縄文の歌人(第二稿)~場所・時間・季節etc.~
ベランダ
通勤電車
職場
胃潰瘍
気の付けば天井見つむ吾のゐてトイレにしばしあかつきにひとり
シャワー浴び入院準備整へて一一九番自らの呼ぶ
胃から鼻へ鮮血赤く吸はれゆく血圧計の数字下がりぬ
血へど吐く吾の現し身気のつけば幾多の【テレビ会議】にて最中さすらる
降る雪を窓に見遣りて薬飲む吾の意識の白く濁りぬ
目覚むれば吾はベッドにひとりゐて無音の中を雪は降り積む
病室の窓に雪降りわが胸の内の里にも白く積みゆく
混濁の意識の濁り目の覚めて降りゆく雪の白に重なる
吾よりも少なきを知る漱石の吐きし血の量八百CC
鎌倉
湘南
旅先
酒場
昼間の公園
sakura
少年時代
在宅勤務
梅雨のある日
ふるさとは今
母の骸
ものを飲む力なくしてゆく君の手はまだ吾の手強く手たぐりぬ
川堤
同じ舎に棲み同じバスに乗る白髪の男が独り堤を走る
翼無き自転車を漕ぐ吾が前に富士出でにけり梅雨の晴れ間に
足延ばしけふは橋のたもとまで頬打つ雨の吾を奮はす
坂登る心の鼓動は我がものかこの街に住み年を経るなり
草に寝て吾の視界に広がりぬ青を切り裂く機体のひとつ
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