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20世紀最後のボンボン 第十部 ヨーロッパ テーマ旅行 第七章 アテネ




「ソクラテスの弁明」ほど義憤を覚えた本はない。
なんでそんなことで意地を張って、命を捨てるのか
全然わからなかった。ソクラテスが哲学史上、どんなに
偉大であったか知らないが、高校時代、私はほとんど
彼を許せなかった。

高校がとても自由な学校だったということは前にも触れたが、
倫理社会の定期試験は全部筆記で、一題か二題出ていて、だいたい大雑把に
ソクラテスについて論ぜよ、とか、そういう話ばかりだったので、
この本についての怒りを全部書き出した。
汝自身を知れ。という言葉の意味は大きい。自分の至らなさを
知って、さらに精進しなさいということである。
無知の知。自分が知らないということを知りなさい。という意味。
それらはソクラテスがプラトンに語った言葉だ。ソクラテスは本を書かず、弟子のプラトンが書いた。

岩波文庫にあるそれらの本は当時、私にとっては
古語としか思えない日本語古文で書かれていた。

文化は守るべきだ。

けれども、西洋哲学を古語で書いたものを
解釈させることは、日本人がそれらを理解する速度を遅くさせたと
信じている。いつの時代もそういう古文も英語も他の言語も即時に習得する秀才は日本にいるだろう。しかし、あとで、あるいはそのときに頭が破裂する。日本の秀才、あるいは天才が高校生の時、あるいはその20代で犯罪を犯したというニュースを聞くたびに、詰め込みすぎもあるんじゃないかなと感じるのは私だけではないと思う。

風の便りに、昔の同級生が銀行の最前線で過労死したとか
定年まで勤めずに、エリート街道から降りたという話を
聴くと燃え尽きたんだなと思うのである。

それでも、ソクラテスやアリストテレスやプラトンを共に語った日々は色褪せることはない。いつかアクロポリス

写真お借りしました。


に行ってみたいとずっと願っていた。Agora(広場)とかSchool(学校)とかの原義になった場所を見てみたかった。ソクラテスが弟子たちと語り合いながら、アクロポリスを歩いている姿はとんでもなく自由で、活気に満ちているように見えた。
体験してみたいと切に願っていた。
2013年5月下旬のギリシアは財政上も政治上も
大騒ぎだった。ユーロドルはそのころ、私は触っていなかったが、
1.3ドル近辺で、なかなかユーロ安になれず、苦戦していた。


アテネのダウンタウンでナイキのスニーカーを買い、また少し歩いて、キラキラ系のサンダルを買った。街は、ギリシア人というより、外国人が群れていた。だいたい服装が違っていた。いうまでもないがギリシア人の生活は苦しそうだった。

ホテルに戻った時にルームキーパーのギリシア人と話をした。子供が何人もいるお母さんだった。

ヨロシクという感じでチップを渡そうとすると

受け取らないので、なおのこと好感を持った。家族のために働いて子供が帰って来るからまた家に戻るのだ。何とか理由をつけて、チップは受け取ってもらった。


窓からアクロポリスのてっぺんが見えた。

昔、ギリシア人もアクロポリスを見上げていたのだろうかと何か心に触れて来るものがあった。


まだ明るかったので、また外に出かけた。

少しお腹が減ってきたので、道端のカフェに入ったが、グリークサラダやオリーブなど美味しかった。話好きのギリシア人の男性がカフェを陣取っていて盛んに何か話していた。

やはりとても自由な雰囲気で、ここにいつか勉強にきたいなと願った。

アクロポリスに歩いて行く道が素晴らしかった。

気候が北カリフォルニアと似ていることもあり、湿気がなく気分は上々だった。

アクロポリスでは入場料が途方もなく高かった。

換算すると多分4000円くらいだったと思う。

財政が悪化しているからこんなに高いのかしら?大丈夫なのかしらと心配してしまいました。

ただ、丘を登って昔、皆が集まっていたであろうところに、ただ黙々と進んで行くだけなのだけれども、とても嬉しかった。その前にカイロが暑すぎて大変すぎたストレスもあったかもしれないが、いい風が吹いていて、見晴らしが良くて、楽しかった。どこかのグループが合唱の練習をしていて、その人達を探しているとむかし、劇場だったところが見えてきて、古い石の柱が近くなった。現代は時間という観念で縛られているので、ソクラテスという気配はあるはずないと考えてしまうが、本当はそこにさっきまでいたと感じた。

それなりに根拠がある。私は確かにボンボンとの間にカンクン君を産んだ。昨日のことだ。私にとっては。その子が目の前では成人した姿で私とアクロポリスの石に腰掛けて話をしている。

ホテルから見えた景色 アテネ


数学の証明でもあるじゃないですか?

ある公式に1とかnとか入れていって、うまくいったらn+1もいける。無限もいける。

だから古代ギリシアなんてヒトひねりで、そこにあると思える。


そういう空想の世界にずっと浸っていられる素晴らしい場所でした。

カンクン君に「カカはカンクン君の孫ともここに来るよ。」というとカンクン君は肩をすくめました。



20世紀最後のボンボン 第十部 第8章に

続く


What an amazing choice you made! Thank you very much. Let's fly over the rainbow together!