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微分とか何の意味あるん?(3)

高校数学で習う微分。何の意味があるのかというテーマの3回目です。2回目をお読みでない方はぜひ↓をクリックください。

本シリーズの(1)でやったのは、高校で習う微分の計算です。ここでは、y=ax2+bx+cという式を例に微分を計算しました。これです↓

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機械的に覚えた計算ですが、何の意味があるのかと、問題提起しました。(2)では、その答えとして、微分には傾きを求めるという意味がある、ということをまとめました。

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ある区間の傾きの求め方を示したうえで、その区間を極限まで狭めることで、あるの傾きを求めることができる。それが微分の本質だというものです。

しかし、(1)でやった計算が、なぜ(2)でやった傾きを求める計算になるのか?「同じこと」といわれても全然ピンとこない人も少なからずいると思います。

今回は、その疑問に答えていこうと思います。

まず、微分の定義ですが、覚えてますでしょうか。微分を習うとき、一番最初に教わりますが、なんかよく分らない難しい式なのでスルーして、とりあえず微分の計算方法を覚えた方は結構いるんじゃないでしょうか。

しかし、原点が結構大事なので、微分の定義に一度立ち返ろうと思います。こんな式です。

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私は社会人になって既に1X年の、いい歳の大人なので、今の高校でどういう教え方をしているかは詳しくないんですが、高校生だった当時、いきなり上の式で教えられたように記憶してます。

・・・まあ・・・間違ってはいないんですが、こんな式いきなり出されたら脳が思考停止します。

f というのは、確か数Iの初めの方で登場するので、微分を習う時期にはもうなじんでくるころです。大抵 f(x) という書き方で登場します。

で、上の微分の式にはその f が登場しますが、なんで f(x) ではなく f(a) なのか、いきなり出てきた h は何者か、それに加えてなんか式が急に難しそうになるlimです。

本シリーズの(1)で、学校でよくある数学の勉強のさせ方について、皮肉を込めて「心を無にするんだ。『何でこんなことを』なんて考えてはいけない!」という風に書きました。

しかし、この時書いた「心を無にする」というのは、ある意味、数学を学ぶ姿勢としては本質をついているかなと思います。もちろん数学に必要なのは思考力であって、精神論ではありません。

ダメな数学指導の例として挙げた「心を無にする」というのは、考えることを放棄して説き方を覚えろという意味です。一方で、困難そうなものを前にした時の怖気づく心に囚われるな、という意味では心を無にすべきです。

学ぶ内容自体が人生に役立つかは、一旦おいておくにしても、数学を学ぶことは、困難なものに立ち向かう方法論を学ぶ、という意味においては意義があると思います。(この話は別の機会に掘り下げて論じたいです。)

という訳で、めげずに一つ一つ確認していきましょう。

おさらい:f(x)とは何だったか?

思い返すと数学が苦手な私は、f が初登場したときもかなり戸惑ったのを覚えてます。

今まで、y=ax2+bx+cとか書いていたのに、
いきなりf(x)=ax2+bx+cなんて書くようになるんですよ。当時、これだけで私はギブアップしそうになったもんです。

なので、分かっている人には煩わしいかもですが、おさらいします。

まず f というのは、ただの文字の名前の付け方の問題で y と表記するのとの本質的な違いはありません。function(=関数)の頭文字を取ったものです。重要なのは後ろに (x) というものが加わった点にあります。

といっても、その意図は単に利便性のためのものです。 (x) を追加するのは、 f x を変数とする数式で表されたものである(= x の関数である)という意味で、x に値を代入したときの f の値を表現しやすくなります。

例えば、f(x)=ax2+bx+cの場合、x=0の場合の f は、

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という感じに書けるので、「x=○○を代入した」とかいちいち説明しなくてよくなるので楽です。

一応、一般的な数学の表記に倣い、ここからは今まで用いてきた y f(x) に書き換えて記述していくことにします。

本記事の(1)でやった計算と合うか確認

(1)でやった計算は、

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というものでした。なので、微分の定義式から計算して、本当に上の結果が得られるかを確認してみましょう。まず、定義式は x=a を代入した式になっているので、代入前の式に戻しておきます。

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この式で考えます。

この式の右辺の構成要素をそれぞれ x の式で書きます。

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上の式は、元々設定した式そのまま。下の式は x x+h になった時を表してます。f(x+h) を計算しておきます。

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右辺の分子の部分 f(x+h)-f(x) を計算します。

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ここまでの計算結果を右辺に反映するとこんな感じになります。

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h→0とあるので、「分母が0になってしまうじゃないか!」と心配する必要はありません!なぜなら実はこれ、約分できます。この数学的テクニックも苦手な人が嫌になるポイントと思います。

でも、h→0 h=0 ではないのです。0ではない数値のものを限りなく0に近づけるということで0を代入しているわけではないのです。

とはいえ lim の計算としては、例えば ↓ の例のように、

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最後は実質的に x にその値を代入することになります。

しかし、代入するより前に約分できるところはする、というのが重要です。つまり、約分できる要素は極限を取る以前に既に消えていると解釈します。そのような考えのもと、f’(x) を計算すると、

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となります。

微分の定義からちゃんと計算すると確かに教えられた計算結果になりますね。

微分の定義と傾きの計算の関係

次に、本シリーズの(2)で論じた傾きの計算が、本当に微分の定義と同じになっているかを検証していきましょう。

再掲になりますが、傾きの計算は ↓ のような考え方で行います。

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ここに書いた「区間」が極限まで狭めた時の傾きの計算が微分だ、という話でした。

x の変化量」「 f(x) の変化量」とかが数式で書ければ計算できますね。数式で書くのはそんなに難しくありません。まずは x を見てみましょう。

x の変化量とは上のポンチ絵で考えるなら、 xΔx だけ増えるということです。ちょっとくどい書き方になりますが、増える前 x だったものは、増えた後 x+Δx になるということです。

同じ考え方を f(x) の方でするなら、f(x) の変化量とは f(x) が、Δf だけ増えるということになりますね。増える前 f(x) だったものは、増えた後 f(x)+Δf になるということです。

ところで、f(x) というのは()の中の変数が x の時の f の値を示すものと定義しているので、

当たり前ですが、変数が x の時、f は、f(x) です。これ、変化前です。

同じ考え方をすれば、変数が x+Δx の時、f は、f(x+Δx) となります。こちらは変化後ですね。なので、f の変化量 Δf というのは、

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そうするとある区間の傾きを数式で書けるようになります。

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このある区間を極限まで狭めれば微分になるということなので、前回の(2)の記事で出しましたが、

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もうお気づきと思いますが、Δx と書いていたものを、h と書けば、上の式は微分の定義式と同じものですね。つまり、微分はある位置の傾きを求めているということが確認できました

まとめ

ずいぶん長くなってしまいましたが、今回確認したのは以下のことです。

・微分の定義から計算すると確かに微分の計算公式が導かれる
・ある区間の傾きの計算を、極限まで区間を狭めると微分の定義と
 同じ形になる
つまり、微分はある位置の傾きを計算している


はたして、今回の記事は分かりやすく書けているのか?丁寧な説明を心がけた結果、文章は長くなってしまって、逆にわかりにくくなってないか若干不安になりました。

おいおい、読み返しして、直せるところは直そうと思います。やはり、高校数学の主峰の一つ、説明しようと思うとそれなりに大変だ、ということを痛感しました。

今回、苦労して傾きを計算するのが微分、ということを示しましたが、次回は、そもそも論として、傾きを求める意味って何なの?必要?というところを掘り下げていこうと思います。


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