横たわるシロ

お散歩ミチの人間模様

くれぐれも言っておきます。
ここにご登場の人物は、決してアナタではありません。
そこんとこ、よろしくお願いしたく。

きょうはゴミの回収日と登校の時間とに重なったせいで、散歩ミチでいろいろな方々に遭遇いたしました。

散歩に出て早々でしたね、あまりお会いしたくない方が視界に入ったので、見なかったことにして道を曲がったら、その先にネグリジェ姿の、少しお歳を召したお姉さんが植木鉢に水をやったりしていて、さすがに目のやり場に困りましたが、無視すると後がうるさそうなので視線逸らしたまま挨拶だけはしときました。

その何軒か先はちょうど車でお出かけのところで、軽乗用車のアイドリングしてました。
車中のこととて、見ないのがマナー。知らぬふりして前を通り過ぎましたが、ブロックを反対回りで走って交差点に現れた車はそこで停止。そこはゴミ置場になっていて、中から出てきた正装のおばさまはゴミ袋を下ろしてからご出勤してましたね。

と見ているうちにつぎの軽自動車がやってきて、どうやら最近は軽自動車でゴミを運搬するのがマイブームらしく、そういえばあちこちのゴミ置場に車が横付けする光景をよく見かけるようになりました。

そのゴミ置場の交差点を右折して高台に向かうのが第6公園行きの散歩コース。そのルートに入ってすぐに、ぼくのお気に入りのおばさんが、やはりゴミ袋を胸に抱えてやってきました。
こちらは歩き。すらりとスマートなからだに抱えられたゴミ袋に、私はなりたい、とそんなことをつい思ったりして。

「〇〇夫人」
その〇〇は思い浮かばないんですが、そう呼んでみたい魅力的なおばさんです。

「シロちゃん、おはよう!」

気立ても良さそうな〇〇夫人は、いつもそう声をかけてくれます。

「飼い主より先にワンちゃんに声をかける」

そのポリシーはぼくと同じ。気も合いそうです。

ところがシロときたら、ガン無視です。
さっきのぼくじゃありませんが、見なかったことにしてとっとと歩いていってしまうんですね。
どうやらそのおばさんにシットしているらしいのです。

以前は愛想のいいシロでしたから、出会うおばさんおばさんに鼻先を持って行って挨拶してましたが、色気付いてきたころからでしょうか、ほとんど無視するようになりましたね。
ひどいときは、かまってくるおばさんを吠えて威嚇したり、噛む真似したり。
おばさんみんなにシットしているらしいのです。

「飼い犬思うほどモテもせず」ってやつですが、とにかく散歩ミチで出会うのはほとんどがおばさんばかりなので、いちいちシットしている暇もないわよ、そんな気持ちもあるのかもしれません。

そうこうしているうちに、あるお宅のお庭に、またおばさんの影が。
こちらの方も、あまり得意なタイプではないので見なかったことにして通過。
そのぼくの感情を察したのか、シロはそこ家の先でウンチしてましたね。

しばらく歩くと、またよその地区のゴミ置場があって、今度はヤンママみたいなおばさんがゴミ袋を抱えてやってきました。

果たして得意タイプか、それとも不得意タイプか?

よく見ると、あまり見かけないご尊顔でしたが、そこは察しのいいぼくのことです。さっさっさっと消去法で導きだしたのが、めったに外には出ない方らしく、ひっそり感と暮らしているあの家の〇〇夫人。

こちらはとくにタイプではないものの、たしか以前挨拶を交わしたとき、いい感じだったお方。

「おはようございます」

そう声をかけたその向こうにランドセル背負った女の子が見えて、まさかこの娘がこのおばさんの…?、と当惑してしまったぼく。

というのもついこの間、家の前で赤子を抱きかかえてあやしていた彼女の姿を見たばかり。

その赤子とこの小学生が結びつくわけもなく、それでおつむが混乱してしまったのですが、考えてみればシロと散歩を始めた頃に、彼女夫婦はその家を買って住みはじめたわけで、あれからほぼ10年。あの赤子がこの娘になっていて、何の不思議もないのです。
つまりその間、ひっそり感の〇〇夫人とはほとんどお目にかかったことがなかったというだけなのだ。

またまた過ぎ去った時の早さを痛感させられた瞬間。

彼女の家の前を通過する10年前のシロと、きょうこうして歩いているシロが頭の中でオーバーラップして、妙な時間感覚を味わったりしたのでした。

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