第73回関西吹奏楽コンクール高等学校A感想

2023年8月27日(日)
会場:あましんアルカイックホール(兵庫県尼崎市)


【課題曲】

  行進曲 「煌めきの朝」 / 牧野 圭吾
  ポロネーズとアリア ~吹奏楽のために~  / 宮下 秀樹
Ⅲ  レトロ / 天野 正道
Ⅳ マーチ 「ペガサスの夢」 / 水口  透


1 京 都 京都精華学園高等学校
課II 空知らぬ雨にかかる虹
日景 貴文作曲

ポロアリはホールを十分に響かせることを強く意識したみたい
自由曲は現代的な曲。木管が様々な表情をみせ、それを金管打楽器が支える場面が多かったみたいなんだけど、金管も木管のような速い動きを要求されるも統一感があって各楽器が鳴った時の色彩感も楽しめました


2 奈 良 奈良市立一条高等学校
課III 交響詩「モンタニャールの詩」
J.ヴァン=デル=ロースト作曲

こちらもレトロは長めに、ホールをよく響かせることを意識しているみたい
モンタニャールは全体的に迫力のある演奏
2曲ともこのホールをいっぱい響かせたいという気持ちが伝わりました
(休憩明けの会場アナウンスで何度も「響きの豊かなホール」と言っていた)


3 滋 賀 立命館守山高等学校
課I ブリュッセル・レクイエム
B. アッペルモント作曲

煌めきからとても積極的な演奏
明るく一歩前に迫るような音
自由曲も明るいサウンドそのままに、木管金管どちらを聴かせるか
場面ごとにきっちり決めて切り替えていたように感じました
とても時間をかけて準備していたのが伺える


4 兵 庫 兵庫県立西宮高等学校
課I ムジカ・クインクウェ・プレナ
高 昌 帥作曲

煌めきは大人数でもスッキリとした演奏
自由曲も肉付けしすぎず、音が散らないので聴きやすい
コンクールは「聴いて聴いて!」という演奏は多いけど、
聴衆にわかりやすく伝えることを意識した親切さがこの学校にはあった
終盤のTp.Tbが同時に演奏する場面は特に美しかった


5 大 阪 近畿大学附属高等学校
課III 巨人の肩にのって
P. グレイアム作曲

冒頭のドラムからニヤリとさせられるレトロ
いきなり会場をショーにしてしまった
中央にドラム、ウッドベース、パーカッションを配置したのは
この団体だけだったと思う。ビッグバンドを意識したセッティング
TpやSaxソリストも直線上に配置してそれまさにそれ
お互いが聴きやすい効果もあるけど、どちらかというと
遊び心だったのでは?
やや落ち着いた速さだったのだけど、このテンポ感の方がスイングは引き立つので
なるほどなあと手をポンと叩き納得させられる、近大さんたちの提言

巨人は中間部がミソだった
足跡を残したぞ近大は


6 和歌山 和歌山県立向陽中・高等学校
課III 昂揚の漣
長生 淳作曲

レトロはスピード感をもって惹きつけるというアプローチ

自由曲の「昂揚」→「向陽」 はダジャレ?
長生さんの作品は細かい動きが何度も押し寄せるのが特徴的なのだけど
クリアでタイトな演奏はそのまま自由曲で発揮されていたようでした



7 滋 賀 滋賀県立膳所(ぜぜ)高等学校
課IV ラッキードラゴン ~第五福竜丸の記憶~
福島 弘和作曲

ペガサスは落ち着いた丁寧な演奏
ラッキードラゴンは後半が特によかった
各楽器に受け継がれていく場面は統一感があり惹き込まれました
3+2のような変拍子でくる「福島さんフレーズ」
テーマは重いけど曲がかっこいいですよね



8 大 阪 明浄学院高等学校
課II 紺碧の波濤
長生 淳作曲

ポロアリは前半後半と拍感の強い演奏に対し
アリアは流れるようでメリハリのある作り

紺碧は短いフレーズをつなげて大きな流れにする
難しい曲。それを瞬発力を持って最後の最後まで
非常に集中力の高い演奏をしていました
スリル感が楽しめたと言ってよいのかしら



9 奈 良 天理高等学校
課III 「舞踏組曲」より 第1・2・6曲
B. バルトーク作曲 上埜 孝編曲

スマートなレトロ
楽譜がないのでうまく説明できないのだけど
前半のフレーズの頂点はあそこ、と明確に決めてそこに向かっているのが
わかり、他校よりスマートさがあり聴いていて心地がよい
自由曲は「中国の不思議な役人」と似た構成。たぶんカットの関係も
あると思うけど。ここでも同じくTbが大活躍で楽しめました


10 兵 庫 兵庫県立加古川東高等学校
課II 「交響曲第3番」より 第1,3,4楽章
J. バーンズ作曲

ポロアリは間を長めにとったり多彩なタンギングをしたり
こだわり感があった

金管木管で距離感があるように感じました
これはセッティングからくるものなのかも
バーンズは超ダイジェスト版になってしまうのだけど
それでも各楽章の雰囲気が楽しめた
4楽章が一番よかったのは先の1、3楽章も良かったから
そしてホルンソロが美しかったから


11 大 阪 精華高等学校
課III ル・シャン・ドゥ・ラムール・エ・ドゥ・ラ・プリエール
松下 倫士 作曲

レトロはゆっくりめ
Tpソロは「フリューゲルではございません」と言わんばかりの
パリッとした演奏
低音がいいからなのか自由曲含めフットワークのいいバンド
シンフォ二ックジャズ&ポップスコンテストにも出場されているから
その経験が活きているのでは、と思いました


12 大 阪 大阪桐蔭高等学校
課III ブリュッセル・レクイエム
B. アッペルモント作曲

レトロはフロントにドラムセット、Tp1stも中央に来るように配置
ここもバンドっぽいセッティング
とても音が飛んでくるし嫌味がない
納得させられてしまう演奏
なんとなくここの団体は達観しているというか
無駄なことを全て削ぎ落としたような演奏

ブリュッセルはファゴ、クラのソロが長めのバージョン
後半ユーフォソロは2人で分担してかなり大きく演奏したのかな
場面切り替えでインパクトを出したかったのでは
多分そんな工夫が探せばたくさんあるんだと思う
1回聴いただけじゃわからないからもう1回聴いてみたいです



13  兵 庫 甲子園学院中学校・高等学校
課II ドラゴンの年(2017年版)
P. スパーク作曲

課題、自由曲ともに劇的な演奏が続く
ドラゴンは全楽章カットしつつやるパターンでした
両端にバスドラを配置
息つく暇もない構成で一気に演奏していました
会場で聴いていた人たちはさぞコーフンしたと思う


14  大 阪 東海大学付属大阪仰星高等学校
課I ブリュッセル・レクイエム
B. アッペルモント作曲

冒頭から「とにかく明るい煌めきの朝」

変わって自由曲レクイエムでは音のクリアさそのままに緻密な演奏を聴かせる
そのぶん祈りの場面も際立ったように感じました
ラストは嵐のよう
けれど緻密さが崩れない安定感
なかなかこんな演奏はできないと思う


15  滋 賀 近江兄弟社高等学校
課IV シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」
福島 弘和作曲

キッチリとしたテンポに乗っとって表情豊かに演奏するペガサスは魅力的だった
模範的な、優等生的なスタイルか、と思っていたら最後だけスタンドプレイで
かましてきた
面白いバンド


16  兵 庫 滝川第二高等学校
課I 輝宮姫の物語
樽屋 雅徳作曲

全体がはっきり聴こえる絶妙なバランス感のある煌めき
同じフレーズが来るところは2度目を強調、など
強弱を使いスムーズながら立体感のある演奏
滑らかさで言えば今日の中で滝ニが一番かもしれない
自由曲も演出があり聴きごたえあり
あのような動きがあると、どうしても滝二のマーチング衣装が
思い浮かんでしまう


17  大 阪 箕面自由学園高等学校
課I 歌劇「トゥーランドット」より
G. プッチーニ作曲 後藤 洋編曲

通称「みのじ」
どこか温かみを感じるマーチ
王道の作り、これはマーチングで活躍しているバンドだからこそ
なのだと思った
トゥーランドットもバンドの一体感がある
ホールがより広く感じるような演奏
滝二もみのじも、マーチングで活躍しているバンドだからなのか
マーチの安定感を感じる


18  兵 庫 尼崎市立尼崎高等学校
課I 交響詩「英雄の生涯」
R. シュトラウス作曲 三井 英健編曲

音が次々に飛び込んでくるスピーディーな煌めき
バスドラが効果的で演奏を聴きやすくしてくれている。
マーチではバスドラが大事と言われている
金管が誰一人飛び抜けることなく統一感を持って演奏するのはすごいと思った



19  京 都 京都両洋高等学校
課I 華麗なる舞曲
C. T. スミス作曲

中低音に密度があるのかしら
ややガッチリめで音がとても飛んでくる
「私たちはfかpしか出しません」というくらい
はちきれんばかりのエンタメ性に秀でた演奏
これだけチャレンジャー精神を持って支部大会で
演奏したことは素晴らしいと思う
とても大事なこと
こういうバンドは急成長する。もうしているけど



20  和歌山 和歌山県立星林高等学校
課III 「交響曲第2番」より 第3,4楽章
S. ラフマニノフ作曲 森貞 昌春編曲

フロントにドラムを置き
レトロはスピーディーかつ柔らかさがある演奏
チューバやトロンボーンの低音・中低音グループはテンポ出しや決めどころで活躍していた。目立つだけが上手い、ではない
音圧・スピード感で聴かせてくる団体とは対照的に、ゆっくりと心が熱くなる演奏を楽しむことができました


21  京 都 立命館高等学校
課IV トリトン・エムファシス
長生 淳作曲

課題曲は丁寧にしっとり聴かせた
自由曲は前半こちらもしっとり演奏し、後半はジェットコースター状態。
Tpの高速タンギングが重要だったようだけど非常に効果的、雷のよう
最後まで勢いがあった
長生作品は高校生が扱うには難しい曲と言われているのですが、支部大会になると
当然のように選曲されている・・・



22  京 都 洛南高等学校
課I 交響組曲「寄港地」より II.チェニス~ネフタ III.バレンシア
J. イベール作曲 池内 毅彦編曲

煌めきはTpベルトーンなど各楽器の入りが鮮やかで、聴いていて
「ここはそうなってたいたのか!」と改めて気付かされる
他の演奏では聴こえない音が聴こえる
トリオ後も軽快な流れ
寄港地はOb、アングレを前面に出した曲
本日のMVPじゃないですかね
異国情緒と言いますか、他校とは違う曲想が楽しかった


23  大 阪 大阪府立淀川工科高等学校
課I 「中国の不思議な役人」
B. バルトーク作曲 上埜 孝編曲

こちらも明るくて軽快なマーチ
バルトークは鋭かったり不気味だったりいろんな場面での
切り替えが早い
淀工は昨年と違うことをしたかったのでは
演奏スタイルにもそれは表れていたように感じました
今後どうなっていくのか楽しみです



24  兵 庫 尼崎市立尼崎双星高等学校
課I 「スペイン狂詩曲」より 第1,4曲
M. ラヴェル作曲 森田 一浩編曲

各場面をひとつの大きなフレーズとして歌っているような印象
大きなビブラートでとるオーボエソロなど
課題曲、自由曲通して景色の広い演奏で聴衆をあっと言わせたと思う