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「酷い嵐だ. . .」

2022/09/18(日) #131:hiko


「酷い嵐だ...」

男は思わずつぶやいていた。


2022年9月18日、それは、思い出したくもないほど鮮明に刻まれた記憶。


ーーーー眠れない。
そのこと自体がまるで悪夢のように襲いかかる。
そして日が昇る頃、徐に瞼が降りていく。

眠りについたのは今朝の4時。
いつもなら夕方前に目覚めるはずだった。
だが、経験則を無視して、脳は3時間後に覚醒した。

朝7時。
2度寝もできないほどの覚醒。

なにか悪い知らせのように思えて、いてもたってもいられなかった。
勢いで家を飛び出す。
目的地などない。

髪はだらしなく、縒れたTシャツにシワだらけのチノパンで歩き回る異様さは、小学生の頃、「知らない人についていかない」と聞かされたときの「知らない人」のそれだった。


前日の雨が湿度を上げるせいで、体感温度はやけに高い。いやな暑さだった。
気持ちを落ち着かせるために煙草の煙を含む。
ランニング、ウォーキング、散歩など、健康のために活動している人々のなかに、みすぼらしい姿をした若い男があった。


歩き疲れた男は家に帰った。
玄関のドアを開けるとき、空腹であることを自覚した。

トイレで用を足したあと、手を洗ってキッチンへ向かった。

焼いたトーストに以前購入したアーモンドのはちみつを塗っていく。
半分に折り曲げて口いっぱいに頬張った。
アーモンドの特徴的な味わいが主張も邪魔もせず、それでいて存在感を失うことなく口内に広がる。

インスタントコーヒーを煎れ、そこにもはちみつを混ぜてみた。
こちらにはアーモンドではなく、元々家に置いてあったもの。たしかブルガリアとかだったか。

はちみつ入りコーヒーは、甘くなると思いきや、その予想を裏切ってきた。はちみつの存在感が薄く、ほんのりと薫る程度だった。
しかし、コーヒー自体がフルーティな香りを纏ったジューシーな味わいになり、この意味において完璧な相性を誇っていた。
(「ドンっ!」を1枚付与するみたいな感覚。)


こうして、一見穏やかに思わせる朝食を済ませたあと、男は暇を持て余していた。

寝転がっていると、だんだん身体の力が弱まっていくのを感じた。それが眠気だと気づくのに時間はかからなかった。
noteを見返しながら、ゆっくりと意識を手放していった。


細かい水の礫が激しく窓を打ちつける。

突然の大雨に、否応にも目が覚めた。
天気予報は台風を知らせている。


「酷い嵐だ...」
男は呟いた。

今日は正午過ぎからバイトがある。

どうしよう。どうやって行こう。


悩んでいると、父親が車で送ってやると言い出した。なんだこのジェントルは。
家にいても暇そうなので、有難く送ってもらうことにした。


シャワーを浴びて、ノームコアを身に纏い家を出る。雨が酷い。
それに、この近くで1番の幹線道路が渋滞していた。

ハンドルを切り、脇道から攻めていく。
従業員用の出入口まで運んでくれたおかげで、無事に間に合った。 

と思ったのも束の間。


モールへの入館手続きに入館証をスキャンすると、エラーが発生した。
前回のシフトで、退勤時にタッチミスがあったせいで起きたらしい。
モール全体の事務所へ行く必要があり、修正手続きに時間をとられた。10分弱の遅刻。 

店舗に行くと、人集りとでもいうべきモノがそこにあった。

なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。

人が居すぎる。
少なくとも200席はあるフードコートが、行き場を失った人で溢れていた。

本当になんなんだ、これは。 


後でわかったが、この日はモールの隣にある神社でお祭りが開かれていた。世界中がコロナウイルスの大災禍に見舞われてから、3年もの時間をかけて取り戻した人々の熱気が、数として現れたのだろう。

また偶然にも、モール内のユニクロがたったの2日前にリニューアルオープンしていた。


道が混雑していたわけだ。


嵐のような注文を何とか捌いていたら、嵐のように時間が過ぎていった。


日曜日ということで、mipとの2人体制でやっと回っている状態。

途中、聞こえた注文とレジに打たれた注文が違っていて、mipに確認したら、mipも聞こえた注文で作ろうとしていた。

伝え方を間違えて、俺が疑問に思ったことをすぐに共有できていなかったせいで、「なんだこいつ?」って思われてた。

レジの履歴を確認してみせたことで理解してくれた。言葉足らずでごめんよ。



シフトが終わり、LINEを確認する。
父が迎えに来てくれるらしい。
嬉しすぎる。

行きで降りた場所に行くと、すぐに車を発見した。


帰りがけら、近所のラーメン屋に寄る。

チェーン店の『魁力屋』。
たくあんがおいしい。

いつもメニュー表にデカデカと書かれたものしか頼まないんだけど、今回は違うやつにしてみた。
コク旨なんとかってやつ。



ところで、途中から書き方が大幅に変わったのには気づいただろうか。
はじめは書き言葉でかたっくるしく書いていたけど、流石にめんどうになった。

もうやりたくない。

おつかれ、男。

いや間違えた、おつかれ俺。


By hiko

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