間違いだらけの焼肉屋

とにもかくにも胃がもたれている。

緊急事態宣言真っただ中に新店オープンのチラシをもらい、「こんなコロナ禍によく飲食店なんか始めるもんだね」と言いつつも、20パーセントオフの割引券がついていたのでいつかいってみようと家の「当面必要ポケット」に入れておいた。

暖簾の向こうは横幅の狭い通路がおよそ1500ルーメンでライトアップされ、5メートルほど奥へ行ったところに店舗の入り口がある。                                                        ルーメンというのはLEDの明るさを指すもんで、調べたら1500ルーメンはおよそ100ワット。要するに「まぶしい」ということですね。

昔は「トイレで100ワット」という言葉を、無駄に明るい性格の人間に対して使ったそうだけど、これうちの母親からしか聞いたことないので全国区ではない予感しかしないんだけど、個人的には好きな言葉です。知らんがな。

とにかく高級感を演出しようという意図のあるエントランスなわけです。                         中に入ると、店の真ん中にコの字型に展開する木のカウンター。カウンターには2席にひとつの間隔で小さな焼き台が埋め込まれていて、背中側に小上がりの個室が並んでいる。

ネットの情報によると、カウンターでは料理人が常駐していて、さながら寿司屋のように好きな肉を1枚単位で頼めるらしい。対して小上がりはセルフサービスなのでクーポンは小上がり席のみ利用可能とのこと。

家族で行くなら小上がり一択だし、1枚単位で頼むとか冗談でしょ無理無理、はいクーポン使いますー(前半は口に出してません)

「こちらは使い捨て容器で、飲み物や料理の提供や片付けはセルフサービスになり、料理ができましたらこちらのベルでお呼びしますがよろしいですか」

今考えたらここで説明されてたんだけどそんな店いままで一度もないし普通に高い値段でいい肉だからそんな店がそんなことするわけないし、それまでに「メニューのご注文はこちらのQRコードを読み取ってお客様のスマホから」「すみませんさっきのQRコード違ったのでやっぱりこちらで」「割引にはアプリの登録が必要」「クーポンお持ちの方はアプリの登録いらなかったです」と若干わちゃわちゃしたのでこの説明をスルーしてしまった。

お子様ソフトドリンク飲み放題プランを「これは何歳までですか」と聞いたら「何歳までとかはなくて…だから大丈夫ですよ」と。                なんだそれ、と思いながらも「あ、じゃあ2つお願いします」と言うと「わかりました」だけで、ドリンクバー的なものがあるのかと思いきや店の奥に冷蔵庫があってそこにいろんな500ミリペットのジュースが置いてある。                   コップ(使い捨てプラスチック)もあるんだけど、「ペットボトルごと持ってっていいですよ」だそう。ソフトドリンク、単品注文すると一杯480円なのに780円の飲み放題ならペットボトルごと持ってけって、飲食店でこんな雑なことある?こんなんハプニングバーの冷蔵庫ですよ。ハプニングバーじゃんこれ(2回目)

セルフサービスって、カウンターが至れり尽くせりなのに対して小上がりは自分で肉を焼くからそのことをセルフサービスっていうんだと勝手に思っていたらマジのマジのセルフで、白米を盛ればベルがなり、ネギタン塩のネギができればベルがなり、たまごスープができればベルがなり、で本当にいっこも持ってきてくれません。フードコートみたいにピーヤピーヤ呼ばれます。                                                                    焼き肉屋なんて品数エグいの店側だって絶対わかってるはず、というかわかってないで焼き肉屋やってるとしたら頭おかしいのに、一皿取りに行って戻ったらまたすぐベル鳴るみたいなことを注文が尽きるまでやられます。

もっとびっくりしたのが、皿がすべて使い捨て容器で、なのになぜか高級感だけは欲しがって「高級な使い捨て皿」を使用してたこと。こんなもんどこに売ってんだよって金色や銀色の皿、テイクアウトのいい寿司が入ってるような黒に金模様の皿、全部使い捨て。

野外イベントでもないお店での外食で全部使い捨て容器で出されたことなんか1度もない。割引の代わりにってんならコロナ対策とかですらなく人件費削減のためだろうし、水で流して食洗器入れるくらいの作業の代わりに高級使い捨て皿使うメリットなんか本当にあるのか??

ベルで呼ばれて、フードコートの返却口みたいなステンの粗末な棚(厨房丸見え)に使い捨て容器に乗った肉や料理を取りに行き、また次に呼ばれたら取りに行くついでに空いた皿を下げに行く。

焼き肉屋なんて肉を焼くだけでも割とあわただしいのに、なんでそんなことしないといかんの…?もう疲れてしまって「レモン汁ほしい。ないの?」という次男に「それくらい自分で店員さんに聞いてきてよ」と言ってしまうくらいですよ(店員を呼ぶボタンもない)

私が「システムとコンセプトの最悪のミスマッチ」と言ったのは、もともと美味くもないけど安い値段でたくさん食べれる店なら「少しでも安く食べられるならサービスがなくてもいい」と考える若い子が行くだろうけど、「今日はいい肉を食べたいね」と思って行く値段の高い店が「2割安くするからサービスは一切しないね」ではだめでしょう。

正直肉の質も「普通においしいしいい肉だと感じるけど別に感動はしない」レベルなので2割引きの価格が適正だと個人的には思う。定価では豚ロース900円、ハラミ1200円、コプチャン900円、大ライス470円(!!!)

ちなみに楽しみにしてた看板メニューのテールスープ(1200円)は「テールからは脂が大量に出るので取り除く」ということを知らないようで、1センチくらいの油膜ができてましたね。

いい肉を完全セルフで焼いて食べるなら肉屋で買ってくればいいのであって、ここまで粗末なサービスでも価値あると思わせたいなら半額くらいじゃないと無理だろう。

そもそも私たちは、オープン記念でもらった2割引きのクーポンだと思って使ってるのであって、粗末なサービスと引き換えの2割引きだとは思っていないし、わかってたら絶対行かなかったので…

スマホでQRコードを読み取って注文ってのも、フリーWi-Fiの案内もないし、充電がなかったりそもそもガラケーだったらどうすんの?なんで高級感出したいのにタッチパネル導入の経費すらケチってんだ?そして注文画面も永久に続く下スクロールだし紙のメニューと内容一致していないしめちゃくちゃ使いづらい。

次男は最初の注文中に「QRコードが違った」て謝りに来た時から誰よりも先に怒ってるし、長男も「ジンジャエールのガスがおなかにたまった」て今まで一度も言ったことない理由で食べようとしなかった。

前にそこの店主が外で、ベントレーに乗った見るからにDQNの風貌のカップル(EXITみたいな派手な服装)と仲良さそうにしゃべってて(うわ…)て思ったんだけど、その(うわ…)をもっと自分で真摯に受け止めればよかった。

小上がりの客にそんな粗末なことやっといて、カウンターではお寿司屋さながらに一枚づつ…なんて片腹いたいわ。すぐ後ろでフードコートのベルなってばたばた取りにいく客がひっきりなしにいたら台無しでしょうに。

そもそも地域柄「高級な雰囲気で高い金出して食事したい」て人があまりいないのでまずここに店を出すところが間違ってるんだわ…南無



垂直が長いことを言いたいやつです