見出し画像

少女と猫の秘密のお庭

特に、続くわけでも何があるわけでもないただ広いだけの。

少女と猫の秘密のお庭

小さな水晶のなかには、とても広い野原が広がっていた。
立ち尽くすのは、いきなりためしに入ってみた水晶からそんな場所に出てきてしまったから……ではなく、広かったからだ。
どこまで続くのかわからない、ただ先の方はぼんやりと海のように空と混じっているのが見えた。
あまりの広さにあっけにとられて、少女と猫は立ち尽くし、世界の一部になっていた。
風の音はしないが、広々と遠くを飛ぶ雲があり、遥か高いところでは風が流れているのだとわかった。
若い緑色におおわれた足元を、もんしろちょうがひらひらと飛んでいく。
ここはあの世か、と疑うほどの広い野原だった。

2018.11.29

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?