流れ落ちる (#2000字のホラー)
体が重い。予定外の仕事に、随分手間取られてしまった。もう日付も変わる時間に、ようやく家に帰り着く。息を吐きながら玄関の扉を開けると、途端に水の流れる音が耳に入った。慌てて洗面所に入ると、栓の開いた蛇口から、水が出続けている。
「嘘でしょ。朝からかな」
朝使った時には、たしかに閉めたはずだ。そう思うけれど、確信はない。多少慌てていたから、閉め忘れたのかも。それにしたって、家を出る時に、音で気がつきそうなものだけど。
最近は、こういうことが良くある。ひとつひとつは小さな