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東京という街と私

今日、約三年間の上京生活が終わる。


三年前の春、就職と同時に上京し、人生初の一人暮らしが始まった。

大学生の頃、片道2時間の通学が辛く、両親に「下宿させてくれ」と頼んだら父親に「家を出て行きたいなんて言うな!」とブチ切れられた挙句、一年間も話してもらえなかった(狂気)ことのある私は、自分の城を構えられることに幸せを感じていた。

好きな時に寝て、起きて、好きな時に、好きなことを、好きなだけする。自由な生活が、快適で快適で仕方なかった。


初めての仕事は一言で言えば、つらかった。早朝勤務を含むシフト制のせいで友人とは休みが合わず、昼夜逆転生活のせいで連絡を取ることすらも許されず。自由な生活を送る反面で、常に孤独を感じていた。

あれ、なんか思ってたんと違う〜〜〜


ようやく手に入れた自分だけの城で、私はまるで塔の上のラプンツェルのようだった。髪は長くないけど。



仕事へ行き、同期と会えることが毎日の楽しみだった。自分には無理だと思っていた女の世界は、想像してたよりも面白かった。


一方で、上司や客のストレスの吐口にされるのは耐えがたかった。

ハナから悪意を持って接してくる人が存在することを、22歳にして初めて知った。対応に困惑しつつ、こういう人の対応に困惑するってことは、これまで自分は恵まれた人間関係の中にいたんだな〜、とも思えた。


何かと奴らの標的にされやすいことに悩む私に先輩は「そういう時は心を無にするんだよ⭐︎キラン」とアドバイスをしてくれた。共感はできなかった。


心あるのに。意味わかんない。


意味わかんないと思いながらも、そうしている方が楽だからと心を無にしていると、人との間に壁を作るようになってしまっていた。

憧れだった職業に就いた半年後ごろから、人の言動を深読みし、常に身構えて、疑うことから人間関係を始めるような人間になっていった。


社会人一年めの終わり頃から流行り出したコロナウイルスの猛威は、気づかないようにしていた孤独感をさらに深める要因となった。

春から夏にかけて、ただひたすら一人で家にいるだけの生活に気が狂わされそうだった。


この頃のお気に入りの曲は銀杏BOYZの「ぽあだむ」だった。

僕の部屋は僕を守るけど
僕を一人ぼっちにもするよね〜?♩



の歌詞は、私のためだけにあるように思えた。


その頃はもう、何もかもがどうでもよかった。地元から離れたこーんな遠い場所で、独りで何してんねんやろ、と、ぐるぐるぐるぐる考え事をしながら、深い闇の中で、ほぼ死にながら生きていた。


2年目の秋、コロナの影響で本業がいよいよ立ち行かず(?)、保育園に三ヶ月間出向することになった。

ここでも標的となり酷い扱いを受けることは予想外でストレス蕁麻疹がしっかり「こんにちは」していたが、子どもたちは本当に可愛かった。

可愛くて可愛くて、あの時もこの時も可愛くて、ただ可愛すぎるだけの宇宙人だった。



子どもを構成する成分ってラブアンドピースアンドスマイルアンドジョイだって知ってた?みんな!

その頃から、人とうまく関われなくなっていた私は、また人とちゃんと関係を築いていきたいと思えるようになっていった。

保育園の天使たちが私に本気の愛を教えてくれて、一人では抜け出せなかった闇からいとも簡単にひょいっと連れ出してくれたんだと、感謝している。



振り返ればただしんどくて、早く地元に帰りたいだけの三年間だったと思っていたが、あの天使たちとの出会いのような、一生覚えていたいと思える出会いがあったこともたしかだったな、と思う。


自分の接客に喜んでくれたお客様。きてれつでぶっ飛んだクレームで私のメンタルを鍛え上げてくれたお客様。近所のスーパーのおじさん。何でも許してあげちゃった保育園の天使たち。毎日食料とよくわからないキーホルダーを与えてくれたシニアたち。毎日何かしらの言動で笑わしてくれたキッズたち。あとは、花束みたいな恋もした。照


そして何よりも辛い時期を支え合った同期や変わらず仲良くしてくれた友人は、家族と離れて暮らす私にとって家族のような存在で、心の支えだった。

遠くからでも、がんばれよ〜、でもしんどかったらいつでも帰ってこいよ〜と見守っていてくれる存在も大きかったなあ。

かつてのブチギレ父を含む、家族の存在もね。



そんな優しい人たちに囲まれながらこの三年間、本気で自分と向き合ったことで、やっと自分の輪郭がはっきりしてきたような気がする。



人が好き。人は面倒くさい。明るい。暗い。静かにしてたい。騒ぎたい。笑いたい。泣きたい。怒りたい。一人が好き。一人が嫌い。頑張りたい。さぼりたい。楽したい。何もしたくない。焦る。どうしよう。どうにかなる。そばにいてほしい。そっとしておいてほしい。つらい。楽しい。うれしい。悲しい。大切にしたいもの。捨て去りたいもの。大切にしなきゃいけないもの。どうしても捨てられないもの。



いつも矛盾に苦しんだ、その全部が私だった。



ここに来なかったら、多分気づけなかった。

とりわけ甘やかされて育ってきたわたしに必要だったのは、我慢ならないほどの孤独感だったんだ。



東京は、ドラマティックな街だ。


憧れて、胸がおどって、喰らって、病んで、打ちのめされて、倒れて、ハッとなって、立ち上がって、また殺られちゃって、もう勘弁してよ〜の繰り返しで。


つらくて途中で席を立ちたくなるような、でも気になるから最後まで居座っちゃうような、長い長い映画を無理やり観せられていたような感覚だな。



でも今日で、全部終わる。



この思い出の置き場所は、きっと心の部屋の隅の方。常に見ていたいわけじゃないけど、捨てることはしなくて、何かのタイミングで蓋を開けて中身を確認したくなるような。

誰にも見せられない、自分だけの宝物みたいな毎日だったな。

 


ありがとう、東京。
さようなら、東京。





◯んでくれ、東京。

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