衣笠さんプレート

キヌさんの墓碑銘

プロ野球選手は記録で評価される。
したがって引退すれば、通算記録がその選手のすべてとなる。そして物故者となれば、それが“墓碑銘”ともなる。

衣笠祥雄氏が亡くなってから、何度か生涯記録を目にすることになった。それは例えれば墓参するような行為でもある。故人を偲ぶに、これほどふさわしいものはないだろう。

衣笠さんの墓碑銘には、こう刻まれている。

「この男は生涯に2677試合に出場し、そのうち引退するまでの2215試合は休むことがなかった」

一般的にプロ野球選手の記録で最初に記されるのは出場試合だ。そのシーズン何試合出場したか。そして通算何試合に出場したか。その数字が分母となってその選手の記録があり、また評価される。

プロ野球選手はまず試合に出ること。それがすべてと言っても過言ではない。
試合に出なければ、いかなる数字も記録できないし、結果を出さなければ試合に出続けることはできない。

いくら打率がよくても試合数が少なく規定打席に達していなければフロックだし、本塁打にしても打点にしても試合に出なければ記録は重ねることができない。
その出場試合の記録で、衣笠さんは質量ともに抜きん出ていたがために偉大だったのだ。

では人間・衣笠祥雄の墓碑銘にはなんと刻まれたのだろうか…?
もちろん彼の生前の数々の言動の評価として、それはあるはずだ。

ならばその墓碑銘には、きっとこのように刻まれてしかるべきだろう。

「この男は野球を愛し、野球を愛するようにひとを愛した。そのことで男は人間にも、野球の神様にも愛された。」と。



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