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達人曰く「全部ツケが回ってくる」

梅酒や梅干し以外に、いいレシピはないかしら・・・と、いつもと違う書店の棚をあれこれ物色していたときに、こちらの本が目に留まりました(ちなみに、梅仕事の本はそれほど多くなく、そもそもどこに分類されているの?と迷いました。和食?家庭料理?それとも・・・と。結局、その書店では「保存食」のコーナーにあったんですけど、内容はズバリ人生訓です)

著者の藤巻あつこさんは、1921年生まれの料理研究家。21歳で結婚してから、見よう見真似で梅干しを付けるようになった・・・というから、梅仕事にかけてはキャリア70年以上の達人です。
保存している梅干しのコレクションもすごいんですが(本の中に写真が載っています。壮観)梅の調味料やらアレンジ料理やらを提案しておられ、関連著書もいろいろ。

「九十二、九十三歳までは若い人と変わりなくできたのが、
九十七歳になるとちょっとしんどいかなって。」

す、す、す、すみません。半分ほどしか生きてないのに、1年目にして
「あぁ、しんど」とかボヤいてしまって。いや、楽しいんですけど、重労働ですよね💦

それだけ長く続けていると、梅の「ごきげん」をうかがいながら、たとえ不出来な梅であっても、「どう漬けようか」と考えを巡らせるようになるそうです。失敗が勉強になり、それを大事にすればこそ次はうまくいく。根気比べだ・・・と、なんかやり手の起業家のようなご発言。

当然、梅干しなどの仕込みについても丁寧に(単にレシピ紹介というだけでなく)たとえば、赤紫蘇の葉を摘み取るときの葉の選び方を語りながら、もったいなくても潔く捨てないと、時間と労力をかけてもおいしいものが出来ない、とか。リアリティと愛情に溢れたシビアがコメントが続きます。
手を抜いたら、あとでツケが回ってきますよと、97歳の人から言われると無視できません。

干すのは夏の土用。
梅雨の雨が梅の実を大きくするからこその「梅雨」という話を聞きましたが、暦にもちゃんと意味があり、それを体で感じながら、自然の営みを手伝わせてもらっている、くらいの謙虚な気持ちですすめたほうが、梅仕事はうまくいくのかなぁ?と読んでいて思ったのでした。

また、梅仕事は「ついで」にやってはいけない。失敗します! とありました。私はライブ中継しながら仕込みをし、聴いてくれている友達とネット越しに「本当は集まって、おしゃべりしながらやりたいね~」なんて話していたのですが、三人でひとつの樽を漬けるようなことは、止めたほうがいいみたいです。一人一樽を責任をもって管理する--藤巻さんにとっては、神聖なお仕事なのです。

梅干しが出来たら、毎年50人くらいの方に「梅贈り」をするのだそう。千代紙でこしらえた袋に梅干しを詰めて、一年間お世話になった感謝の気持ちを届けるなんて、すてきな習慣ですよね。
「梅干しと友だちは古いほうがいい」とか
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とか
梅にまつわるフレーズはいろいろあるし、この本のサブタイトルである「いい塩梅」という言葉も、自分で梅仕事をしてみると、より意味深く感じられるものです。

最後まで読んでいくと、梅仕事を大変だとわかっていて、でも、大変だからこそ楽しくやるという姿勢が伝わってきて、藤巻さんという方の人間的魅力や人生の豊かさを感じたのでした。

まだまだ私は、いろいろと、なんだかまぁ、青梅ちゃんです。
誰か、アク抜きしてください。

音声配信バージョンはこちら

(ついでに)
感想、ではありませんが。
梅干しに「関東干し」と「赤梅干し」があったり、いろいろ漬け方が違うようなので、小梅と大梅は、違う漬け方にしようかなぁ。

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