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ウイルス

「次のかた、どうぞ」
「ゴホン、ゴホン、あっ、すいません。先生よろしくお願いします」
「はい、どうしましたか?」
「最近、体のふしぶしが急に痛くなったり、体がだるくなったりするんです。熱もドンドン高くなってきちゃって下がらないんです。変な病じゃないかなと思って不安なんです」
「あー、なるほど。それでは、ちょっと診てみましょうかね」
「はい、よろしくお願いします」
「ちょっと、熱があるか体触ってみますね」
「はい」
「うーん、だいぶ体が熱いね」
「そうなんです、日に日に熱くなってる気がするんです。大丈夫でしょうか」
「原因さえわかれば大丈夫、心配することないですよ」
「重い病じゃないか、不安です」
「大丈夫ですよ。それでは、このあたり、おさえてみますね、どうです。痛みますかね?」
「あー、そ、そこは、い、痛いです。そこが特に痛いです」
「やっぱり、このあたりね。それでは、今日は精密検査をして、原因を調べてから治療方法を考えましょうかね」
「はい、お願いします」



「先生、原因はわかりましたか?」
「わかりましたよ。ウイルス性の病だね」
「えっ、ウ、ウイルス?」
「そう、体がウイルスに侵されてしまってるですよ」
「あー、最悪です。治るんですか?」
「大丈夫、最善を尽くすから」
「お願いします。なんでウイルスなんかに侵されたんでしょう?」
「もともと、あんたはウイルスの住みやすい体質なんだよ」
「えーっ、あたしって、そんな体質なんですか?」
「そうだね、ずっと昔から、あんたはウイルスに侵されているんだ」
「ずっと昔からですか? でも、体調が悪くなったのは、ここ最近なんですけど」
「これまではウイルスもおとなしくしてたんだが、最近、あんたの体のなかで暴れてだしてるんだよ。それであんたの体を破壊してしまってるんだ」
「先生、早く治療して下さい」
「わかってますよ。これから治療しますから心配しなくて大丈夫。それより、あんた、顔色も真っ青だよね」
「この青いのは、生まれつきなんです。それに、この青いのは、あたしの自慢なんです」
「確かにきれいな青色をしているし、あんたは青が似合っていて、美しい」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、治療方法だけどね」
「はい」
「さっきも話したように、あなたの体はウイルスにとって住みやすい体質なんだよ。それを今後、ウイルスの住めない体質に変えてしまうのか、それとも体質はそのままにしてウイルスが暴れないようにするのか、どちらの治療にするかを決めないといけなんだ」
「ウイルスが住めない体質にして下さいよ。その方が安心です。体にウイルスがいると、またいつ暴れだすか不安じゃないですか」
「確かにウイルスがいない方が安心なんだがね。そうなると、あんたの今の美しさが失われる恐れがあるんだよ。せっかく青くて美しいのにもったいないだろ」
「美しいなんて、照れちゃいます。フフフ。あたしが美しいからウイルスが住みついてるってことですか」
「まぁ、簡単に言えばそういうことだな。どうします? 美しさを維持する為にウイルスが住みつくのを我慢して、ウイルスが暴れないように治療するのか、ウイルスが住めない体質にして、美しさを失うのか」
「ウイルスを放置してたらどうなりますか」
「ウイルスの暴れ方次第だが、ヘタすれば命にかかわりますかね」
「ウイルスを放置するのはダメなんですね。暴れないようにしないと」
「そうだね。今の体質のままにするなら、ウイルスとうまく付き合っていくしかないだろうね」
「ウイルスが住めない環境にすればどうなりますか」
「先程も言ったように、あなたの今の美しさは無くなりますな。そのかわり、ウイルスもいなくなる」
「美しくなくなるのは嫌ですけど、どんな風になっちゃうんでしょう」
「そうだね、あなたの近くにいるマースのように鉄の錆びたような肌になるか、ジュピターのようにガスや雲に覆われた肌になるか、もしかしたらサターンのようなアンモニアの結晶の黄色と白の縞になるかもしれんな」
「そうですか、あたしの自慢の青い美しさはなくなっちゃうのね。それじゃあ、体質は変えないで、ウイルスにおとなしくしてもらいます」
「そうだな。それが一番いいが、ウイルスをおとなしくさせるのは、苦労するかもしれんぞ。最近のウイルスは、自分勝手だからな」

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