法務局から引き出せと?まあ、もしかしたら念には念を入れてアレコレ付けましょうとアドバイス貰えるかもしれないけど、予約して最短1週間後、往復1時間半したくもない。「一旦これで提出しますね」

おわりに

分割協議書が完成したのは2023年5月、そして上記の再提出をしたのが同7月6日。まだ、登記は済んでいない。

この手続の過程で知ったのだが2024年4月から法改正が行われ、適切に相続登記が出来ていないと罰金10万円取られることになるそうだ。

世の中には、こんなカスみたいな物件が溢れているんだろう。僕のように労力をかけるか、司法書士に割に合わないカネを積むか、罰金上等で無視するか、みんなどうするんだろう?

追記

2023年前7月15日、登記完了の通知が届きました。
なんとか自分で相続登記することができました。

しかし、相続で制限時間が無限にあったからできたことで、売買だったらこうもいかなさそう。
不動産仲介が、司法書士は弊社指定っていう理由がわかったかもしれない。

みんなも、法を守って適切に登記しようね!


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