秋の始まり、秋の宵口

「秋の始まり」

秋の精霊を出迎えよう。

心の木を彩る錦。

空想の森が色づいたなら、秋の精霊を出迎えよう。

朝摘みのハーブティー、爽やかな秋空の下でお茶会。

鮮やかな空の青、吹き抜ける明るい風。

出来立てのクッキー、慎重に仕込んだケーキ。

焼きたてのスコーンと、夏の間にとれたベリーのジャム。

葉っぱが色づき、落ちて枯れ果てるその時まで、この季節を祝福しよう。

秋が来たことをお祝いしよう。

明るい、明るい、太陽の下で。


2023.10

「秋の宵口」

夕暮れも早まる頃、宇宙のようなキャンドルに灯をともして、黄昏時に息をする。

めいっぱい、枯れ葉色の空気を吸い込んで、そして静かにゆっくり息を吐く。

橙が赤に、赤は徐々に彩度を落として、北の山の端から深い藍色が滲み出し、やがて空全体を覆っていく。

煌めき始める一番星。

大きく輝く丸い月。

いまだに未練があるかのように、西の端がぼんやりと温かく光っている。

烏が空を渡り、コウモリがひらひら木々の間を飛んでいた。

キャンドルの明かりが空の食器とティーカップを照らし、薄く輪郭を描いて揺れている。

木々が黒い影となり、空は深く宇宙を映し、燦然と輝く小さな粒の集まりが静かに燃えて瞬いた。

2023.10


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