配信VS映画館 コンテンツの行方

米国でついにこういうことが起こり始めました。

事の発端は米映画配給会社ユニバーサル・ピクチャーズが、4月10日に公開予定だった新作映画を、コロナウィルス感染拡大防止の観点からネット配信に切り替えたところ、配信プラットフォームで成功を収めたということ。 本来映画は、映画館で公開してから●日後に配信、DVD化をするというルールが存在しており、このルールが「映画館で映画を観ること」の価値・優位性を保っていました。今回は緊急事態につく特例として、新作映画を配信に回したこと自体には問題はなかったのですが、この成功を受けて同社が「今後も劇場公開・配信を同時に展開する可能性」を示唆し、映画館がこれに反発をしている、という内容です。配信サービスと映画館という相対するウィンドウが真っ向から対立した出来事です。日本でも『Fukushima50』が、劇場公開から間をおかずに配信展開される、等がありましたね。あれはどうなっているんだろう。

お客さんからすると「いま映画館にいけないんだから、公開延期とか言わずに配信でみせてよ!」という方も多いかと思います。日本映画でもその多くが公開延期をやむなくされており、「近日公開!」というテロップの入ったCMを見ると、製作者の悔しさを想像するに堪えません。 提供者側でもきっと配信という選択肢がちらつくこともあるんじゃないかと思います。

しかしながら前述のルールのもと、映画製作者たちは「映画を映画館に送り続けることで映画館を守らなければならない」という性質があります。映画製作者にしても、映画館が無くなってしまえば、そもそも映画という存在そのものが価値を失ってしまうので、ここには相互のウィンウィンの関係が存在しています。「映画足るもの、映画館で上映する」これが映画製作者たちの教示なわけですね。

加えて、映画の作り手たちはその作品を「映画館で見てもらうこと」を前提に制作しています。映画と配信(すなわちテレビ視聴)の違いとしては、例えば画面の大きさ。制作者たちは「映画館の大きいスクリーンで見られる事を想定して、カメラに収める情報量を計算しています。これが、ファーストウィンドウが配信になってしまうと「そんなつもりで撮ったんじゃないんだけどな…」ということになってしまいます。その他にも音や照明の作り方など、映画には職人たちの「映画館で観られるならこうだ!」という魂が込められています。こういった事情や思いもあり、いま多くの映画がいまだ日の目を浴びることなく眠っております。

もちろん配信には配信のよさがあり、ただ映画やドラマなどの既存コンテンツを配信するだけのサービスだけでなく、ここ数年AmazonやNETFLIXなどを中心に各社オリジナルコンテンツの制作も増えております。こういった作品はきっと「配信されるならこうだ!」という心意気のもと制作されているのでしょう。

STAY HOMEが言われ続ける世の中。配信サービスがさらにその存在感を強め、多くの人の心を救っているだろうと思います。いつの日かまた映画館で思いっきり映画を楽しみたいと思います。 「映画を映画館で観る」という行為が、映画という文化、そして映画館を守ることにつながるのです。