母を亡くす準備はいつだってできていない -『時をかける父と、母と』Vol.16
『時をかける父と、母と』ー 若年性認知症の父親と、がんになった母が逝くまでのエッセイを連載しています。
Vol.16 母を亡くす準備はいつだってできていない検査結果を聞いてから5日後。外出先から帰ると、家にいた母が痛みを訴えていた。すぐに救急車を呼んだ。
救急隊員に状況説明をするが、経験のないことばかりで私はとにかく焦ってしまっていた。母は痛がりながらも意識ははっきりしていて、「保険証用意して」などと、どこか冷静だった。
母の病院は自宅から少し離れていたため、一度は緊急性