顧客さまをつくるとはなんぞや


こればっかりは誰も教えてくれない領域の話になりますが、この業界にいればいるほど上から言われませんか?


顧客様を作りなさいって。


顧客さま作れって、豆腐で麻婆豆腐作れみたいにすごい簡単にいうじゃんって思ったことありません?

いやどうやって作るんだよ と。そんなに簡単に出来たらなんにも苦労しないんだよな、と。わかるわかるよ。わたしもずっとそう思っていた。今でも思ってる。

色んな人に聞いても、「愛されるようになりなさい」とか「提案や接客で掴みなさい」とか言うけど 、いやだからそれをどうやるんだよみたいなことを思ったこと絶対あると思うんです。実際並み居る競合店と百貨店や様々なテナント全て合わせて「あなたから買いたい」と言って貰えることって、めちゃくちゃ難しいと思います。正直無理ゲーに近い。

だけど、価格帯が上がってそれこそフリーに頼らない顧客商売をする店に勤務すると、自分に顧客がいないことがどれだけの痛手になるのか、経験した人も絶対にいるはず。

じゃあ顧客様ってなんのために作るのか、という問に関しては、なんのためでしょうね。売上?精神的支え?これはあくまで個人的ですが、自分の販売人生を少しでも楽しくするためだと思っています。販売って、売って数字にしなければ話にならない職業ですよね。じゃあ少しでも、売りやすい方法が欲しくないですか?最初から積み上げていく新規も大事だけど、電話したら来てくれて買ってくださるお客様がいるとだいぶ楽になりませんか。話すだけで楽しくなるし、これ似合うとおもうって勧めたものを決めてくださるのはすごく嬉しい。そういう、救いのために作るのかなって思います。

わたしも実際、顧客作りがすごく苦手な人間です。正直今でも苦手です。多分一生得意になることはないと思います。だから最初の頃はフリーが多い店にしか勤めなかったし、顧客商売を避けていたこともありました。自分からヘルプ要因に立候補したこともあります。でも生きていこうと思ったら、ステップアップしようと思ったらずっと逃げてるわけにもいかなくて顧客をつくれと言われ始めたのは百貨店勤務になってからです。

今もどうやって作ればいいのか分からないし、得意なわけでもないけれど、顧客が欲しくて足掻いてる人に少しでも読んでもらえたらと思い、書いておきます。

結論から言えば、早々なことで顧客になどなったりしないということ。ただその中で印象に残った出来事があれば自然に自分を目指して通ってくれるようになる。

よく1回買ってもらってから手紙出して再来を促してとか言われますよね、皆無とは言いませんがまず無理です。そんなんで顧客にはならない。なっても店と服が好きなだけであってあなたではない。いやそもそも一方的な手紙でわたしを選んでくれっていや無理でしょって話です。下手したらお前誰だよ。

色んな人にどうしたらいいかわからず聞いて色々試したけどリピにはなっても顧客にはならない。いやムズい。何この無理ゲー。でも毎日売上はある。新規は絶望的、どうしろと?ずっとそう思ってもう禿げるんじゃないかってくらい追い詰められていた時の話をします。

夕方頃、18:00過ぎくらい。早番の人が帰るくらいの時間で、その時点でわたしの個人売りはゼロでした。めちゃくちゃなヤケ状態だったので、早番が朝に売上を立てていることをそりゃあ朝の方が来るわな!お前の実力じゃねえよな!と責任のなすりつけというか、そんなことを思って心で吐き捨てながら早番を見送り、売れない現実に嫌になっていた日です。連日詰められてて、本当にしんどかったことを今でもよく覚えている。
ふらっとお店に入ってきたお客様は新規の方でした。あまりわたくしどものお店には見ない層の方で、諦めを通り越してどうにでもなーれーという気持ちにシフトしていたわたしは雑談ばかりを振りながら、それでも何を提案しようか目線は服ばかりに走らせていました。悲しいかな染み付いた数字への執着。
話していて、「この人、絶対にこの形のこの色似合うのに。」という服が1着だけ、お店にありました。
でもこの色は嫌いだと言いきられていて、この形も着ないと会話の中で引き出したばかり。着ないと言い切ると言うことは、何らかの理由と隠したいものがあるからです。ああ絶対似合うのにと思いながらその人が着たいと思う服を試着してもらい、色々喋ったけど、どうも納得がいかないみたいで始終浮かない顔をしていました。もうその時点で諦めていたし売上のこともどうでもいいなと思っていたけど、似合うと思ったあの服だけはどうしても着て欲しかった。はいエゴですわかってる、わかってるよエゴでーーーす!だから、

「最後に、着てみるだけでいいですし、出てこられなくても結構ですので、これ、着てみてください。」

と、着ないし嫌だと言っていた服を差し出したんです。最初はえーという顔をしていました。でもここまで来たしまあ出なくても着るだけならと渋々試着室に入っていくお客様。
ぜってえで出て来ないだろうなと思ってた。10万賭けてもいいわと思ってなんなら鼻歌すら歌っていた気がする。今日の夕飯何にしようかな~団子かな~何せわたしは今団子5兄弟!とかやけくそだったので。

なのに、予想外にお客様がその服を着て出てこられた。
めっっっっっっっっっっっっっちゃ似合ってた。めちゃくちゃめちゃくちゃ似合ってた。
鏡に映った自分を見て、お客様が本当に驚いた顔で、少し笑いながら「すごく似合う。すごい。好きじゃないのに、すごい。」って呟いたこと。
今思えばきっと骨格とかパーソナルカラーがお客様の似合うものだったのでしょう、でも本当に似合っていた。好きな色と形じゃないんだけど。
その後、値段も見てないのに「いくらでもいいです。買います。」と仰ったこと。
呆然と鏡を見て、その後これを着ていっていいですかと言われたこと。

本当に嬉しかったし、それからそのお客様はことある事にお店に顔を覗かせてくださいますし、イベントでは必ず来てくださいます。

だから、特別なことをしなくても相手の印象にどれだけ残ることができるかという点だと思います。顧客様なんてすぐにバンバンとできるようなものでは無い。だからこそ毎日の積み重ねが大事になってくるんですけど。

顧客様ができてる人っていうのは、必ずお客様を掴む言葉や接客ができているひとです。
誰でもできると思うので、是非明日から店頭に立つ意識を少しでも上に向けてくださったらいいなと思います。

毎日お店に立つ者より。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?