年金の繰下げ受給による増額は必ずしも繰下げ月数×0.7%ではない

これまでとは少し話題が異なります。今度は年金の話です。

それも「公的年金」(国による年金のことで、個人年金や企業年金はここの話題にはしておりません)のうち、「老齢年金」(「公的年金」にはその他に「障害年金」と「遺族年金」があります)についてです。

昨年から法改正されて、「老齢年金」は75歳まで繰下げての受給が可能となりました。

単純にいけば、受給開始を65歳から75歳に遅らせることで、120か月の繰下げとなります。繰り下げた月数の0.7%が上乗せされます。

各種マネー本を読んでいると、この繰り下げた月数の0.7%が上乗せされるので可能な限り繰下げを狙うようにと言った書きぶりがよく出てきます。

しかし必ずしもそうではありませんよ、というのが今回記事にする内容です。

「老齢年金」というのは課税所得です(「障害年金」と「遺族年金」は非課税所得)。一定水準を超えればこの「老齢年金」に対して、所得税や住民税が課税されます。また国民健康保険税(料)・介護保険料・後期高齢者医療保険料といった社会保険料を計算するうえでも、「老齢年金」の受給額が根拠となります。

「老齢年金」を繰下げすれば、これらの税・保険料は増えてくる可能性が高まります。

年金からこれらの税・保険料を差し引きすると、結果的に繰下げ受給した時に手元へ残る額を考慮すると、65歳から受給した時のトータル額を上回るまでにかなりの期間を要することになる場合もあります。

これらがタイトルの答えなのです。

私(sukako)はマネー本を結構な冊数読んでいると思っておりますが、これらの内容を取り上げた本にはまだ2冊しか出会ったことがありません(裏を返せば、読んだ冊数が少ないということかも…)。

具体的な数値を用いたやり取りについては、日本共産党の衆議院議員・宮本徹氏が2020年4月に行った衆議院厚生労働委員会におけるものが分かりやすいと思います。

その記事内容はこちらを↓
2020年4月24日衆院厚生労働委員会 平均余命手取り大幅減 年金制度改定案を批判 | 日本共産党 衆議院議員 宮本徹のホームページです。 (miyamototooru.info)

また、下記の動画配信サイトYouTubeにおいても公開されております。
衆議院 2020年04月24日 厚生労働委員会 #07 宮本徹(日本共産党) - YouTube

付け加えですが、2022年10月1日から後期高齢者医療制度において医療費の自己負担割合に2割となる人が設けられました。

繰下げしなければ1割負担の人が、繰下げによって2割負担になってしまうかもしれませんよね。それも繰り下げた年金額が大幅に下がることは考えにくいので、2割負担も一生涯となるかも。

いつから「老齢年金」を受給したらよいのかは、もともと悩ましいというか、人によりけりの問題でした。それがより一層難しくなってきているということですね。

私(sukako)は「老齢年金」の受給年齢に到達するまでには、まだまだ期間があります。でも近づいてきたらかなり切実に考えないといけませんね。

※今回記事にした内容には、65歳到達前に要件を満たした人が受給できる「特別支給の老齢厚生年金」は一切入っておりません。「特別支給の老齢厚生年金」にはそもそも繰下げ受給がなく、受給しなければ権利を有した人が損するだけのものです。


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