第71回全日本吹奏楽コンクール高等学校の部感想

【 課 題 曲 】

(I)行進曲「煌めきの朝」(第32回朝日作曲賞受賞作品)
牧野 圭吾

(II)ポロネーズとアリア ~吹奏楽のために~
宮下 秀樹

(III)レトロ
天野 正道

(IV)マーチ「ペガサスの夢」
水口 透

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《 高等学校前半の部 》

1 東京都代表 都高等学校
東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部
指揮 畠田 貴生

課題曲 I
アウレア レゲンダ
福島 弘和

マーチは推進力があって曲の運びがなめらか
すべての楽器がクリアに聴こえ、余裕さえ感じました
自由曲ではオーボエや舞台裏からのトランペットソロ
聖人たちがモチーフなのかな、と想像しながら聴ける堂々とした演奏
後半は全体での動きが際立っていました
木管とホルンの掛け合いのバランスも絶妙
途中にある一瞬の休符で引きこまれたり
本当に巧みな演奏でした

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2 東北代表 福島県
福島県立いわき湯本高等学校吹奏楽部
指揮 小山田 浩

課題曲 II
ピース、ピースと鳥たちは歌う
伊藤 康英

ポロアリはゆったり感があり
あまり急がせず音質の良さを聴かせてくれました
自由曲は冒頭のTbソロが素晴らしかった
名古屋国際の巨大なホールに負けない、かつオーバーブローしない
技術は本当にすごいと思う
クラやトロンボーンセクションの音に厚みがあるのも説得力があっていいと
思いました
曲は最後に向けて盛り上がっていくわけですが、ラストから逆算して組み立てて
いたようでくどくないのもいいなって思いました

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3 東北代表 秋田県
ノースアジア大学明桜高等学校吹奏楽部
指揮 石崎 聖也

課題曲 III
吹奏楽のための交響曲
「ワインダーク・シー」
I.傲慢 II.儚い夢の糸 III.魂の叫び
マッキー

ちょっとおどけたような前半のレトロ
しっとりトランペットソロに、はっきりサックスソロの対比も楽しく聴きました
後半もフレーズをちょっと揺らしていて遊んでいるよう
自由曲はテーマの長いfのフレーズは聴きごたえがありました
ウエイトが重めの演奏、でもスピードも感ある
2楽章がいちばん聴かせどころだと思ったのですが、美しくて危う雰囲気が
たまらんかったです

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4 北海道代表 北海道
北海道遠軽高等学校吹奏楽局
指揮 高橋 利明

課題曲 I
吹奏楽のための風景詩「ジャングル」
フェラン

マーチのイントロにとてもインパクトがあった
本当に煌めいていた、煌めきの朝
バンド全体の一体感を感じるバンド
トロンボーンはトリオからの切り替えなど瞬発力が素晴らしかったです
自由曲のたっぷり息を使ったロングフレーズは広い景色が見えました
pも美しい
途中荒々しい表現もありつつ、全体を通してとてもスケール感のある美しい
曲が楽しめました

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5 四国代表 愛媛県
愛媛県立伊予高等学校吹奏楽部
指揮 池田 努
課題曲 III

シンフォニエッタ第5番「火焔の鳥」
福島 弘和

最初からイケイケのレトロ
トランペットソロはどこか遠くからかすんで聞こえるよう。
サックスソロは軽やか自由曲は細かい動きと大きな流れが
交互にある曲をスゴイアンサンブルで演奏
聴いていてこちらも力が入る
コントラバスからアングレへの持ち替え男子も大役お疲れ様でした

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6 関西代表 大阪府
大阪桐蔭高等学校吹奏楽部
指揮 梅田 隆司

課題曲 III
ブリュッセル・レクイエム
アッペルモント

フレーズの終わりは切らないレトロ
ちょっと浮遊感がある
自由曲は細かい動きはもちろん、今年は祈りのような場面で極限まで
落としたpの表現が本当にすごいと思いました
大きな音量でも力が抜けているように感じて
「うまく響かせればそんなに力なんていらない」と言われているよう
先生もあまり先導して指揮はしておらず、
基本は生徒さんたちに委ねているといった感じ
この「こなれ感」はなんなのだろう

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7  中国代表 島根県
出雲北陵高等学校吹奏楽部
指揮 原田 実

課題曲 I
復興
保科 洋

出雲北陵さんは奇をてらわないスタイルがいいと思っています
背伸びをせず飾らないところに良さがあると思います
課題曲・自由曲を通して聴いて改めて思いました
復興は前半のゆったりした部分を丁寧に聴かせてくれました
今回1年生が多かったそうですが、早いうちから全国を経験できたのは
来年、再来年に活きてくるはず

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8  関西代表 大阪府
東海大学付属大阪仰星高等学校吹奏楽部
指揮 藤本 佳宏

課題曲 I
ブリュッセル・レクイエム
アッペルモント

マーチはとても飛んでくる音をしている
自由曲はラスト前の祈るような場面、仰星は音厚めで少し訴えかけて
くるような印象でした
同じ曲でもバンドごとに違いがあって興味深いと思いました

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9  九州代表 熊本県
玉名女子高等学校吹奏楽部
指揮 米田 真一

課題曲 I
クロスファイヤ ノヴェンバー 22 J.F.K(2023年版)
樽屋 雅徳

独自の響きのするバンド
私には全体的に「ねっちり吹いている」ように聴こえる
このバンドこそ実際に生で聴いてみないとわからないと思う
どうか関東で演奏してくれますように・・・
自由曲のアメリカ国家がフェードイン&フェードアウトしていく場面での
バランス感覚は驚き。チョイ役的な場面もとても効果的に演奏してしまう

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10 東海代表 愛知県
聖カタリナ学園光ヶ丘女子高等学校
吹奏楽部
指揮 日野謙太郎

課題曲 I
シンフォニア
I.夜
II.ニューヨーク:ラッシュ時の地下鉄
III.上海の秋祭り
IV.モールス信号:大陸横断鉄道完成
周 天 (ジョウ・ティエン)

とても元気で明るくいマーチ
そして細かい部分も丁寧に聞こえる
自由曲は20分ほどの大曲をカットしていてもとても聴きごたえがありました
ダブルリードの魅力も再発見
日本初演を多く手がけているバンドですがまさにパイオニアと言える演奏

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11 北陸代表 富山県
富山県立富山商業高等学校吹奏楽部
指揮 小西 衛

課題曲 I
吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より
高 昌帥

実際に歩けそうな「実用性のあるマーチ」
そして優しい切り口のマーチ
自由曲ではfでも音が荒れず、とても丁寧
なのでとても聴きやすく内容が入ってくる演奏でした
おおらかな演奏スタイルが昔からあってそこが好きです

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12 九州代表 長崎県
活水中学校・高等学校吹奏楽部
指揮 杉町たまみ

課題曲 I
ウインド・オーケストラのためのバラッド
高 昌帥

前に前に、積極的なマーチ
実際に歩くことは難しそうだけど(でもこの人たちはたぶんできる)
座奏なぶん、のびのび演奏されていたようです

自由曲は場面の切り替えがはっきりしていて色彩感がある
もの悲しい場面や激しく細かく動く場面も柔軟に演奏されていると思いました

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13 中国代表 岡山県
明誠学院高等学校吹奏楽部
指揮 稲生 健

課題曲 IV 交響詩「海」より 第3楽章
風と海との対話
編曲 藤田 玄播

課題曲では唯一のペガサスをチョイス
素朴でいい曲だなって思わせてくれました
しっかりと厚みのあるマーチ
でも重たくはならない
自由曲はトランペットソロを中心に曲が運ぶ場面がたまらんかったです
どちらかというとスッキリめのアンサンブルを楽しめた印象が
ありました

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14 東関東代表 千葉県
柏市立柏高等学校吹奏楽部
指揮 緑川 裕

課題曲 III
とこしえの声~いまここに立つ母の姿~
樽屋 雅徳

エロいレトロ
かなり語尾を切る、キレ強め
トランペットソロはハーフトーンのようなスタイルが個性的

課題曲・自由曲通して音の立体感や間の使い方は頭一つでている
やっぱり柏はすごいですハイ

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15 西関東代表 埼玉県
春日部共栄高等学校吹奏楽部
指揮 織戸 祥子

課題曲 I
楽劇「サロメ」より 7つのヴェールの踊り
シュトラウス
編曲 中村 睦郎

課題曲・自由曲を通してとてもメリハリのある演奏
サロメはもう何度も聴いているはずなのに「次はどうなる?」と思いながら
聴かせていただきました
いつも素晴らしい演奏をする春日部共栄さんですが、こんなに
「エモいカスキョー」が聴けて本当に楽しかったです

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《 高等学校後半の部 》

1  西関東代表 埼玉県
埼玉栄高等学校吹奏楽部
指揮 金井 良弘

課題曲 II
歌劇「アンドレア・シェニエ」より
ジョルダーノ
編曲 宍倉 晃

①顔が映るくらいピカピカに磨かれた音
②お得意のアゴーギグ
(もうゆっさゆっさ揺らしてくる)
③立体感のある強弱

課題曲・自由曲通して栄の魅力が楽しめました
課題曲は「今これアンドレアシェニエを聴いているんだっけ」
って思ってしまったぐらい
栄は美しい

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2  東関東代表 千葉県
習志野市立習志野高等学校吹奏楽部
指揮 織戸 弘和

課題曲 I
交響詩「海」より III「風と海との対話」
ドビュッシー
編曲 佐藤 正人

広いセッティングで自由曲はさまざまな表現を順に聴かせいく演奏
それがどれも素晴らしかった
少人数のところも見せ場だった
幻想的な演奏にうっとりしました

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3  北海道代表 北海道
東海大学付属札幌高等学校吹奏楽部
指揮 井田 重芳

課題曲 II
宇宙の音楽
スパーク

宇宙の音楽は音数が多い曲だと思うのですが、それらをまとめ大きな絵巻物で
見せられたようなダイナミックな演奏
バンドの持ち味である「どすこいサウンド」が楽しめました

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4  関西代表 大阪府
明浄学院高等学校吹奏楽部
指揮 小野川昭博

課題曲 II
紺碧の波濤
長生 淳

密集したセッティング
伸びがあっていい音
ポロアリは踏みしめるような演奏

自由曲は中間部の物悲しさから後半は長生作品の特徴である「寄せては返すの波のような目まぐるしいフレーズ」が柔軟性をもって繰り広げられる
課題・自由曲でギャップがあり多彩な演奏を聴かせていただきました

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5  西関東代表 埼玉県
埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部
指揮 宇畑 知樹

課題曲 II
「スペイン狂詩曲」より マラゲーニャ、祭り
ラヴェル
編曲 森田 一浩

広めのセッティング
伊奈学はpを巧みに使った独自の節回しがあるといつも思います

ポロアリからマラゲーニャと、さまざまな曲想を披露し聴いている人たちを
楽しませてくれる
祭りの、音が目の前にワッと迫るような表現も本当にすごいと思いました

伊奈学七変幻

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6 九州代表 鹿児島県
鹿児島県立松陽高等学校吹奏楽部
指揮 立石 純也

課題曲 I
ブリュッセル・レクイエム
アッペルモント

ここのバンドは音の統一感があって聴いていて心地よかったです
煌めきでは低音群がメロディの終わりをしっかり包み込んでくれていた
こんなふうに演奏していたのはここだけ
ブリュッセルも誰かが飛び抜けて、ではなくみんなで一緒にやっている感があり、やはり統一感がありました
ユーフォの細かいパッセージはみんな息を飲んだのでは

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7  東海代表 愛知県
愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部
指揮 伊藤 宏樹

課題曲 II
交響詩「モンタニャールの詩」
ヴァンデルロースト

密集したセッティング
スマートなポロアリと安定感が際立ったモンタニャール
全ての楽器がどれだけ吹いていてもラストまでブレなく演奏しているのがすばらしい

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8  四国代表 香川県
香川県立坂出高等学校吹奏楽部
指揮 田所 博

課題曲 I
吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より
高 昌帥

煌めきはメロディを下からすくいあげるように吹くのがいいなって思いました
自由曲はも各楽器の受け渡しがスムーズで理性ある演奏
トロンボーンセクションはいつも目立ち過ぎず、かつ効果的に演奏していて素晴らしいとおもっています

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9 東京都代表 都高等学校
東海大学菅生高等学校吹奏楽部
指揮 加島 貞夫

課題曲 III
ドラゴンの年(2017年版)
スパーク

・レトロは独自のスタート
・十分に間をとったソロ
・細かい楽譜は「フェイク」ととらえて吹き
・ラストのダウンは下がった方を強く吹く
ここまで本格的にやったのは菅生だけだと思う

自由曲の2楽章は長い長いクレッシェンド
といっていいのかな、ここは菅生の得意技。全体で大きく聴かせてくれました
素晴らしかったから、これもやはりフルサイズで聴きたい

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10 東関東代表 千葉県
千葉県立幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部
指揮 伊藤 巧真

課題曲 I
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り
ラヴェル
編曲 伊藤 巧真

煌めきは「拍感が」あっていい
歌心もある
トリオのフルート、ピッコロは他にはないような魅力があった
(まだ聴いていない方、オススメです)

そしてダフクロが本当に美しかった
他のバンドとは曲のアプローチが違うのかもしれない

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11 東北代表 宮城県
聖ウルスラ学院英智高等学校吹奏楽部
指揮 及川 博暁

課題曲 III
管弦楽のための交響詩<連禱富士>
三善 晃
編曲 遠藤 正樹

レトロは中央にドラム、ビブラフォン、ウッドベースを配置
このジャンルの核になる楽器を密集させて安定感を狙ったのだと思います
最後の最後でついにこのセッティングをするバンドが現れたと思いました
そしてどこか「こぶし」のあるトランペットソロ、サックスソロ
自由曲はどうやって出したんだっていう音まであった
とても体力があって、いろんなことに挑戦しているバンド

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12 北陸代表 石川県
石川県立金沢桜丘高等学校吹奏楽部
指揮 寄島 昭生

課題曲 I
バレエ音楽「眠れる森の美女」
チャイコフスキー
編曲 石津谷治法

朗らかな煌めき
トリオはなんだかホッとさせられました

自由曲冒頭の一体感はおどろき
そして品がある
木管セクションだけの場面、息を飲みました
あれは本当によかった

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13 中国代表 岡山県
岡山学芸館高等学校吹奏楽部
指揮 中川 重則

課題曲 I
アルメニアン・ダンス パートII
リード

演奏を聴いていると65人くらいいるように感じる・・・
煌めきは颯爽とした印象

自由曲はクラリネットセクションのpにのせてアングレが活躍
この「大人数でのp」というのが素晴らしい
pの表現こそ難しい
岡山学芸館を知っていて、迫力の演奏を期待していた人には意表をつく切り口で驚かせたのでは
もちろんラストは期待通りの迫力ある演奏

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14 東海代表 静岡県
浜松聖星高等学校吹奏楽部
指揮 土屋 史人

課題曲 III
秘儀IX(アスラ)
西村 朗

出し惜しみなし!
ストレートに鳴らすレトロ
他のバンドより硬めに吹いている

自由曲は会場の空気を完全に変えた
舞台から客席に音が飛ぶ、ではないような感覚
西村朗さんのあの雰囲気からこんなパワーのある曲が生まれるのがいつも
不思議に思います
ものすごい集中力の演奏

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15 九州代表 福岡県
精華女子高等学校
指揮 櫻内 教昭

課題曲 I
ガレア エト ベルム~スケルテ・ヴァン・アイスマの知られざる物語~
ヤン・デ・ハーン

こちらも実用的なマーチの印象
個人的にはこのくらいのテンポ感が好きです
このままあの青いジャージを着て歩いてそう

自由曲、はっきり物言う感じは精華女子っぽくていいなって思いました

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出場者のみなさん、今年もすばらしい演奏をありがとうございました
今後のご活躍も楽しみにしております

引退をする方は本当におつかれ様でした