おねだりシロ

老いてますます…

サッカーワールドカップで日本がセネガル戦で健闘して2-2で引き分けた朝。
隣町の公園で、父親と小さな息子ふたりが昆虫を採取でもしていたのか、せっせと虫かごに何か入れているのに出くわした。

その間、リードから離せなかったのでベンチに腰を下ろしてじゃれついていると、シロが散歩袋に鼻面を突っ込んでおねだりしてきた。

「ボールを投げてくれろ!」というサインだ。

袋から愛用のテニスボールを出してやると、目をギラギラさせてせっつく。

「早く投げんかい!」と、急かしているのだ。

そうはいわれましても、公園には小さい子もいるし、脱兎のごとくボールを追いかける犬に驚いて号泣きされても困る。
そこでボールを掲げるようにお預けしていると、今にも跳びかからんばかりにボールを咥えようとする。

「これはいいトレーニングになりそうだ!」

目の前でボールを見せびらかしては、かぶりつきそうになると高く掲げる。シロは必死になって跳びついてくる。
いつものぐうたら、ちんたらぶりはどこ吹く風。老いを忘れてシロはジャンプを繰り返すのだった。

そのうち親子が公園を離れたので、リードをはずしてボールを投げてやった。

「走らいでか!」

脱兎のごとくシロは走ってボールを追った。

そしてその公園からの帰り、ある家の玄関先に猫を見つけたシロは往年のマッチョぶりを発揮して、グイグイとリードを引っ張って追いかけた。

老いてますます盛んなシロなのだった。


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