星の子

どうぶつの森、はまり出したら止まらない。

星の子
 

ある平凡な家庭の中に長男が生まれました。その子はとても健康で、ちょっとだけ繊細な子供でした。両親はたいそう可愛がり、その子供を愛していました。

そうしてしばらく経ってから、家の呼び鈴を鳴らす音がしました。父親が玄関の扉を開けると、そこには1人の老婆が立っていました。

「こんな夜更けに、どういうご用件で?」

父親がみすぼらしい羽織を羽織って、浮世離れしたような老婆に尋ねました。

「実は今晩寝る場所がないのです、一晩泊めていただきたいのですが…」

老婆はそう答えて、頭を下げました。

「…ああ、ええと、うちには子供がいるんです、少しうるさいかもしれません」

「わたしは気にしません」

「あー、そうですか…ではどうぞ」

父親は歯切れが悪そうに言って、結局老婆を家に招き入れました。老人はありがたいと呟いて、家に入って行きました。

次の日、老婆は父親と母親に感謝をのべてそれから不思議なことを言いました。

「実はわたしは、この家の子供を祝福に来たのです、そう、この子のことです。この子は神が遣わした霊愛の子。その真理は人々を照らし、祝福し、そして愛に導くでしょう」

そうして見る間に老婆の姿が揺らいで、後には透明な水晶のかけらだけが残されていました。

父親も母親も、驚いてしばらく固まり、互いに顔を合わせました。

 

3人家族のもとに、次男が生まれました。その子は健康で、とてもぐっすり眠る子でした。両親と2歳になる長男はその子をとても可愛がり、その子供を愛していました。

そうしてしばらく立ってから、家の呼び鈴を鳴らす音がしました。父親は眠たそうにしながらも玄関を開けたのでした。

「こんばんは、こんな夜更けにすみません」

そこには若い女性が立っていてそう言いました。

「こんな夜遅く、なんの用事で?」

父親が聞くと、どうやら泊まるところがないということでした。父親はどこかで似たようなやり取りをしたような気がする、と思いながらも歯切れ悪く答え、結局女性を家に招き入れました。

次の日、父親の思い出した通り、女性は感謝を述べた後、不思議なことを言いました。

「じつはわたくしは、この一番小さな子に祝福するためにここに参じたのです。この子は神が遣わした守護の子。その才は邪を弾き、人々を安心させ、導く光になるでしょう」

そうして若い女性は朝日の中にかき消えて行きました。後に残されたのはきらきらと光る宝石のかけらでした。

父親も母親も、二年前を思い出して首を傾げてまだ眠る2人の子らを眺めるのでした。

 

2人の子供はすくすく育ち、長男は4歳、次男は2才になった時でした。この家にもう1人、三男が生まれたのです。両親は三男を可愛がり、兄達も三男を可愛がりました。

そうしてある日の夜、呼び鈴を押すものが現れました。今度は両親揃って出迎えると、そこには老人が1人立っていました。

「こんな寒い夜に、どんなご用事ですか」

父親が聞くと、一晩泊めてほしいというのでした。両親は互いにうなずき合って、その老人を快く迎え入れました。

次の日、老人が言いました。

「私は実はこの中で一番小さな子供に祝福を与えるためにここに参ったのじゃ、この子供は神の遣わした叡智の子。この子の叡智は人々に益をもたらし、理想を実現するための導きになるだろう」

そうして老人はどこかに消えて、後にはぴかぴかに磨かれた丸い黒曜石だけが残されてしました。

両親は黙ったまま、3人の息子達を抱きしめました。

 おしまい
2018.2月

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?