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パピコを食べるなら夜空の下が良かった

私のnoteでは、婚活の記事がたくさん読まれていて、多くのスキをいただいている。

きっとみなさん、くらいの婚活ネタに期待しているにちがいない。

しかしながらいつもいつも、タイ料理やピロシキのような面白いことが起こっているわけではない。お金はまだしも大事な時間をドブに捨てたようなデートも数えきれないほど経験している。そんなわけでゴリゴリの時間ドブ捨てデートで失敗した話をしたい。

時を戻そう。

2018年の夏の暑い日だった。

当時、2歳ほど年上の男性とやりとりしており「美術館に写真を見に行きませんか?」というお誘いを受けた。

このような美術館デートからのお茶か食事という流れは時々あった。美術が好きだとプロフィールに書いていたし、そのことをきっかけにメッセージを送ってくる人もいた。田舎では、デザインや設計などの仕事をしていない限り美術が好きという人は珍しいのだ。

とはいえ、美術をどのように好きなのかという感覚が合うのがまた難しい。

「ゴッホとかモネとかの良さあんまりわかんないんですよね、現代アートなら好きなんですけど」

等という人に、じゃあどんな現代アートが好きですかとつっこんで聞くと高確率で会話が終わる(※くらい調べ)現代アートなら好きだといったからには、作品をひとつぐらいはあげてほしいものだ。

できれば、アートにおいて妙な線引きをせずに、目の前にある展示を一緒に楽しんでくれる人が良い。

そもそも私は美術館にはひとりで行くのが好きなので、誰かと行ったとしてもバラバラで見たい。絵を鑑賞するスピードなんて、まず一緒ではないからだ。途中で一回ソファに座って、どれが良かった?と小声で話す。それからまた残りを見て、空いていたら最後にもう一回あの絵が見たいと言って戻る、ぐらいが好きだ。

何の話だ、これは。話をもとに戻したい。

地方の美術館では写真の展示というのが、そもそもとても少ない。婚活を抜きにしても見に行きたい。

ところがその美術館は、駅からかなり離れた、小高いところにある。車を出してくれるのかと思いきや、近くまでバスで言って歩いて登りましょうと言う。

一言でまとめると、だるい。

真夏の真っ昼間から初対面の男性と山登り。でも、でも、もしかしたら、素敵な男性で、苦労して登った先の美術館で良い感じの写真を見て、恋に落ちるかもしれない。

炎天下の午後2時。半袖半ズボンでほどよく日に焼けた爽やかなお兄さんが現れた。

バスに乗って、それなりの会話をした。内容はまったく覚えていないので割愛。スマホを見ながら、次のバス停で降りましょうと言った場所は一度も降りたことがないようなところだった。Googleマップを見ながら、ひたすら歩く。

山、と表現したが正確には、坂だ。歩いている人は2人以外に誰もいない。車も通れないような細い道をとにかく登っていくうちに、ようやく美術館が見えてきた。車でしか来たことがなかったので、こんなに辛いとは思わなかった。

※後日調べたところ、もっと簡単には行ける方法があった

並んで写真を一枚ずつ見る。

お客さんはほとんどいない。

彼もほとんど話さず、ちょうどいい鑑賞スピードだった。まあ、私にあわせてくれていたのかもしれないが。

一見良い感じに見える、というか、このときまではたぶん本当に良い感じだった。

しかし、アプリで婚活をしたことがある人になら伝わるだろう。

趣味は合っても、フィーリングが合わない

というやつである。

それは、美術館から駅に向かうバスの中の会話で徐々に現れてきた。うまく言えないのだが、なんだか噛み合わない。でも相手が夜ご飯を食べる気でいたので今さら断れなかったし、そろそろ本当に結婚相手を探さなければというプレッシャーがあった。既婚の友人から一言目から妥協しろ妥協しろ、と言われていたせいもある。

居酒屋に入って、お酒を飲みながらご飯を食べる。多少のアルコールでふわふわしても何だかダメだった。会話もそんなに盛り上がっていなかった。

これで解散だろうと思って外に出ると、もう暗くなりかけていてまわりから夏祭りの太鼓の練習をしている音が聞こえてきた。

ちょっと散歩しましょうというので、駅とは反対方向に歩き始める。たぶん、子供の頃好きだったジャンプのマイナーな作品を挙げ続けていたと思う。しばらくその話をしたあと、コンビニでアイスを買って食べませんかと言われた。

なんだよ、その大学生っぽさ、いいじゃん!!

私はキラキラとした大学生時代を送っていないため、こういう提案に激弱だった。別に好きじゃなくても、夜に男性とアイスを食べながら川沿いを歩くってわくわくするなぁと思ったのもつかの間だった。

お決まりのように選ばれたパピコを割りながら彼は言った。

ああいうところ、行ったことありますか?あそこで食べませんか?

指差したところは、どこからどうみても紛うことなきホテルだった。

いや、食べない。     

~End~

いやはや、これほどのハズレデートも珍しい。

なぜ、彼が花さか天使テンテン君などの話から、そういう雰囲気に持ち込めると思ったのか未だに謎である。

ちなみに、別の人から「家にエミリオ・アンバースのドローイングがあるんですけど、今から見に来ませんか」とやたらおしゃれなバーで言われたこともある。「えっ、見たーい」ってなるとでも思うのだろうか。牧野つくしではないが、行かないっつーの!!

今回、文章にしたことであの日の私の気持ちは成仏したような気がする。長くなってしまったが、明日からは前向きなハッピーなことを書いていきたい。

くらいのパトロンになりたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。その際には気合いで一日に二回更新します。