たろべえ | 髙橋唯

元ヤングケアラー、現在若者ケアラー。片麻痺、高次脳機能障害、元アルコール依存症の母と暮らす日々。 介護ポストセブンエッセイ連載 ブログ→https://ameblo.jp/tarobee1515/

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宇宙人との交信 ピポピポピポ……ピポピポピポ…こちら地球…宇宙人、応答せよ、応答せよ…。   私は毎日、宇宙人との交信を試みています。  その宇宙人のいる惑星では、ペンギンは魚で、卵からは産まれないそうです。アリの足は四本です。おしっこは我慢しているとうんちになるそうです。でも、不思議なことにこれらの情報は数時間後の調査ではまた変わってしまいます。再度調査が必要です。 その宇宙人は、宇宙流のレシピでご飯を作ります。煮魚は焼きます。焼き魚は煮ます。麻婆豆腐の素は袋から出したらも

    • 『コーダ 私たちの多様な語り 聞こえない親と聞こえる子どもとまわりの人々』を読んで

       2月10日 生活書院より発売 『コーダ 私たちの多様な語り 聞こえない親と聞こえる子どもとまわりの人々』を拝読しました!編者は成蹊大学文学部現代社会学科教授 澁谷智子先生です。 はじめに  最近「ヤングケアラーとしての経験談を話してください」と依頼をいただいて自分のケア経験を話すと、「ヤングケアラーについてよくわかりました」と感想をいただいたり、「ヤングケアラーって◯◯ですか?」「ヤングケアラーにこんな支援をしたいんですがどう思いますか?」と聞かれたりして、確かに元ヤン

      • "ヤングケアラー"に逃げていると感じた1年

         今年も元ヤングケアラーとしての経験をお話しさせていただく機会に多く恵まれました。 お世話になったみなさま、ありがとうございました。  各地でのヤングケアラー支援の条例化、国でもヤングケアラー支援法制化の方針が発表されるなど、ヤングケアラー支援に向けての動きがとても活発で喜ばしい反面、個人的には、自分は本当に「ヤングケアラー」という言葉で救われるのだろうか?という疑問をより強く感じる1年でした。  元々、自分の経験や、自分が消化しきれていない思いはヤングケアラーという言葉

        • 元福祉施設職員が映画『月』を観てきた

          映画『月』を観てきた 障害者の家族としても、元福祉施設職員としても、相模原障害者施設殺傷事件のことを考えない日はない。 自分が夜勤の日に“さとくん“が来たらどうしようかという恐怖 自分が“さとくん“になってしまったらどうしようかという恐怖 施設にいて命を奪われた彼らと、家で平和に過ごしている母はなにが違うのか “障害者“と私はなにが違うのか 私と“さとくん“はなにが違うのか ヒントを求めて原作の小説を買っていたが、怖くてなかなか読み進められていなかった。 それ

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          あの洗濯をしたから

          汚い話だし、あまりこんなところに書くべき話ではないとは思うが、母はトイレットペーパーや尿漏れパットを洗濯してしまうことが多くなっていた。 私はほぼ毎日、洗濯物をバサバサとはたいたり、コロコロをかけたりしながら、「ああもう、なんで毎回毎回・・・」とイライラした。 母はトイレも近くなり、家の中でも間に合わなくなってきた。 デイサービスの職員からも、日中に失敗してしまうことがあると聞いた。 いよいよか。 オムツというと、母は抵抗するだろう。 抵抗されることをわかっていて、薦

          あの洗濯をしたから

          第一志望の大学を受験しなかった

          高3の秋。 第一志望の大学の推薦試験に落ちた。 当時でいうセンター試験を受けてから、一般の試験を受け直すこともできた。 しかし、私はそれをしなかった。 逃げ、だと思う。 でも、面接練習をみてくれていた先生に「もうこの大学は受けない。」と伝えると、 先生は「そうか、そうか。でもね、実を言うと心配していたの。あんなに面接練習の頃から大泣きして取り乱していたのに、あの大学でやっていけるのかしらって。大学に入ったら毎日嫌でも勉強して自分に向き合わなくてはいけないでしょう。」と言っ

          第一志望の大学を受験しなかった

          母を殺した女子高生

          はじめて自分の母親を殺してしまったことに気がついたのは高校生の頃だった。 それから約10年、私は母を殺し続けてきた。 実は、母が殺されるのはこれが初めてではない。 1度目は、高校生の時。通学中に車に轢かれて殺された。 それから生まれ変わり、妻になり、母になった。 そして、今度は娘に殺された。 私はじわりじわりと、母を殺し続けた。 小さな両手で母の首元を掴み、ゆっくり、ゆっくり、何年も圧を加え続けてきた。 私がこの手で母を殺めたのだ。 私は犯罪者なのだ。 高校生の

          母を殺した女子高生

          レモンの図書室を読んだ

          自分用の感想メモ ・序盤のカリプソは過去の私にとても似ていて親近感があった。本が好き。強い心を大事にする父。泣いてはダメだと思っているところ、人付き合いよりも本を読んでいる方が良いと思っているところ、読んでいる本(アンネの日記とか赤毛のアンとか)も昔の自分に似ていて昔の自分の思い出したくなかった部分を思い出して結構心をえぐられた。カリプソはお父さんとお母さんの死について気持ちを分かち合うことができなかったけど、私もお母さんのケアについて父と話し合うことができなくて、私ばかり

          レモンの図書室を読んだ

          おまえは、本当はやさしいから。

           おまえは、本当はやさしいから。    ・・・(は?)  おまえは、本当は皆のことを考えているから。  ・・・(何言ってんだ、この酔っ払い。)  思春期の私は、急にかけられた言葉に、何も返すことができなかった。  中学3年間続けた部活も今日で引退。打ち上げには部員と保護者と顧問と外部コーチが参加していた。とにかく部活は辛かったということしか記憶にない。あー、やっと、部活から解放される。その安堵感が強く、感慨は全くなかった。顧問や外部コーチにああだこうだとうるさく指導さ

          おまえは、本当はやさしいから。

          母と桜を見た思い出が欲しかった

           母と桜を見に行くことは、私にとって責任重大だった。  ただお花見をしようとしていただけなのに、こんなにも惨めな思いをしなければならないのかと泣きたくなった。  そんな春のある日を思い出した。  3月某日、介護仲間とデイサービスについての話をした。高校通学中に事故に遭い、片麻痺と高次脳機能障害が残った母は、私が就職したことをきっかけにデイサービスに通い始めた。母はデイサービスのことを”仕事”だと思っていて、通い始めた頃「お母さん、ずっとお家にいたからね、仕事に行ってみた

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          元ヤンたろべえも自分の人生を生きるのだ! 

          元ヤングケアラーでも、現 若者ケアラーでも自分の人生を生きてくのだ めちゃくちゃ久しぶりのnoteになってしまった… 元ヤングケアラー、現 若者ケアラーの私は、よく「家族だけでなく、自分の人生を大切にしてください」と言ってもらうことが多いです。 今のところ、人生を通してまでやりたいことはあまりピンと来ないけれど、日々、もう少し自分のやりたいことをしたり、昔の自分がやりたかったことを叶えたりしながら、自分の人生を取り戻していこうと思います。 #元ヤン太郎(たろべえの名前

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          キナリ杯で2億%大丈夫で賞をいただきました!うれしい!!

           以前書いたこちらの記事が、岸田奈美さんのnote文章コンテスト「キナリ杯」で、「2億%大丈夫で賞」をいただきました!めっちゃ嬉しい!  この賞は、岸田奈美さんのお母様、岸田ひろ実さんをリスペクトした賞だそうです。  岸田さんとお母様のことは、株式会社ミライロの記事 を読んで知りました。そのときから、岸田さんはお母様をとても愛していて、お母様も岸田さんをとても愛しているんだなとその素敵な関係に惹かれました。  その後も、岸田さんが障がいのあるお母様と弟さんのことを書い

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          ヤングケアラー時代に思っていたことの絵を描いた話

           以前、YouTubeでヤングケアラー時代に思っていたことの絵の説明をしたことがあって、今日はまた別の落書きの説明を書きます。 ① 優しさにつつまれて 窒息死  全然構図が決まらなくてとりあえず2枚書いた。(ボツは他のSNSに載せてみた)  周囲の人が優しくしてくれたり、気を遣ってくれたりすると、それがかえって重荷になってしまうというか、いろんな人がいろんな方向から優しくしてくれると、だんだん囲い込まれて、どの方向にも逃げられなくなって、身動きがとれなくなって、顔も上げ

          ヤングケアラー時代に思っていたことの絵を描いた話

          おぼろ月 静かに差し込む 母の影

           タイトルの俳句は、高校生の時にお~いお茶の俳句コンテストに応募して、佳作だったものです。  何年か後にお茶のラベルになっていたそうですが、自分で買ったお茶では見たことがありませんでした。地域によるのかも?  応募するときに俳句の説明を書くのですが、そこには「おぼろ月は春の季語。4月に親元を離れた新社会人が忙しく仕事をする中で、ふと夜に空を見上げるとおぼろ月が目に入り、故郷の母も同じ月を見ているのだろうかと思いを馳せた。」みたいなことを書きましたが、嘘っぱちです。でたらめ

          おぼろ月 静かに差し込む 母の影

          『ヤング&若者ケアラーのための恋愛・結婚セミナー』に参加させていただきました

          家族の介護をしている20~30代の就職・転職支援 Yancleの代表 宮崎成悟さん主催の「ヤング&若者ケアラーのための恋愛・結婚セミナー」にZoomで参加しました。講師は未来型結婚相談所シュクルの佐藤祐佳(さとゆか)先生でした。話をきちんと聞いているフリをして、ずっと自分のことを考え続けていたので、内容のまとめみたいなことは書けません・・・ほとんど自分用の自分語りです。ちなみに上の写真はだいぶ前にデートで行ったアクアパーク品川で撮ったイルカです。未練がましく写真を取っておくタ

          『ヤング&若者ケアラーのための恋愛・結婚セミナー』に参加させていただきました

          顔に奇形のある男の子の『友達』『姉』『姉の彼氏』も主人公~WONDER~

           大好きな本『WONDER』について。主人公のオーガストは顔に奇形をもって産まれてきた。この本の映画版のタイトルは『ワンダー 君は太陽』。このタイトルを聞いたとき、「奇形をもちながらも頑張るオーガストの明るさを、周りは太陽のように思い希望を抱いている」みたいな話なのかと思った。しかし、この本を読むと、オーガスト以外の様々な人間にも焦点が当たる。オーガストの親友、クラスメート、姉、そして姉の彼氏まで。オーガストは確かにその見た目から周囲の注目を集めがちだが、世界はオーガスト中心

          顔に奇形のある男の子の『友達』『姉』『姉の彼氏』も主人公~WONDER~