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絶縁協調と避雷器の役割

鉄塔や架空送電線といった電力の送電系統は、常に雷との戦いです。とはいえ、雷は敵としては強大すぎて、まともに戦える相手ではありません。雷の電圧は1億ボルト以上といわれています。このような大電圧に耐えられる絶縁体はないため、基本的には防ぐのではなくいかにやり過ごすか、被害を最小限に抑えて、いかに早急に回復するか、という考え方が大事です。

本記事では、そのような雷対策の考え方である、絶縁協調というものと、避雷器の役割についてまとめます。

絶縁協調の考え方とは

例えば、仮に電線に雷撃があった場合(電線は架空送電線で遮蔽されているので雷の直撃を受けるケースは少ないとされています)、電線には津波のような巨大な電圧の波(サージ電圧といいます)が伝播していきます。

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出典:https://jeea.or.jp/course/contents/04103/

サージ電圧が鉄塔に到達すると、碍子連の電圧が急上昇し、耐電圧を超過した時点で、フラッシオーバが起こります。フラッシオーバは、電線だけでなく、架空地線や鉄塔に落雷があった場合も発生します(でも、電線に落雷した時の方がひどいです)。

雷対策として、送電線の絶縁を強化すると、サージ電圧は高くなってしまいます。耐える考えをやめて、サージ電圧をうまく逃がしてやらないと、行き場を失ったサージ電圧は、変電所まで侵入し、変圧器や遮断機を破壊する恐れがあり、被害をより甚大なものにしてしまいます。

その対策として、変電所の絶縁対策をより強力なものにして・・・、というような対策の仕方をすると、系統の絶縁コストはうなぎ上りとなり、極めて不経済になってしまいます。

そのため、守るべきものに優先順位をつけ、雷撃対策の有効性を保ちながら、不要な絶縁対策によるコスト増加を抑える設計が必要です。この考え方を絶縁協調といいます。

避雷器の役割と絶縁協調

避雷器は、サージ電流を受けて、速やかに地絡させることを目的にした保護装置です。避雷器は、変電所の引込点に設け、サージ電圧を地面に流し、変電所を守ります。

絶縁協調としては、変圧器を始めとした各機器の衝撃絶縁強度を、避雷器の制限電圧(避雷器が大地に放電している時、避雷器の端子に残る電圧を指します)より、ある程度高く、余裕のある強度とし、雷害を避ける対策としています。そのある程度余裕を持った衝撃絶縁強度を、標準雷撃インパルス電圧による基準衝撃絶縁強度(BIL)といいます。BILは衝撃電圧試験標準規格によって定められています。

絶縁協調は基本的に設備ごとに行いますが、概ね、衝撃絶縁強度において以下のような順位付けで設計されます。

線路碍子>結合コンデンサ>変成器・機器碍子>変成器(BIL相当)>避雷器

このように、送配電系統は、機器の衝撃絶縁強度に優先度をつけることで、雷撃対策と経済性の両立を図っています。

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